
「アドリア海の女王」とも呼ばれるイタリア北東部の都市。
あまりにも有名で憧れる人も多いだろう。
アドリア海の最深部にあるヴェネチア湾にある、
ラグーナ(潟)の上に築かれた都市には、
縦横に運河が張り巡らされ、ボートが行き交う。
周囲11km程の本島には中世の街並みがそのままに残され、
建物の土台として、干潟に無数の杭を打ち付けて建設された都市は、
「逆さまにすると森が出来る」と言われている。
ヴェネチア本島に入り、迷路の様に曲がりくねった細い路地を歩くと、
まさに中世の町を歩いているような感覚すら得る事ができるのだが、、
地図を片手に歩いたとしても、角を3つも曲がる頃には方向感覚を失い、
完全に道に迷い、ヴェネチアの町に吸い込まれてしまうのであった。
アルプスを越えてイタリアへ入り、まずはヴェネチアを目指し走り、
本土からリベルタ橋を渡りヴェネチアに辿り着いた。

ヴェネチアへの自転車の持ち込みは禁止されているらしいのだが、
荷物を載せている自転車は押して歩く分には問題ないらしい。
そのまま自転車を押して町へと向かったものの、
突然大きな橋が目の前に現れ道を阻まれる。
スロープらしいものは全く無く、結局自転車を持ち上げて上る。
インフォメーションで地図を買って、とりあえず宿へ向かう。
運河が張り巡らされているヴェネチアの交通は主に船と言う事で、
自転車を船に乗せて宿の近くまで移動しようとしたのだが、
「船は人しか乗れないので、歩いて行くしかない。」と、言われた。
観光用の小さなボートに載せるわけにはいかないので、
もう一度事情を話したものの、歩くしかないらしい。

「まあ、町をゆっくり見ながら宿まで歩くか。」
と、軽い気持ちで自転車を押して歩き始めた。
しかし、その数分後にはその道のりがあまりにも過酷で、
遠く厳しいものだと実感する事になる。
予約していた宿は、本島のほぼ真ん中にあり、
観光客としては最高のロケーションであるのだが、
そこまでの道には何本もの橋が架かっている。
もちろんスロープは存在せず、蹴上げの高い階段があるだけだ。
しかも道は曲がりくねる迷路のようで何度も迷い。
道を聞きながら進むも同じ場所に戻る事もある。
60kgの自転車を持ち上げて何本もの橋を上り下りる。
宿に着くまでに2時間以上かかり、
首と背中の筋がおかしくなった。
あまりやる人はいないと思うが、ここに自転車で来るのなら、
多少高くても、橋を渡らない場所に宿をとるべきだろう。
ヴェネチアは小さな島なので、迷い歩きを楽しみながら、
ただフラフラと町を散策して過ごす事にした。






この季節のヴェネチアの天気は不安定で、
ほぼ毎日のように雨が降り滅多に晴れる事は無い。
水の都であるヴェネチアに雨が降ると、
まさに水の中に沈む都市の様だ。
大潮の影響で海水が町の中に浸水し、サンマルコ広場には
巨大な水溜りが出来、足場が組まれ観光客は列を成して歩く。

地盤沈下や建物の老朽化などの問題を抱え、
今にも崩れ落ち海に沈み行きそうな水上都市は、実際に
近い将来、海面上昇によってアドリア海に沈むと懸念される。
町全体の水没を防ぐ為に、アドリア海との間に3箇所の
防潮堤を設ける「モーゼ計画」が進行しているが、
一方では環境や干潟への影響が懸念され、反対されている。
水質汚染も深刻で、実際に運河の水はとても綺麗とは言えない。
ヴェネチアは古く美しい町並みを現代に残す貴重な町なのだが、
現代においてそれらの文化遺産を修復しながら保存するには、
それ相当の犠牲が必要なのだろうか?
「数十年後にはこの情景を見る事が出来ないのかもしれない。」
そんな事を思いながら、運河沿いにある宿の窓から外を眺めると、
雨に濡れる町並みが水に沈んで行くイメージがリアルに写るのだった。


↑ヴェネチア内の移動は土地勘がないと必ず迷います。
自転車では来ない事をオススメします。本当に大変。。。
ほぼ毎日雨の天気予報なので、移動が制限されますが、
これからフィレンツェに向かい、しばらくゆっくりします。