夕日が遠い西の崖に沈む頃、東の断崖は真っ赤に染め上がり、
その上空にかぶさる紫に煙る空は徐々に暗い青に押し上げられ、
星がちらつき始めるのを待つ間に風景は夜へと変わる。

荒野とも言えるナミビアの風景は、殺風景でありながらも
時間を変える事で様々な表情を旅人に見せてくれる。

ナミビアで有名な観光地の一つである、
『フィッシュリバーキャニオン』と言う
渓谷を見るために進路を西へとった。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-FRC01

国道を外れダートを走り、ケートマンズフープから50kmの
所にある『Seeheim』と言う集落に一泊する予定だったのだが、
早く着き過ぎた事と、とても良い風が吹いていた事もあり、
そのまま風に吹かれるように更に前へと進んだ。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-FRC12

風向きは毎日の様に変わり、時間帯によっても全く逆に変わる。
良い風が吹いている時はその流れに乗るのが得策だ。

とは言ったものの、その後の道が以外にきびしく、
走りやすいダートではあったが目的地まで距離が長く、
町も商店も何もないので走り来る以外の選択肢はない。

結局その日は150km程走り、日没と同時にキャンプに着いた。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-FRC03

自転車世界横断!!TERU-TERU project-FRC02

『Canon Road House』と言うホテルのキャンプサイトは素晴らしく、
シャワーもトイレも清潔でキャンプ場も広くしっかり整備されている。

敷地には古いアメ車がオブジェとしてあちこちに飾られ、
60年代のルート66をイメージされたインテリアは抜群だ。

この日はテントでゆっくりと休んで翌日に備えた。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-FRC05

自転車世界横断!!TERU-TERU project-FRC04

自転車世界横断!!TERU-TERU project-FRC10

夜になると気温は急激に下がり、僕の持っている寝袋では寒すぎる。
他の上着も重ね着してなんとか寒さを凌ぐが何度も目が覚める。
その他にも国立公園内と言う事もあり動物も多く、
テントの回りを動物がうろつく足音が聞こえる。

ほとんどの場合はガゼルなどの草食動物なのだが、
危険な奴が来たらどうしようか?と不安にもなる。

そんな少々スリリングな夜もナミビアキャンプの醍醐味だろう。

翌朝少し遅めに起きて、コーヒーを飲み一服した所で、
目的地でもあるフィッシュリバーキャニオンへと向かう。

荷物はキャンプに置いて片道30kmのダートを走った。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-FRC07

自転車世界横断!!TERU-TERU project-FRC06

進むに連れてダートのコンディションは悪くなり、
石の多いデコボコの道が進路を妨害する。

風も強い向かい風で、車が通り過ぎると、
とんでもない量の砂埃に体が包まれるも、
そんな事はおかまい無しにひたすらに進む。

Hobosと言う渓谷の手前にある集落とも呼べない場所で、
入場料の80ND(約800円)を支払いビューポイントへ向かう。

既に何組かの観光客が訪れており、展望台に人が並ぶ。
かなり疲れきった状態で展望台の先端に進むと、
目下には深く複雑に刻まれた渓谷がうねっていた。

ここはグランドキャニオンの次に規模の大きな渓谷であり、
その北端に立ちただぼんやりと渓谷を眺める。

もうその規模が大きいのか小さいのかの判断はつかない。

ここに来た事の満足感と、「おそらく凄い景色なのだろう。」
と、言う妙に客観視した感情が入り交じりしばらく時間を忘れた。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-FRC09

自転車世界横断!!TERU-TERU project-FRC08

雨のほとんど降らないこの地域に、遥か昔には大きな河が流れ、
風が吹き固い岩山を削り取って行く時間の雄大さを感じようとも、
途方もない事すぎてただ目の前の景色を眺める事しか出来なかった。

ナミビアと言えば『ナミブ砂漠』と相場が決まっているようだが、
是非とも訪れてみると良いだろう。

ハイキングツアーなど数日をかけて渓谷を探索するツアーもあり、
公共交通機関はなくともレンタカーで十分に回れる。
と、言うかナミビアの観光はレンタカーが最も便利だと思う。
(自転車ははっきり言って勧めませんwバイクも良いと思います。)

比較的観光しやすい国であり、治安やインフラ的にも整備され、
今後ますます世界中から旅行者が集まると思われるナミビアは、
まだまだ多くの見所を持っており、旅人の好奇心を刺激する。

僕も次来る時はもっと隅々まで見て回りたいと思っている。

一気に駆け抜けたナミビアもここで終了。

国境の町でこの記事を書き、明日から南アフリカに入る。

ダートの道をひた走り砂埃を吸い過ぎたせいか、
少し喉が痛むのだが、それもナミビアの思い出とし、
明日から始まる南アフリカの旅に備える為に、
今日で4日連続500gのTボーンステーキを喰らうのだった。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-FRC11
「西アフリカを抜けてナミビアに着いたら天国に感じるよ。」

そんな事を以前、西アフリカを旅している時に聞かされた。

ナミビアの首都『ウィントフック』は特に見所のある街でもく、
その様相は既にヨーロッパ化していると言ってもよい。
街並を見るだけで一目瞭然なのだが、モノやサービスのクオリティーは
既に今まで通って来たブラックアフリカから大きくかけ離れ過ぎている。

整然と奇麗なビルが並び、道路は広く歩道にゴミはなく、
中心地にはファーストフード店やブティックが軒を連ね、
街行く人の格好もコギレイで、一見すれば何の変哲も無い、
普通の何処にでもある街中の風景だ。

ヨーロッパの様でもあり、アメリカの田舎町の様な雰囲気もある。
ただ明らかに今まで走って来たアフリカのどの都市とも異なる。

何故にこんな普通の、『当たり前』の都市に心が癒されるのか?

コンゴから一気に飛んで来た僕は天国に降り立った気分だった。

過酷さからの離脱の様な拍子抜けする感覚を得ながらも、
朝晩の寒さに確かな冬を感じる事で身が引き締まる。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Namibia01

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Namibia02
基本的にはまともな都市なのですが、とにかくスリ、ひったくりが多いです。
おそらく中部アフリカや西アフリカ以上に軽犯罪は多いでしょう。
1日に何度も狙われその都度払いのけたり、蹴り飛ばしたりします。
流石にムカついて久々におもいっきり犯人の顔面をぶん殴りました。
こう言った犯罪をするのがほぼ100%黒人なのは悲しいです。



ウィントフックの空港には夜に到着し、周辺には宿もなく、
タクシーにて街中の良さそうなホステルへと移動した。
『CardBoard Box Guest House』と言う人気の安宿には
各国から大勢の旅人が訪れており、ガヤガヤと賑わっていた。

プール付きの中庭はキレイで広々としており、
朝食付きネット可能で1泊約900円は安すぎる気がする。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Namibia05

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Namibia04
タクシーの運転手も宿の名前を聞いただけで場所が分かるほどで、
やはりかなり有名な宿なのだろうと思います。
因に空港から街中までは250~300NDとロンプラには記載されており、
問題なくほぼその範疇で移動出来ます。ドラーバーに対する
サービス評価表などもあり、ボッタクリもほぼありません。



到着した翌日に自転車を組み立てようと梱包を解き、
いざ組み立てている最中に自転車の異変に気付いた。

何やら後輪の納まりがおかしい。と、言うか後輪のギアを
チェンジする為のリアディレイラーが曲がっている。

空輸中に壊されたのは間違いないがどうしよう?

「とりあえず曲がってしまった部分を再び平らに叩き出そう!」

出来るかどうか分からないが曲がったパーツを抜き取って、
ハンマーでまっすぐに叩き出したのだが、ヒビが入って折れた。

「まあこうなるだろうな。。。」と、その場でしばらく佇む。

悩んでも仕方ないので、「この街になら必ず良い自転車屋さんがあるだろう。」
と、宿のスタッフに自転車屋さんの場所を聞き早速そこへと行ってみると、
想像していたよりも大きく、先進国並みの品揃えのアウトドアショップがあった。

自転車のパーツもほぼ揃っており、リアディレイラーも3種類有って、
丁度良さそうなシマノ製のモノを200ND(約2,000円)で購入した。

その他にスピードメーターも壊れていたので新しく新調し、
再び走り出す事の出来る状態へ回復する事が出来た。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Namibia03

運が良いのか悪いのか?

壊れないに越した事は無いだろうが、しっかりとした自転車屋がある場所で
壊れた事は、ある意味ラッキーだったと自分に言い聞かせた。

しかし、無駄な出費は旅人にはツライものである。

そんな事もあって、自転車の調整と情報収集などをしながらここで4泊した。


ナミビアは広い国土の割に人口が極端に少ない。全人口が210万人程で、
首都でさえも22万人程しかおらず、ナミビア第二の都市になると、
人口は2万5千人まで下がり、町を出ると人の姿は全く無くなる。

当然町から町までの距離も遠く、100km何も無い時もある。

今までなら町と町の間に小さな集落や商店があったりするものだが、
人口が本当に少ない為にそれすらもなく、旅立つ際に水や食料を
しっかり買っておかないと、次の町までの我慢大会が始まる。

それでも旅行者が多く車は何台か通るので、ヒッチハイクで水や
食料をもらう事は出来るだろうが、しっかりと備えてから走り出す。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Namibia07

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Namibia06

広大な景色の中、ひたすらに地平線を追いかける作業のようで、
ほぼフラットな道を乾燥した風をうけて南へ南へと走りまくり、
小さな町のB&Bやゲストハウスに宿泊し、野宿もありながら
ナミビア南部の町『ケートマンスフープ』へと辿り着いた。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Namibia10

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Namibia19
10~20kmおき位にある休憩所。助かります。
自転車世界横断!!TERU-TERU project-Namibia18

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Namibia17
この時期南半球は冬なので野宿はかなり寒かったです。
自転車世界横断!!TERU-TERU project-Namibia16

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Namibia14

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Namibia12

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Namibia11

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Namibia09

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Namibia08

ウィントフックから約550kmを数日かけて走ってみると、
「思っていた程『天国』ではない。」と、言う事に気付かされ、
また今まで経験した事の無い『奇妙な違和感』を感じる。


ナミビアの町には市場や露店の様な類いは一切なく、大型スーパーが
生活の中心であり、『活気』と言うものを感じる事はまずない。

通常どの国や地域、先進国や途上国に限らず、どんな小さな町に
行っても感じる町の活気がこの国には感じられないのだ。

更に彼らは労働意欲が無いのか真面目すぎるのか、かなり早い時間に
店が閉り、お酒は平日夜7時以降と休日の全日は購入出来ない。
地方の町に行くと本当に人が少なく、それでも道路は広く奇麗なので、
余計にスカスカ感が際立ち外国人の僕は特に目立つ。

かと言って人々は明るく行儀の良い人達も多い。
常識も通じるし、しっかりとした秩序も存在する。

銀行もスーパーマーケットもガソリンスタンドも立派で、
普通に生活する上では特に不自由を感じる事も無いだろう。

それなのに何故か旅をしていると色々と不自由を感じる。


村とも呼べない集落にて休憩したり、路上で適当なモノを買ったり、
夜にお腹がすいた時に屋台や遅くまで空いている店で何かを買ったり。
そんな今まで当たり前にあった『いい加減さ』が全くない。

日本ではコンビニがあったり、ヨーロッパでも遅くまであいている店もある。
東南アジアでは個人商店が乱立し、西、中部アフリカでも夜まで活気が溢れる。

そんなある種のいい加減さを排除した姿が今のナミビアから感じとられる。

昔からこんな整然とした秩序の中で生活していたとは思えないが、
ナミビアの町からアフリカを連想させるワイルドさを感じる事は不可能だ。

隠れる様にひっそりと暮らす少数民族も存在はするが、
彼らは今のナミビアとは別の世界として住み分けされている。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Namibia13

コンゴから飛んで来て、都市的な秩序と営みにホッとしたのも束の間、
物足りなさと「いい加減」な部分が無い事で「不便」を感じる。

これは「過酷な環境に慣れ過ぎた。」と、言う類いの
旅人特有の感覚のズレだけではないと思われる。

しかし無いモノをねだり、隣の芝は青く見えるもので、
ここへ来て西部、中部アフリカでの生活が妙に懐かしく、
ホコリまみれの喧噪の方が旅には向いていると実感する。

やはり何か感覚がズレて来ているのだろうか?

ウィントフックを中心にレンタカーで観光地だけを回ったのなら、
ナミビアに変な違和感を感じる事はないのかもしれない。

自転車で細かく回らなくては決して味わえない、
国ごと町ごとに異なる雰囲気みたいなものがあり、
ナミビアで感じるソレは顕著で奇妙だ。

残り数日のナミビア滞在で更に何を感じるのだろうか?
そして南アフリカに入ると何が変わるのだろうか?

観光地を巡るのとは別の、こんなどうでもいい様な変化を楽しめるなら、
ゆっくりと自転車で旅をする意味もあるのかもしれない。

とは言っても、やっぱり観光地も少しは行ってみたいので、
寄り道でもしようかと地図を広げルートを確認するのだった。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Namibia15
自転車世界横断!!TERU-TERU project-Congo01

コンゴ国境へと続く未舗装道路を砂埃にまみれて南へと下った。

所々に出現する水たまりで道はぬかるみ、走行不可能な時は
時折通るトラックをヒッチハイクしてその場を乗り切る。

砂埃の向こうに夕日がすっぽり沈むと、辺りは紫色に煙り
マジックタイムと呼ばれる神秘的な時間が僅かに訪れる。

電気もろくに通っていない地域をひた走り、国境へと辿り着き、
夜になると南十字星と北斗七星を空の低い位置に見る事が出来る。

赤道を越えて南半球に入り赤道直下にいる事を実感した。


自転車世界横断!!TERU-TERU project-Congo03


ガボンの出入国審査はとても変わっており、国境ではパスポートと
イエローカードチェックをするだけで、スタンプは近くの町にある
ポリスオフィスにて押される。なので、入国したのならその日か
次の日にはポリスオフィスに行かなくてはならない。
そして出国時も同じく出国する当日か前日にスタンプを押してもら
わなくてはならず、スタンプ無しで国境へ行ってしまうと、
再び近くの町へ戻されるか多額の罰金を払わされる。そして、
次の国でもガボンの出国スタンプが無いと賄賂の対象となる。


$自転車世界横断!!TERU-TERU project-congo48
ガボン南部の町『ンデンデ』にて出国スタンプを前日にもらい出発。
コンゴ48の看板をたよりに50km程奇麗な道路を進んで町に出たら、
全く別の場所でした。道を間違えていたらしく、落胆しながらも
そこからヒッチハイクでンデンデに戻り、コンゴへの道へ。
地元民以外には絶対に分からない農道のようなところを入ります。
「大事なとこに看板立てとけボケ!」と叫びました。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Congo02
ガボンからコンゴへの道。

そんな事もなんとかクリアしコンゴへと入り、旅人の中でも
最難関とも言われる中部アフリカのコアにまた一つ近づいた。

コンゴ国境の町『ンゴンゴ』の警官と出入国審査の職員はとても感じが良く、
あれこれと親切に手伝ってくれては見返りを求めず本当に親切だった。
100kmのダートを走ってお腹がすいていたのだが、レストランも電気もない
小さな集落なので、食べるモノがパンとチョコレートクリームくらいしかなく、
コンゴ入国初日はジュースをたらふく飲んで空腹を紛らわせた。

突然コンゴへと飛んで来たのなら、その圧倒的なブラックアフリカンの
パワーと危険な雰囲気に飲み込まれてしまうのだろうが、少しずつ南下し、
それなりに耐性を身につけて来た僕は、警官や軍人からの賄賂請求の
あしらいにも慣れ、意外にもコンゴが少し楽に思える様になっていた。

人々は相変わらず適当だが気の良い人ばかりで、
賄賂請求もガボンの方がよっぽど酷かった。

コンゴは現在とても安定した状態に入っており、首都のブラザビル西部に
広がる『プール』と呼ばれる地域以外は国全体の治安はとても良い。

コンゴ国境からも300km程未舗装のダートが続き、途中はかなり状態が
酷い様なので自転車で行くのを止められ、ジープに乗せて隣町まで移動した。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Congo06
コンゴ国境の村ンゴンゴ、手前のジープに自転車を積みました。
奥に停まっている車の辺りがコンゴ国境。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Congo05
ンゴンゴ唯一の宿。水、電気なしで1泊4000CFA約600円。
体を洗うのは汲み溜めてある水を使います。



そこからドリージと言うコンゴ中部の大きな町まで移動し、
首都へ向かうトラックにヒッチハイクの交渉をするのだが、
なかなか思うように行かない。ジープの中で知り合った
コンゴ人のおばちゃんの息子がドリージに住んでおり、
部屋を間借りさせてもらいながら、その息子も協力してくれて
トラックに自転車を積む交渉をするのだが、本当に難しい。

プールと呼ばれる地域には未だにテロリストが潜伏し、車や電車を
襲う事件が多発する為に、民営のバスも公共のバスも通らず、
ましてや民間の車が通る事はない。ガイドブックにも「首都から
西への旅行は交通機関がなく難しく多くの場合空路を使う。」
と、書いてあったのだが想定以上に状況は厳しかった。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Congo08
宿泊した場所の周辺。
自転車世界横断!!TERU-TERU project-Congo07
バスターミナルにある食堂からの眺めは最高です。
中部アフリカの自然の美しさはやはり圧巻です。



コンゴビザの期限は2週間と短く躊躇している暇はない。
朝から5時間待って昼過ぎに交渉が成立したトラックが夕方か夜に出発する。
と言うので、更にそこから8時間待っていたら。
「急遽予定が変更になって、更に西のポイントノイアと言う大きな
都市に向かう事になった。」と、言われた時にここからの首都行きを諦めた。

熱中症気味でクタクタになりながら部屋に戻るのだが、
何パターンかのルート変更を考えなくてはならなかった。

・ドリージから首都へ飛ぶ。
・ポイントノイアへ行って、そこから首都ブラザビルへと飛ぶ。
・ポイントノイアへ行ってそこから別の国へ飛ぶ。
・ポイントノイアへ行きそこで首都行きのトラックを探す。

色々考えた結果、とりあえずポイントノイアへ行き、
ブラザビルや国外への航空券の値段を調べる事にした。

おそらくトラックを捕まえるのは、運が良いか、
時間をかける根気のいる作業だと思い断念した。


自転車世界横断!!TERU-TERU project-Congo09
間借りしてた部屋の中でも蚊よけでテントを張ってます。


ポイントノイアまでは山道を走り2日で到着し、
Sueco Hotelと言う1泊8000CFA(焼く1200円)の
学生寮の様な安宿に宿泊しながら旅行会社を回った。

宿はこの辺りの中では群を抜いてキレイで広く居心地が良かった。

コンゴには格安航空券と言うような類いのチケットはなく、
全てがほぼ正規料金の為に、国際線の値段が異常に高い。

空路の便も限られているので、何件かの旅行会社を回っても
値段はほぼ変わらず、ナミビア行きのチケットが10万円近い。

スカイスキャナーやモモンドなどの航空券検索サイトも、
この辺りの地域は網羅しておらず、ネットでの購入は不可能だ。

またここでも悩まされ、結局はブラザビル行きの航空券を買い、
当初の予定通りブラザビルにてコンゴザイールビザを取得し、
コンゴザイールにてアンゴラビザを取り、アンゴラを通って
ナミビアに入るルートを選択する事にした。


自転車世界横断!!TERU-TERU project-Congo12

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Congo11


陸路で移動してもアンゴラビザはトランジットの5日間しか取れず、
またコンゴザイールも治安面の問題が多過ぎて長居する気はなく、
トータルで2週間程度の滞在になる予定だが、その間に使う金額と
航空券の値段がほぼ同じ位だった為に、それならば、
「おそらく行ってもろくな事は無いだろうと思われる国ではある
モノの、行けるのであれば過酷でも行ってみた方が楽しいだろう。」
と言った理由からだった。

すぐ翌日のチケットを手配し、一気にブラザビルへと飛んだ。

ブラザビルは流石に首都だけあって交通量も、人も、排気ガスの
煙たさも桁外れに多く、自転車で走るには注意が必要だ。

ザイール河の向こうにはコンゴザイールの首都『キンシャサ』が見えるが、
この辺りでの写真撮影は厳しく規制されており、写真を撮ってしまった場合、
即座に拘束され留置所に送られ罰金を多額の払わされる。
カメラを持って歩く事も警戒され、キンシャサの街並を見ているだけでも
近くの人が、「あまりこの辺をうろつかない方がいいよ。」と注意してくる。

早速その足でコンゴザイール大使館へとビザ取りに向かい、
係員の人にその旨を伝えたところ、住民登録カードの提示を求められた。
旅行者なので持っているはずもなく、ツーリストビザが欲しいと告げると、
現在はコンゴ在住者以外にはビザの発給をしていない。と言われる。

まさかの展開に驚き、何度も事情を話したのだが「不可能」との事。

こんな事ってあるのだろうか?確かにコンゴザイールは時期によっては
ツーリストビザの発給をストップする事は知っていたがまさか。。。

本当に陸の孤島に閉じ込められてしまった。

コンゴビザの残りも一週間を切っている。悩んでいる暇は無いに等しい。

翌日ダメモトでもう一度大使館へと赴くがやはり駄目だった。

係員のお姉さんは感じの良い人で、最後に「私もコンゴザイール出身だけど、
あんな国に行かない方が良いよ。」と、自虐的な、しかし本心を告げられる。

最近更に国の治安が悪く旅行者のトラブルが相次いでいる為に、
ツーリストビザは発給しないと言う事らしい。
たしかにコンゴザイール東部の治安の悪さは壊滅的な地獄状態で、
軍と警察も犯罪に加担し、虐殺、強盗、略奪が日常しており、
女性の70%がレイプされ、解放される時は自殺した時。と言われる程だ。

また東部の国境近くでは旅行者がこつ然と消える失踪事件が多発している。

そんな国でも通らなくては陸路では南下出来ない現状は、
コンゴを「行き止まりの国」と変えてしまっている。

知り合ったスイス人ライダーも僕と全く同じルートを進んだようで、
結局ブラザビルからナミビアへと飛行機でバイクごと飛ぶのに、
航空券と税金、バイク代などで20万円程かかったようだ。


そして僕もまたここで中部アフリカの旅に一区切りつける事となる。

ナミビアへのフライトチケットは約10万円、自転車を載せるので
更に2万円近くかかり、今月は割り切って出費すら楽しもうと思った。

アフリカの国々を結ぶ航空便は複雑で、コンゴなどのマニアックで
情勢や経済的に不安定な地域のフライトはかなり便が少ない。

ブラザビルからナミビアへ飛ぶのに、エチオピアのアディスアベバ、
南アフリカのヨハネスブルグ経由。と言う何とも無駄な移動だが、
それが最も安く、ソレ以外のルートも同じ様な移動距離だった。

「この辺りを旅をしたい。」とはしばらく思わないだろうが、
あと10年もしたら、また来たいと思うのだろうか?

空港でも一悶着有り、3時間前に着いていたモノの、
出国審査を終えたのはフライトの20分前ギリギリだった。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Congo13
ブラザビルの街並。向こう側にキンシャサの街が広がります。

結局考えたら、ポイントノイアでナミビア行きの飛行機に乗るのが
最も安く効率的だったのだが、これもまた一つの苦い経験として、
僕の中に新たなブックマークが出来たように思える。

とりあえずは、やれるだけの事はやって駄目だったのだから仕方ない。
と、自分に言い聞かせ、格闘の日々を思い出してはブラザビルを発った。

中部アフリカの旅は過酷を極める。決して楽しい場所ではない。

旅をするのが楽しいと思えるのか、この過酷さを味わうのを楽しむのか。

まだまだ旅行者が立ち入るのは早いこの地域だが、
この時期に来れた事を後々は楽しいと思いたい。

毎日の様に食べていたマニョック(芋を葉で包みふかしたモノ)
と獣の肉は、もうしばらく食べられないだろうと思うと、
コンゴに少しの未練を残しておく価値があるのかもしれない。

そんな事を思いながら飛行機の中で赤ワインを飲むのだった。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Congo10

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Congo04