のどの奥が水分を求め続けるのは分かっている。
乾ききった空気を吸い込み、汗は止めどなく溢れ、
照りつける日にさらされた肌は黒い光沢を帯びる。

ポルトガルの内陸地は想像を絶して暑く、
一日で60kmを進むのがやっとだ。

まあそれも自然の営みの中に身をおく旅としては、
ごく当たり前な日常であり、力尽きた場所で深く眠る。

$自転車世界横断!!TERU-TERU project-Redondo

『エルヴァス』から首都『リスボン』を目指し、
6日かけてゆっくりと無理せず走った。

ポルトガルに入ってからというもの、
標識を頼りに走ると毎日のように道に迷い、
道路地図を片手に右往左往しながら、
通行人に道を聞きながらさまよう。

陶器を特産とする小さな町『ルドンド』、
コルク樫が群生する古都『エヴォラ』を経由し、
『バレイロ』まで走り、そこから対岸の
『リスボン』までの数キロはフェリーで渡った。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-エヴォラ
エヴォラの歴史地区は世界遺産に登録されています。
自転車世界横断!!TERU-TERU project-エヴォラ02
コルクを使った土産物が多い。


16世紀には天正遺欧少年使節が
訪れている日本とも縁のある街だ。

「7つの丘の町」とも呼ばれるほどに起伏にとみ、
自転車で町を回るのは至難である。と、言うより危険だ。

200m程度の坂道を登るだけのケーブルカーがあるほど、
その勾配は常軌を逸する角度で、歩くのも難しい。

そんな町だからこそ、他に類を見ない借景は、
訪れる者の心を奪っては止まない。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Lisbon06

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Lisbon04


首都であっても人口60万人程度の小さな都市で、
主要な部分は十分に歩いて周る事が可能だ。

港で海を眺めてぼんやりしては、
細い石畳の坂道を汗を流しのぼり、
丘の上の古城にから町を見下ろし、
歩き疲れカフェで日陰に座り休むと、
古い路面電車の車輪が軋む音が、
風景と重なり、「町の音」として心地よく響く。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Lisbon07

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Lisbon08

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Lisbon05

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Lisbon02

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Lisbon01

近代史において遅れをとったポルトガルは、
今でも至る所に素朴さを感じる事が出来る。

親切な人も多く、言葉が通じずとも丁寧に対応してくれる。

ポルトガルを訪れ、居心地の良さを感じる人が多いのも頷ける。

治安も他のヨーロッパに比べるとずいぶんと良いが、
ドラッグの売買は今まで訪れたどんなヨーロッパの国々よりも、
大胆で数も多く、日常的に蔓延している。

広場を歩いているだけで数人から声がかかる。
(バイヤーのほとんどはアラブ系か黒人)

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Lisbon03

ラストスパートを前に、少々滞在し町を見て周り、
体力の回復と気持ちの整理がついた。

『リスボン』にはしばらくのんびりしたい所だが、
目の前にぶら下がる大きな目標を目の前に、
逸る気持ちのままに『ロカ岬』を目指すのだった。


自転車世界横断!!TERU-TERU project-Lisbon10
ロシオ駅近くのパブリックヴューイングにて、
ワールドカップの決勝戦を観戦する。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Lisbon09



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高く真上から容赦なく照らす太陽によって空気は乾き、
収穫が終わった向日葵は茶色く枯れ果て無数に並ぶ。

なかなか沈まない太陽が少しずつ西に傾きかけ、
そこへ向かうように少しずつだが西へ西へと進む。

体中から噴出す汗は絶え間なく、日焼けした肌にしみた。


自転車世界横断!!TERU-TERU project-タラベラ01


マドリッドを出発してからひたすら西を目指し、
ただただストイックに田舎道を走りまくった。

長い間休んでいた事で気力は充実した反面、
少々体調を崩してのスタートだったのが、
灼熱の中2日連続で100km以上を走る。

ナポレオンが「ピレネーを越えたらそこはアフリカだ」
と、言ったのもうなずける荒涼とした丘陵地が続き、
木陰を見つけては休み、再び走り出す事を繰り返す。

タラベラ焼きで有名な『タラベラ・デ・ラ・レイナ』では、
町を自転車で軽く一周しバルで軽食をとり、
隣町の『オロペサ』を目指して出発するも、
途中で突然道がなくなり、高速道路脇の畦道を、
ガタガタと荷崩れを何度も起こしながら20km走った。

『オロペサ』には古い教会があるだけで、特に何もせず、
トラック運転手くらいしか使わない安宿で一晩を過ごす。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-タラベラ02
『タラベラ・デ・ラ・レイナ』にて。
自転車世界横断!!TERU-TERU project-oropesa01
オロペサまでの道。向こうに見える町がオロペサ
自転車世界横断!!TERU-TERU project-oropesa02
オロペサ周辺。本当に何もなく視界だけが広がる。
自転車世界横断!!TERU-TERU project-Oropesa03
教会の上に鳥が巣を作ってます。


更に山道を走り続けスペイン西部の『カセレス』に着き、
世界遺産にも登録されている旧市街を観光しては、
少々同じような遺跡に飽きてきた様な感覚を得る。


自転車の旅では、普通の旅行者やバックパッカーが訪れない、
ガイドブックには決して載る事の無い町や村をいくつも通り過ぎる。


自動車や列車が猛スピードで目的地へと向かう一方、
風土が微妙に変化して行くのを五感で感じながら、
風景に溶け込み、歩くより早いスピードで移動していると、
不自由と自由を同時に体感することが出来るのだった。


普段なら日焼け対策をして長袖で走っていたのだが、
最近は半袖短パンで炎天下の道路を走っていたら、
急激な日焼けで少々熱中症気味になってしまい、
体が火照ってなかなか眠れない。(謎の発疹も出た。)


そんな状態も気にせずスペインも西の果てに近づき、
『カセレス』から一気にポルトガルを目指した。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-caceres01
カセレスの旧市街入り口『星の門』
自転車世界横断!!TERU-TERU project-Caceres03

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Caceres04
結婚式が旧市街の教会で行われていました。


暑さが日に日に増しているのは明らかで、
一日に飲む水の量は10リットルを超える。

体は糖分も欲するのでコーラも一日3リットル飲む。

道を走り出すと意外にもなかなか日陰が見つからず、
「これは苦行だ。」と自分に何度も言い聞かせては、
タクラマカン砂漠を蜃気楼の中走った日々を思い出す。


スペイン国境の町『バダホズ』に着いた頃には、
体力も限界に近づいており、ここで一泊するか悩んだが、
逸る気持ちに背中を押され、小休憩の後にポルトガルへ向かう。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Badajoz
スペイン国境の町「バダホズ」かなり大きな町


「自転車も走れる道路でしょうか?」
「高速道路以外で行きたいんですけど、、、、」と、
町の人や警察官に聞くと皆同じ道を教えてくれたので、
安心して追い風を受けながら自転車を飛ばして走ると、
道路はなくなり、そこには高速道路しかなかった。


まあある程度は予測はしていたが、
もう後戻りはしたくなかったので、
「南無三!!」とそのまま高速を走る。


目的地の『エルヴァス』までは15km程度。
運がよければそのまま走りきれるだろうと、
高速道路の路肩をすっ飛ばして走り、
ポルトガル国境では記念撮影をする。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Portgal


ユーラシア大陸最西の国であり、
ユーラシア大陸編の最後の国だ。

実感は薄いながらも、感慨深く国境を超え、
意気揚々とポルトガルを走り出したと思ったら、
5分後に警察に止められる。


事情を話して、「すぐ隣の『エルヴァス』に行きたいんだ。」
と、言うとその警官も事情を分かってくれて、
もうすぐだから頑張れよ。と親指を出して応援してくれた。

「ゆるくていい奴でよかった。」と安心して、
そのまま一気に『エルヴァス』に入る。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Elvas01

『エルヴァス』では小さなフェスティバルが行われており、
クタクタの体を引きずりながら、偶然訪れた祭りに出かけると、
町の人達は古い民族衣装を身にまとい、
城の周りには小さな出店がいくつも出ており、
生演奏が流れる中で踊りやショーが催されていた。

素朴で手作り感が溢れるその祭りの中をさまようと、
この祭りは長い年月を経ても様変わりせず続いており、
まるで中世の村祭りを楽しんでいる錯覚を得る。

疲れも一瞬で忘れさせ、久しぶりに気持ちが高揚し、
感性を刺激され、しばらくその場を離れられなかった。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Elvas07

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厳しい道のりを走った後の風景だったからか、
単純に小規模で素朴な味わいに惹かれたのか、
それは自分にも分からないのだが、
いままで様々な祭りに足を運んだなかでも、
間違いなくダントツ一番の感動だった。


丘の上につくられた『エルヴァス』の町は西日を受けて、
風景の中で神々しく浮き上がり、その頂上に建つ城から
目下に広がる荒涼とした風景を日が暮れるまで眺める。


自転車世界横断!!TERU-TERU project-Elvas09


ポルトガル入国初日は、そんなスペシャルな出会いに迎えられ、
残りのユーラシア大陸を走る英気を再び僕に与えてくれた。


この日は400gのステーキを一気食いして体力をつけ、
翌日は早朝から晴れ渡る空の下を走り出したのだった。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Elvas08


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日焼けのし過ぎで気持ち悪い位に真っ黒です。
ワールドカップで盛り上がるスペイン国内を、
その中心へと進路をとりひた走る。

首都のマドリッドには「ゲルニカを見る」と、言う目的以外、
特に興味も無かったのだが近くまで来たので寄ってみた。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-madrid01


久しぶりの日本人宿(ヤガミホステル)に宿泊すると、
言葉に何のストレスを感じる事も無いので落ち着く。

夏が本番を迎えようとするヨーロッパを、
自転車で走るのは想像以上に厳しい。

地味に体調も崩しかけている事もあり、
体力の回復とデザインの仕事を兼ねて
少々長居する事になった。

マドリッド周辺には興味深い観光名所が点在し、
しばらくはここを拠点にあれこれと見て周ろうと、
翌日には風車の町「コンスエグラ」へ向かう。


バスで2時間ほどの小さな町は、
オフシーズンの平日と言う事もあり、
ゴーストタウンのように閑散としていた。

丘の上には白く大きな風車が数台建っている。

と、まあ本当にそれだけの事だが、
そんな景色は滅多に見られるわけでもない。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-コンスエグラ02

自転車世界横断!!TERU-TERU project-コンスエグラ06

自転車世界横断!!TERU-TERU project-コンスエグラ04


辺鄙な村の丘の上に建つ風車の存在感は、
あるべくしてそこにあるのか?
そこにあるから風景が成り立っているのか?
そんな事を思わせる程に不思議な魅力を放つ。

風車内部に入り構造を見ると、
木で作られたゴツゴツとした滑車がかみ合い、
本当に風の力だけで動くものなのか疑問を覚える。

周辺の景色は広々とした田園風景ばかりで、
ここに住む人達は古くから自然の力を利用して、
収穫した麦を風車でひいていた事を思うと感慨深い。

晴れ渡った空には白い風車が映える。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-コンスエグラ05

自転車世界横断!!TERU-TERU project-コンスエグラ01

日陰の無い丘の上でしばらくそんな景色を堪能し、
帰りのバスの時間もあるので町で食事を済ませ、
町の人に聞いたバス停でバスを待つのだが、
時間になっても一向にバスが来ない。

もしかしてもう行ってしまったのだろうか?

考えている間に『トレド』行きのバスが来たので、
少々迷ったのだが思いつきでそのバスに乗った。

『トレド』にはまた別日でゆっくり訪れる予定だったのだが、
思わぬハプニングと言うか思いつきで行く事になってしまい、
結局この日は2箇所を強引に観光し、暑い中歩きまくった。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-トレド01
教会の上からは街が一望できます。
自転車世界横断!!TERU-TERU project-トレド04
トレドの街中は以外にきれいで新しく感じます。
自転車世界横断!!TERU-TERU project-トレド02

自転車世界横断!!TERU-TERU project-トレド03


まあそんな日もあってよいものだろう。

想定外の珍道中を終えて宿に着き、
就寝時間まで皆でワインを飲み語り合う。


計画性のあってない様な行き当たりばったりの旅は、
その場面場面で適当な判断をしなくてはならないので、
先が見えない分、スリリングで楽しい。


体を休めるためのマドリッド滞在とは言っても、
毎晩ワインを2本は空けているし、仕事も忙しい。

結局マドリッドを出る頃には再び体調を崩しかけた。


まあそれも行き当たりばったりの旅の醍醐味だ。


夏が本番に差し掛かるのを肌に感じながら、
更に西を目指しスペインの田舎道を走るのだった。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-コンスエグラ03

自転車世界横断!!TERU-TERU project-コンスエグラ07


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↑本日は妙に手抜き感を感じます(笑)