ただ自分が行きたい所へ自分のペースで進むのは、
自転車で旅をする事の醍醐味であり特権でもある。

大きな目的地を通過した後のルートは特に不明で、
糸の切れた風船のように落ちる場所を探してさまよう。

地図を開いて適当な町に丸印をつけては、
その点を繋ぎながら気ままに北上していた。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Porto02

ポルトガル北部の中心地であり、第二の都市『ポルト』は
国の名前の起源にもなった古い町であり、多くの史跡が残る。

山がちな国土を象徴するように、起伏の多い町並みは、
歩くのには骨が折れるが、小道を迷いながら歩くのは楽しい。
ポルトガルの伝統工芸でもある「アズレージョ」で装飾された
壁は建物を一つの芸術作品に仕上げていた。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Porto06

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Porto07
アスレージョは青で描かれたタイル
自転車世界横断!!TERU-TERU project-Porto03

町を流れるドウロ川には大きな橋がかかり、
人や車やトラムが行き交い、その下を船がくぐる。

以前からポルトを訪れた事のある旅人のほとんどは、
「本当に良い町だ。」と、声を揃えて勧めて来るのだが、
噂に違わず来る者の心を奪ってはここに留める。

年間を通じて天気が良いこの辺りは過ごしやすく、
真夏であっても海風が吹き込み朝晩は寒い程だ。

ポルトの情景の美しさにひかれ、ここで数泊滞在した。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Porto11

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Porto12

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自転車世界横断!!TERU-TERU project-Porto01

食前や食後に嗜まれる特産のポートワインは、
独特で芳醇な香りに虜になる者も多く、
僕もその一人になり、一杯1ユーロのバーで、
様々なポートワインを飲んでは気持ちよく宿に戻る。

土地の特産物を体感するのは旅の大きな喜びだ。
それが美味しく美しいものなら尚更に喜びは大きい。


ポルトを十分に堪能した後には再び向かい風を受け、
ストイックに北を目指し自転車をこぎだすのだった。


自転車世界横断!!TERU-TERU project-Porto05


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ユーラシアを横断し終えたその日、
海から山へ方向を変え一人山道をのぼり、
「エデンの園」とも称される『シントラ』へ行く。

約20kmの激しいアップダウンを楽しみながら走り、
以前から調べておいたホステルに宿をとった。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Sintra01


今後のルートと予定を考えながら、
ゆっくりと2泊し町を散策する。

「文化的景観」として世界遺産にも登録されており、
自然の中に埋もれるように佇む小さな町の姿は、
まるでメルヘンなミニチュアアートの様だ。


町を見下ろす山の上に立つペーナ宮殿は、
あらゆる様式を混合して作られた贅沢な作りで、
その容貌はデタラメなおとぎ話の中にある様な、
他に類を見ない不思議な姿をしている。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Sintra09

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自転車世界横断!!TERU-TERU project-Sintra04


宮殿のテラスからは町の全景が見渡せるだけでなく、
西には大西洋が広がり、東にはリスボンがぼやけていた。

リスボンから自転車でも十分に来れる距離にありながら、
都会の喧噪をはるか遠くに感じる事が出来る。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Sintra12

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自転車世界横断!!TERU-TERU project-Sintra02


旅の予定はなかなか決めかねるもので、
思いつきでドンドン方向が変わってしまう。

絶妙なタイミングでデザインコンペの話も舞い込み、
一路北へ北へと進路をとる事にした。


夏真っ盛りのポルトガルではあるが、
海沿いの空気は程よく湿気を含み、
風が涼しく快適に日々を過ごせる。


偏西風が真っ正面から吹き付けるなか、
ポルトガルの海岸線を北上し続けるのだった。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Sintra03


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「ここに地果て海はじまる。」
(Onde a terra acaba e o mar começa)


ポルトガルの詩人ルイス・デ・カモンイスが詠んだ詩の一節は、
ユーラシア大陸最西端のロカ岬に立つ石碑に刻まれている。


リスボンから海風を受けながら海岸線を走り、
遂にユーラシア大陸最西端に辿り着いた。


内陸部のむせ返る様な暑さが嘘のように、
そこに立つと海からの強い風が体温を奪う。


自転車世界横断!!TERU-TERU project-Cabo da Roca02


上海を出発してから2年2ヶ月余りの時間をかけ、
僕が目指していたのは今立っているこの場所であり、
自転車の旅を始めて、何か一つを成し遂げる為には、
ここに辿り着かなくてはいけない。と思い続けていた。


22,550kmという距離と2年2ヶ月と言う時間が導いた岬で、
ただただ海を眺めながらユーラシア横断を静かに祝う。

意外にも感情は落ち着いたモノで、叫ぶでも泣くでも無い。

鳥肌が立っているのは感動しているからと言うよりも、
大西洋から吹く風が思いのほか強く冷たいからであって、
感慨深さが内側からジワジワとこみ上げるものの、
ただしばらく風にさらされながら岬に立ち尽くす。


延々と広がる大西洋に、水平線は曲線に見えた。


自転車世界横断!!TERU-TERU project-Cabo da Roca03


「自転車世界横断」を大義名分に掲げて旅を始めて、
まずはユーラシア大陸を横断してしまった。


「世界一周しているのですか?」と、よく旅行者に聞かれるが、
僕はいつも「世界一周なんて出来るわけないですよ。」と言う。


時間をかけて、全ての国々のスタンプを集める事は可能だろうが、
全ての国々の風俗、文化、生活を見て回り、理解する事なんて
人間の一生を何回かけても出来るはずがない。

国のある一部の土地を通り過ぎるだけで、
国の全てを知った事にはならないからだ。

地域の郷土史を一生かけて研究している人もいる中で、
「世界を一周する。」なんて言葉にするのもおこがましく、
我々は日本全国を一周するどころか、
一つの県や市を一周する事すら出来ないだろう。

出来る事とするなら、そんな国々を通り過ぎる、
『横断』と言う行為に他ならないのかもしれない。


そんな理由で『自転車世界横断』を掲げているのだが、
地図上に線をのばして実際にロカ岬まで来てみると、
日々が旅の連続で毎日違う景色を求め続けていたせいか、
ここが終点とは思えず、「さあ、この先はどうしたものか?」
と、達成感よりも、何とも言えない空虚感を覚えた。


それはきっと旅の途中である事の確認であり、
今日も明日も再び旅の連続であるからだろう。


「ユーラシアを横断したら一時帰国をしよう。」
と、前々から決めていたので帰国はするのだが、
まだ見たい場所や、やりたい事が沢山あるので、
それらをクリアしてからの一時帰国にする予定だ。


予定では3ヶ月後くらいだろうか?

それもあくまで予定であって、どうなる事かは分からない。

旅は思いつきによって風向きが変わる。



22,550kmの道のりを思い返しながら、
この日はワインで横断記念を祝った。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Cabo da Roca01


2010年7月 箭内孝行


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あれこれ色々とありましたが、無事ユーラシアを横断しました。
応援&サポートなどなど本当にありがとうございます。
これから西ヨーロッパを回りながら、ロンドンを目指します。
イギリスに入国出来るかどうか微妙ですが、
スペインかフランスから船で渡ろうと思っています。