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古都『フェズ』の旧市街(メディナ)は世界最大の迷宮であり、
一度ここへ踏み入れた者を捕らえては離さない。

その姿は巨大な植物が長い年月をゆっくりと時間をかけて、
その根を無秩序に張り巡らせているようにも見える。

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現在も100万人近くが住むフェズの街には活気が溢れ、
昔ながらの伝統的な産業も廃れること無く息づいている。

なめし革職人街の『タンネリ』をはじめ、真鍮(しんちゅう)職人、
木工職人、機織り職人など、メディナの中には職人達の、
小さなアトリエが無数に肩を並べて、日々その技を磨いている。

モノ作りに携わる人達なら尚更だが、職人技を目の前に、
ふと足を止め、その匠の技につい見とれてしまう事だろう。

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職人は寡黙にその技を磨き、商売人は口うるさく客を引く。

その傍らでは観光客を騙しては、
つまらない小銭を稼ごうとする輩がしつこく声をかける。


そんな混沌と無秩序さの中を迷いながらも歩き回る時、
『フェズ』の文化を身を以て体験する事が出来るだろう。

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メディナの北部にある墓地からは、フェズの全景が見渡せる。

宿情報

宿:セントラルホテル 1day/150DH wi-fi無し

バストイレ共同だが部屋は広く奇麗で快適。
新市街にあり立地もよく満足出来る。オススメ!
ネットは近所のマクドナルドで無料で繋がる。


※地球の歩き方の情報よりフェズにある全ての宿が1.5倍程の料金に上がっています。フェズは宿代が高いように感じます。
イスラムブルーは空の青さを生活の中へと調和させ、
白い雲が空をより青く見せ、その美しさを誇張するように、
白い壁の中に所々写る青は、透明な空を連想させる。

アフリカ大陸初日は、ジブラルタル海峡をフェリーで渡り、
対岸のスペイン領『セウタ』へと辿り着いた。

モロッコ北端に位置する『セウタ』はスペイン領である為に、
船の上や船を降りた際の入国審査や荷物検査はない。

旅人の多くは『タンジェ』と言うモロッコの港町に行くのだが、
船上でのわずらわしさや、荷物検査での積みおろしの手間、
久しぶりに自転車を押したまま陸路国境を渡りたい、と、
言った理由から、ここをアフリカ大陸のスタート地点に決めた。

しかしセウタで何かやろうと思う事もなく、そのままツーリスト
インフォメーションで町の地図をもらい、国境まで走りはじめる。

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スペイン領だけに景色は今までとさほど変わり映えはなく、
いつもと変わらない調子でマイペースに走り国境に着く。

国境で持っていた95ユーロをモロッコの通貨『ディルハム』
に両替した所、事前に計算していたよりもだいぶ多く返って来た。
(確実に両替計算間違えて多く渡してます。)そんなラッキーもあり、
余っていた小銭は全てチップとしてあげる事にした。

スペイン国境は何故かノースタンプでそのまま素通り。
そしてモロッコ国境では誰が係員で、
だれがうさんくさいタカリか分からない状態。

制服を着るわけでもなく、色んな人が行き交い、
今までの国境で最も、いい加減な感じがした。

入国カードを書き適当な旅程を説明し、無事モロッコ入国。

こんな緊張感のない国境も珍しい。

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モロッコ入国直後。後ろがモロッコ国境。

モロッコの地図をまだ入手していないので、海沿いの道を
とりあえず南へ走り、看板だけをたよりに、『地球の歩き方』
に載っている、『ティトゥアン』と、言う町まで走る事にした。

町の感じは南へ行くにつれ、ドンドンとスペイン色が薄れる。

中東を旅していた時の感覚がフラッシュバックし、
若干の懐かしさと「異国」に来た実感が湧いて来た。

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道路看板に従いのんびりと自転車を走らせること50km、
何のトラブルもなく『ティトゥアン』に辿り着いた。

地図を広げていると、バイクに乗った変なおじさんが現れ、
「安くていいホテルがあるから着いて来い。」と、言う。
怪しい奴の常套句であるのは百も承知だが、
嫌なら断れば良いし、モロッコ人がどれだけうさん臭く、
またどんな手を使って来るのか知ろうと着いて行く事にした。

『マラガホテル』と言う、立地もまずまずの普通のホテルは、
想像していたよりはましで、宿スタッフも感じが良かった。

おじさんは「日本人が好きなだけで、チップは要らない。」
と言う。とは言え何らかの見返りを求めないはずはない。
案の定、チェックインがすんだ後「夜はどこ行くんだ?
メディナ(旧市街)を案内する。カフェに行こう、etc…」

断ってもしつこくあれこれと要求を突きつけて来る。

「自分で適当に歩き回るんで大丈夫です。」と断ると
「チップくれ。」と、想定通りの返答が来た。

モロッコ初日と言う事もあり、多めの20ディルハムを渡すと、
「ありがとう!」と、何ともさわやかに去って行った。

まあ宿探しでうろつくのも面倒だし、値段も悪くなかったので
あのおじさんには感謝だが、やはりうさん臭い奴は多い。

メディナを歩いていても日本語で話しかけて来るのは、
大体が麻薬のプッシャーか何目当てか分からない輩だ。

変な奴に話しかけられながらつきまとわれ、
「ホテルまで着いて行く。」と、30分以上追われた時は、
さすがに腹が立ち声を荒げ、「いい加減にしろ」と怒鳴った。

『世界三大うざい人種』と言う汚名が着せられているのも頷ける。
(ちなみに他はインド人とエジプト人。)

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ティトゥアンのメディナは大きく、迷ったら出るのが大変です。

そんな嫌な印象もありながら、それも一興!とひらきなおり、
これから続くであろうモロッコの旅を祝いたかったのだが、
この時期はイスラム教の断食月『ラマダーン』である為に、
ほとんどのレストランはクローズか品薄状態。

日没後は飲食を許されるのだが、
まともに食べられるレストランが少ない。

仕方なく近所の小さな商店でヨーグルトとパンを買い、
地味で質素なモロッコ初日祝いをしたのだった。

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翌日は見事な快晴。久しぶりの青空に気分も晴れながら、
日中は悲惨な程に暑くなるのだろう。と、不安もよぎる。

目的地の『シャウエン』までは約70kmのほぼ上りだったが、
朝早く出発した事もあり、夕方には到着する事が出来た。

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ティトゥアンからの眺め。シャウエンは奥にかすんでいる
山の裏側にあり、山脈を大きく迂回し、更に町へ入る際には
最後の試練とばかりに、凄まじい急な坂があります。

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リフ山脈の北に位置する『シャウエン』はティースカ山(2050m)、
メッグ山(1616m)の山肌に広がる小さな町で、この二つの山が
角のように見える事からアラビア語で『角』を表す『シャウエン』
と、名付けられた。

他の町よりも、より「青」を感じさせるシャウエンのメディナは、
こじんまりとしたものだが、家の意匠や小物、装飾品などが
美しく、歩いているとメルヘンチックな印象をうけるだろう。

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シャウエンは山の中に佇む静かな海の様でもある。


海の青さが空に写り、更に海がそれを写しかえす。

海に深く潜るように、どこまでも無作為に延びる
旧市街の迷路を歩いていると、
そこに行き先なんて存在しない事に気付く。

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マラガから4日連続で走った僕は、
喧噪から外れたシャウエンで再び連泊しようと思う。

良い空気に良い景色。

時間はまだたっぷりある。

この空とも海とも形容し難い青の町で、少々気になる腰痛を治し、
次は『フェズ』を目指し更に南へと走り出す。
珍しく続く曇り空に海はいつもより高く波打つ。
日差しが遮られた空気は行き場所を失うように漂い、
高い湿度の中、汗が止めどなく流れ、またそれを水で流す。

マラガでの2泊が効いたのか、筋肉痛は残ってはいたものの、
体力的は回復しておりペースを上げて走り出す事が出来た。

スペイン南部の海岸線は高級リゾート地が続き、
夏のハイシーズンであるこの時期に、「比較的安い宿」
と、言った類いのものは、全て埋まっており空きはほぼない。

目的地である大きな街まで走っても宿が見つからず、
風向きも良かったせいもあり、そのまま再び距離を伸ばし、
結局街から外れたホテルになんとかチェックインした頃には、
走行距離が110kmを越えていたのには驚いた。

久々に100km以上のロングランをしたのだが、
思いのほか体は元気であり、食欲がわいてきて、
その日の夜は近所の割と高級なレストランで、
セレブに囲まれ豚フィレのステーキをたらふく食べた。

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マラガを出発して一気に距離を伸ばしたせいか、
ヨーロッパ最後の地『アルヘシラス』がすぐそばにある。

ジブラルタル海峡を船で渡る為に、多くの旅人が訪れる。

もっと感慨深いモノになるのか?と、思っていたのだが、
あっさり目の前に迫る目的地に、拍子抜けした感情が残る。

翌日はアルヘシラスを目指し朝から自転車を走らせ、
遠回りにはなるのは知っていながらも、興味本位で
『ジブラルタル』に立ち寄って見る事にした。

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大きな岩山があの有名な『ジブラルタルロック』
思っていた以上に大きくて驚きました。


ジブラルタルはイベリア半島の南東端に位置し、
大西洋と地中海を繋ぐ要衝として現在に至り、
スペインの一部と思っている人も多いかもしれないが、
イギリスの統治下にある、列記としたイギリス領である。
(スペインとイギリスとでの領土問題が
未だ解決されないままに残っている。)

国境ではパスポートのチェックがあるのみで、
スタンプが押される事もなく、ほぼ素通りであるため、
別の国に入ったと言う実感は全くない。

ただ驚く事に国境を越えるとすぐそこに空港があり、
街に入るために滑走路を横断しなくてはならない。

滑走路の両側には信号があり、飛行機が飛び立つ時は
しばらくの間通行止めになる。

世界をあちこち走っていても、滑走路の上を自転車で走る
と言う経験はそう出来るものではないだろう。

そんな事を思いながらゆっくりと滑走路を渡り、
実際に見るとかなり広くて大きなものなんだな~。
と、妙な光景に気持ちが高揚した。

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ここでの通過は独自のジブラルタルポンドが流通し、
自国であるイギリスポンドの使用も可能なので、
僕は8ポンド程残っていたイギリスポンドを使おうと、
バーガーキングで丁度使い切れるセットメニューを頼んだ。
「ファーストフードが1000円もするのは以上に高い。」
と、思いながら、ポンドを使いきれた事に満足感を得た。

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街を自転車で一回りした後に、再び滑走路を渡りスペインへ。
今日の目的地『アルヘシラス』を目指し残り30kmを走る。

予約していた海沿いのホテルからの眺めは最高で、
海を眺めながらヨーロッパ最後の夜を楽しんだ。

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ガスパッチョは暑い夏には最高の栄養食です。
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イベリコ豚のグリル。モロッコはムスリム国なので、
しばらくは豚肉が食べられなくなります。。。

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旅が再開してから、あっという間にアルヘシラスへと到着し、
考える間もないままに、翌日にはアフリカ大陸へと上陸する。

何かが始まる時は、矢継ぎ早に事が進むのが良い。

無駄に立ち止まるよりは推進力を増しながら前へと進む。


翌日はいつもより少しだけ早起きして港にある、
フェリーチケット売り場に行くと、ちょうど30分後に
『セウタ』行きの高速船が出るようだったので、
迷わずその便に乗り込みジブラルタル海峡を渡った。

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ヨーロッパ最後の日は、アフリカ大陸最初の日でもある。

どうなる事か分からないアフリカ大陸縦断の旅が始まる。

しかし今後に期待や不安を感じるよりも、
荒れる海を高速で飛ばす船の揺れに、
船酔いをこらえるのがやっとなのだった。

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