◆インドにて② | 小鳥のしあわせ大使館

小鳥のしあわせ大使館

●●●●●●●●●●●●●●●●●●

散々、大学生に話しかける口実を考えたのだが、なかなか気の聞いた口実が浮かばず、しばし悩んだ結果、
結局「地球の歩き方見せてもらいたいんですけど・・」という、さりげなく、そしてしごくまっとうな理由で行くこと

にした。


部屋の外にでると、夕方の少し薄暗くなってきたホテルのレストランに、まだ大学生はいた。
そして、彼はおもむろに・・・

「別に仲良くなりたいとかそういうんじゃないんですけど次の行き先の宿とか路線の状況とかわかんないとすごく不安だしとりあえず情報だけくれれば別に一緒に飯を食いたいとか明日の予定とかは別にどうでもいいんでとにかく今の僕の所持金で日本に帰れるのかとかそういうことを知りたいだけなんでいやほんとに気とか使わなくてけっこうですよいやほんとですよ・・・」

という雰囲気を一生懸命につくり、クールを装い、「別に寂しいわけじゃないんだ!!」ということをアピールしながら、声をかけた。当然、心臓はバクバクです。


すると、二人は「あっさりと」笑顔で迎えてくれ、「地球の歩き方」も無事に借りられ、そしてその後数日間、とても親切にしてくれた。

久しぶりにメシらしいメシをおごってもらい(毎食)タバコももらい、ちょっと変わったタバコなんかも分けても

らったりし、また一緒に町を歩いたり、とても楽しい時間をすごした。
他の日本人とも話すことができて、「高校生なのにたいしたもんだ」とほめられたりして、とても楽しんだ。


みんなそれぞれに魅力的な人物であり、世の中にはすばらしい人が沢山いるんだなと、思うのだった。


そして、3日後に大学生たちはネパールに発ち、他の日本人もいなくなり、彼もそろそろ次の場所を目指すことにした。


この数日間の楽しい記憶を振り返りながら、彼は思った。


「日本にいようがインドにいようが、結局は自分が変わらなきゃいけないんだな・・・」と。


ヴェナレスを発つ日、仲良くなったインドの少年に別れを告げた。
貧しくもたくましく生きている、自分よりも年下の少年の、きらきらとした笑顔。

彼は少年が雑踏に見えなくなるのを見送ってから、力強い足取りで、駅に向かって歩き出した。