祝・アカデミー視覚効果賞受賞『ゴジラ-1.0』〜フラットな人間関係がもたらした快挙 | Rememberのブログ Love & Harmony゚・:,。☆

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『ゴジラ-1.0』が米国第96回アカデミー賞視覚効果賞受賞の快挙を成し遂げました!これまでこの賞は、映画「スターウォーズ」や「ジュラシックパーク」「ターミネーター」「アバター」などのVFXを手がけた米CG制作会社「インダストリアルライト&マジック(Industrial Light & Magic)」の独占状態でした。そこへ今回『ゴジラ-1.0』を手がけた山崎貴監督所属のVFX制作会社「白組」が風穴を開けたのです。


ハリウッド映画では、通常1000人規模のCGクリエイターが一つの映画制作に携わります。ところがこの『ゴジラ-1.0』に携わった「白組」スタッフはわずか35人。山崎監督は『少ない人数で長期間作業したことで、メンバーが短期間に習熟しスキルも上がった』と言います。結果、制作期間前半の人数不足による作業の遅れを後半取り返したばかりか、最終的には作業効率が劇的に向上したそうです。



また、この精鋭チームはZ世代の20代が主力になったと言います。今回の作品で特に印象的だった〝海のシーン〟を担当したスタッフのCG制作の技術と熱意が山崎監督の目に止まり、その結果海のシーンが大幅に増えたそうです。そのおかげで今まで陸上での戦闘シーンが多かったゴジラ映画の中で、特に異彩を放つ名シーンが生まれたのでした。


今回の受賞にあたってハリウッドの映画関係者たちが関心を寄せていたのが「どうやってこれだけの作品を低コストで制作できたのか」という点でした。ハリウッド製作のゴジラ映画にはいずれも200億円を超える制作費と、100億円規模の宣伝費が投下されました。ところが今回の「ゴジラ ー1.0」の制作費はその10分の1にも満たない15億円。そこには日米の賃金格差だけでは片づけられない山崎監督の所属する「白組」という会社に秘密がありそうです。


「白組」制作チームのメンバーは、山崎監督にも物怖じせず、年齢もキャリアも関係なくフランクに会話し制作のやり取りをしています。山崎監督が『これでいいから次へ進みなさい』と伝えると『これでいいですか?これでアメリカ納得しますかね?』とまだクオリティが足りないと具申します。さらには『〝世界〟がゴジラを待っている!』『ゴジラは世界を目指してるのに、なぜ国内だけで考えるんですか』と山崎監督をハッと我に帰らせるような発言も平気でしたそうです。



学校の部活や体育会系に始まり、芸能界からスポーツ界、官民問わず日本のほとんどの組織において「先輩・後輩第一主義」の堅牢なタテ社会構造のニッポンにあって、この「白組」スタッフと山崎監督の関係性のように、Z世代が還暦目前の社長の心をも動かすようなフラットな人間関係の組織が果たしてどれくらいあるでしょうか。世界を驚かせたローコスト・ハイクオリティのアカデミー賞作品は、当初は技量不足のスタッフも辛抱強く受け入れ、何の忖度にも縛られず自由闊達な発言を許容し、キャリアの浅い若手の意見も尊重する…度量が大きくかつ柔軟な思考を備えた、山崎監督のような明るい指導者率いる「フラットな人間関係」の組織風土から生まれたようです。


私はフラットな人間関係の妨げになるのが「敬語」だと思っています。日本人社会では初対面の人とはまず「年齢」を確認し合い、そして互いに自分の話す言葉(どちらが尊敬語を使いへりくだるか)が決まります。下の立場に入った者は上を尊重し自分の意見も差し控え、結果古参の時代錯誤なやり方が組織を停滞させるのです。昭和のように何事もスピードが緩やかだった時代に通用したこの「〝年齢〟序列」の悠長な手法では、変化のスピードが格段に上がった現代においては、組織の選択肢の幅が広がらず世界先進各国の進歩から取り残されます。



〝今と未来〟に生きる米国社会には「いつ生まれたか」などという〝過去〟に囚われた序列にすぎない年齢を聞き合うなどという無意味な習慣はありません。英語には丁寧語はあっても日本語ほど極端な尊敬語はありません。だからアメリカ人は初対面からまるで友だちのように自由に発言し合い、そんな中から新しい発想も生まれるのです。敬語とは本来対等であるはずの人間同士の間に支配層が統治のために持ち込んだ身分制度のツールの一つに過ぎません。若い社員達は対等な関係性の構築できる同期とは飲みに行っても、上下関係や身分制度の色濃い上司や先輩との飲み会には二の足を踏むのです。



私が長年勤務し所属してきた組織は、いわゆる労働集約型産業で、商品と顧客を結びつける人間力が問われるタイプの企業でした。しかし、その組織は昭和型ガチガチの〝タテ社会〟で、いくら組織内の若手が新しい試みを提言してもいつも上司・先輩の〝忖度の壁〟に翻弄され、当時は当たり前でしたが今ではブラックとも呼ばれかねない〝サービス残業(=サービスすべきは顧客のはずが会社にサービスしていた)〟の挙句、最終的に社長の鶴の一声ですべて覆される…という茶番の繰り返しでした。


このような、部下を蔑ろにし常に上ばかり見ているヒラメか、上司のご機嫌(風向き)を読むことに長けた風見鶏のような社員が幹部に重宝がられて出世していくという典型的なサラリーマン組織は、気がつくと時代の流れに取り残され、最期には外資系企業に乗っ取られ業態転換を迫られる…まさに自己の生き残りと利権にしか興味がなく〝ガイアツ〟がないと国の方向性が決められない貧困な政治家が舵取りしている、いつまでも自立できない国家の縮図のような極めて昭和的な会社といえます。


今回の「ゴジラ-1.0」のアカデミー賞受賞が、元気と自信を失いかけた今の日本社会にあって、未来を担う若者たちに勇気を与えるエポックメイキングになればと思います。世界に通じるホワイトな〝ローコスト・ハイクオリティ〟を実現したのは、昭和の時代の長時間労働と低賃金によるブラックな働き方ではなく、個性を尊重した上下関係のない自由闊達な人間関係と組織運営でした。フラットな共同体的組織運営が、これからの日本社会を大きく前へ進める原動力になるのではないでしょうか。


今回のアカデミー賞を受賞した作品は、この『ゴジラ-1.0』も含めて、作品賞に原爆を題材とした『オッペンハイマー』、長編アニメーション賞に宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』と、いずれも太平洋戦争をモチーフとした作品の受賞が目につきました。来年には大東亜戦争終結80年目を迎える我が国は、今後どんな方向性に舵を切りアクセルを上げられるのでしょうか。受賞三作品を見比べながらその未来図に思いを馳せてみたいと思います…


〈山崎監督受賞スピーチ〉

My career began 40 years ago, after the shock of seeing Star Wars and Close Encounters of the 3rd Kind. 

To someone so far from Hollywood, even the possibility of standing on this stage seemed out of reach. 

The moment we were nominated, we felt like Rocky Balboa — welcomed into the ring as equals by our biggest rivals, which was already a miracle.

But here we stand.

To all the VFX artists outside Hollywood, Hollywood was listening, and this award is proof that everyone has a chance. 

Finally, on behalf of the cast and crew of Godzilla Minus One, I want to tell our producer, Shuji Abe, who we’ve lost too soon…

We did it! Thank you so much!!


(追記)

アカデミー賞受賞後、映画『ゴジラ-1.0』の国内観客動員は受賞前週の10倍に跳ね上がり、世界興行収入も150億円を突破する文字通りの怪物映画になりました。受賞を報じる街頭インタビューでは『10回鑑賞しました』という熟年サラリーマンや『私なんかぜんぜん観てません。ほんの5〜6回です』という若い女性がいたり、あのハリウッド映画界のレジェンド、スティーブン・スピルバーグ監督まで『3回観た』と報じられるほど、この映画が多くの人々を魅了していることが分かりました。


既に6回鑑賞していた私でしたが、街頭インタビューの女性ファンの発言『5〜6回では〝ぜんぜん〟』に奮起し、アカデミー賞受賞へのささやかな御祝として更に2度劇場に足を運び通算8度めの観賞。そしてここまで回を重ねると、もう休みの日になると身体が条件反射的に劇場に向かいたくなる禁断症状に襲われ、気がつくと最終的に私の『ゴジラ-1.0』鑑賞記録は10回に達していました。さすがにこのように繰り返し鑑賞する映画は、私の生涯にもう二度と現れることはないでしょう。



10度の鑑賞で改めて実感したのは、神木隆之介と浜辺美波の熱演に加え、佐々木蔵之介、吉岡秀隆、山田裕貴、青木崇高、安藤さくら、田中美央、そして子役の永谷咲笑らの名演技がこのアカデミー級VFX映画に、より血の通った人間的な深みと重みをもたらしていることでした。世界最高峰のVFX技術と生身の人間の織りなす人間ドラマにより、この名作映画はSF映画の枠を遥かに超え、世界中の人々に大きな感動を与える不朽の名作となることでしょう゚・:,。☆