1968年にスイスの高級ホテルの支配人だったエーリッヒ・フォン・デニケンにより著され出版された『未来の記憶(Chariots of the Gods〜memories of the future - unsolved mysteries of the past』。その中で彼は、世界中に伝わる古文書や聖書の内容は神のみわざではなく、地球外の別の惑星から確固たる科学技術によってもたらされた歴史であると論じました。


デニケンはこの著書の中で、古代遺跡巨石文明神話、古文書などにまつわる謎について、学界のしがらみや因習にとらわれない中立な立場で検証し、従来の考古学の常識や枠を越えた斬新な解釈で新しい光を当てました。当時のアカデミーの権威からは無視されましたが、デニケンの著書はスイスはもとよりドイツや全米でもベストセラーとなりブームを起こしました。


幼年期のデニケン少年は、スイスの聖ミッシェル学院の礼拝堂の天井画に、神々や天使たちが天空で戦いを繰り広げている宗教画を目にして、何故神の治める幸せな天国で争いごとが起きるのか?何故全能の神が乗物(Chariots)で移動するのか?という素朴な疑問を抱いたことが、この本の執筆の原点となりました。


デニケン少年の疑問に対して聖ミッシェル学院イエズス会の進歩的な神父たちは、聖書の外典『エノク書』を読むことを勧めました。そこには、大天使ミカエルが天から地上へ降り立ち、人間エノクを天界(宇宙)に空飛ぶ乗物で連れ去る物語が描かれていました。


エノクは天界の者たち(Aliens)から先端的な知識と技術を学びました。その中で天界の一部の者たちが地上の人間と交配し計画外の巨人(Nephilim)を生み出してしまったため、地上に洪水を起こして巨人たちと人類を滅ぼす計画があることを知らされます。聖書の「ノアの方舟」以外にも、大洪水で人類という種が滅亡したという物語は世界各地の神話や古文書に記されています。


エノク書に触発されたデニケンは、その後考古学を学び、エジプト(大ピラミッド)、インド(ヴィマーナ寺院)、ボリビア(プマプンク)、メキシコ(チェチェンイツァ)、ペルー(マチュピチュ・ナスカ地上絵)など世界中の遺跡調査に赴き、さらに各地に伝わる神話や古文書を研究し、それらを纏め上げて『未来の記憶』を執筆しました。


この本で語られている「古代宇宙飛行士説Acient Astronauts Theory)」は、その後アメリカの革新的な識者、学者、芸術家たちに多大な影響を与えました。特に大衆を啓蒙する意味で、アメリカ映画界への文化的な影響は大きく、『スタートレック』『スターウォーズ』『未知との遭遇』『プロメテウス』『Xファイル』などの名作が次々と世に出されました。


本の執筆から50年、「古代宇宙飛行士説」は保守的で閉鎖的なアカデミー界にも影響の輪を広げています。イギリスの名門校エジンバラ大学の宇宙生物学科には宇宙人探索の講座があり、宇宙生物学や地球外生命体の探索方法についての授業が行われています。ワシントン州イースタンワシントン大学では、人類の古代の歴史を探求するために「古代宇宙飛行士説」を検証する学科があります。


2017年トルコのアクデニズ大学(Akdeniz University)では「UFO学(Ufology)」「地球外政治学(Exopolitics)」という、地球外生命体の探索や銀河系の外交学を学ぶ新たな学科を新設しました。「UFOと科学(UFOs and Science)」「古代の宇宙人(Ancient Aliens)」「アブダクション(Abductions)」「ミステリーサークル現象(Crop Circle Phenomenon)」についてのゼミが開講されています。


現在、世界の大学の正式な授業として「UFO」や「地球外生命体」「宇宙政治学」といった「学問」を学ぶ時代がやって来ているのです。世界中の新しい世代の若者たちは、宇宙に知的生命体はいるのか?という段階ではなく、宇宙からの生命体と遭遇した時にはどう対処すべきか?ということを既に学びつつあるのです。


エーリッヒ・フォン・デニケンの『未来の記憶』が世に出て50年、どうやら未来を担う若者たちは、ソクラテスやプラトンの時代から人類にとっての永遠の疑問〜「我々は誰で、何処から来て、何処へ向かうのか?」〜という究極の問いかけに対する、ひとつの答えの核心に迫ろうとしているのかもしれません゚・:,。☆