降り続く雨と心境一如

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地震で大地が大きく揺れた後

まるで　浮き上がる澱でも　洗い流すかのように

やむことなく　激しい雨が降り続きました

全国的に避難勧告が出され

不安や恐怖と共に過ごされた方々

雨が激しく降る中、小さいお子さんのいるお宅や

避難されたご年配の方々

本当に大変なことだと思います。

一日も早く、普段の生活に戻れますよう

願っております。

そして、亡くなられた方々には

心からご冥福をお祈り申し上げます。

この全国的な大雨で

少し前の強風を思い出しました。

大きくわさわさと揺れる街路樹を見て

気持まで、どことなく落ち着かなくなったものです。

あの強い風は

歪みや渦をどこかに　

吹き払っていったのでしょうか。

旅先の八甲田でも

雨は激しく断続的に降り続きました。

ブナの森に囲まれた八甲田ホテルは

平日で宿泊客も少なく

ひっそりと、雨にも閉ざされた異空間で

窓の外の濡れそぼる木々は

青々と生命力を増すようでいながらも

木立にかかる靄（もや）はどこか儚げで、幽玄の世界のようでした。

そして、窓に浮かび上がる灯りは

さらに神秘的な雰囲気を醸し出していました。

夢が現（うつつ）か

現（うつつ）か夢か

お風呂の窓の下に

薄緑色の美しい蛾が羽根を広げて

とまっていました。

胴体は白く短い毛で蔽われ

まるで、孵化したばかりのような瑞々しさ

雨に濡れる

ブナの葉っぱの色でした

そんな　不思議な光景を

いつまでも　飽きることなく　眺め

いつまでも降り続く雨と

わたしがいるこの地と

全国規模で激しく降り続いている雨を

思うのでした

ホテルのエントランスには

棟方志功の絵が飾られていました。

前庭柏樹子（ぜんていはくじゅし）

＜無門関第三十七則より＞

柏の木が蒼々と繁る観音院、別名柏林寺を一人の僧が訪れ

趙州（じょうしゅう）和尚に問答を挑みます。

「如何なるか是（こ）れ祖師西来意」

・・・達磨大使がインドからはるばる中国へ来られた意味とは何か！
すなわち、「禅」とは何か、「仏」とは、「悟り」とは何かという問いです。

趙州（じょうしゅう）和尚は応えて

「前庭の柏樹子」

僧：「境（きょう）を将（もっ）て人に示すこと莫（な）かれ」

心の在り方を尋ねているのに

境（心の外のもの）で答えないでください。

趙州云く、「我れ境を将（もっ）て人に示さず」僧は再び問います。「如何なるか是れ祖師西来意」趙州も再び応えます。　「庭前の柏樹子」
心と境と一体一枚、心境一如禅師の心には境など存在しないただただ前庭の柏樹子なのだ　云いたかったのです。