デジタル機器の過剰使用は子どもの脳の発達に悪影響を及ぼす、という話を、
1、依存症
2、精神疾患
3、学力低下
上記三つの観点からご紹介させて頂いています。
前回記事では、1番のデジタル機器使用と依存症の関係について書きました。
大まかにおさらいすると前回の内容は、
デジタル機器は覚醒剤などと同じようにドーパミンの分泌異常を引き起こし、依存症に陥る可能性が非常に高い
子どもの脳はまだ発達途上で、衝動抑制機能が大人より低いため、大人の何倍も依存症になりやすい
ということです。
だから大人と同じ感覚で子どもにデジタル機器を使わせてはいけないのです。
本日は2番目の、デジタル機器の使用と精神疾患について。
以前ご紹介した、こちらの書籍、
「RESET 子どものデジタル脳完全回復プログラム」
によると、今子どもの鬱や双極性障害の診断が増えているそうです。
しかし、本来子どもがこれらの精神疾患になる、というのは非常に希なことで、
実はその背後にはデジタル機器使用の影響がある、と筆者は言います。
その背景を詳しく見ていきましょう。
人間は夜になると眠くなりますが、これはメラトニンというホルモンの影響です。
朝になって日光を浴びるとメラトニンの分泌は停止し、
停止してから10数時間後、つまり夜に再びその合成が始まります。
だから人は夜になると眠くなるのです。
デジタル機器の過剰使用はこの眠りの仕組みを破壊します。
スマホ、タブレット、パソコンの画面から発せられるブルーライトは、
波長が昼間の青空から注ぐ光と同じであるため、
夜にその光が視覚から入ってくると、脳は今が昼であると勘違いし、メラトニンの分泌を止めてしまいます。
その結果、夜になっても眠れない、という結果になります。
またメラトニンは睡眠を誘発する以外にも、抗酸化物質として働くため、
昼間活動する中で生じた脳内の炎症反応を沈める働きもあります。
つまり寝ている間に、昼間の活動中に生じた脳の傷を修復してくれるのです。
メラトニンの分泌が止まると、当然この作用も期待できませんから、
脳は炎症が起こったままになって、その機能が低下していくこととなります。
これらの働きに加えてメラトニンは、神経伝達物質セロトニンの材料でもあります。
セロトニンは精神的安定をもたらす脳内物質で、この濃度が低くなってしまうと、鬱症状を呈することが知られています。
夜間のブルーライトへの暴露で、セロトニンの材料であるメラトニンの分泌が止まる訳ですから、
当然セロトニンの濃度も低下し、結果として鬱症状を呈することとなります。
実際、夜間のデジタル機器使用と鬱の発症には統計的に有意な相関があることが数々の研究結果から明らかになっています。
それから先ほど紹介した書籍の中では、夜間のデジタル機器使用と自殺傾向の間にも有意な相関があると記されています。
このようにデジタル機器の過剰使用は、本来精神疾患とは無縁の子どもたちに精神疾患のような症状を引き起こします。
そして元々精神疾患や発達障害やチック症等の心身症のある子どもが、デジタル機器を使用すると、その症状が悪化することも知られています。
実際私も病院で精神疾患の診断を受けた子どもに、デジタル機器の使い方を見直してもらったところ、その症状が改善したという経験があります。
私はこの仕事をかれこれ10数年やっていますが、
夜眠れない、朝起きられない、イライラしやすい、疲れている、そんな子どもが年々増えている印象を受けます。
もしお子さんが病院で精神疾患の診断を受け、治療をしていてもあまり改善が見られないならば、
もしかしたらその症状はデジタル機器の影響かもしれません。
次回はデジタル機器の使用と学力低下について。