中学3年の国語の教科書に井上ひさしさんの「握手」という短編小説が掲載されています。
今から10年以上前のことですが、
一緒に学習する子どもと初めてその話を読んだ時に、私はとても印象的な言葉と出会いました。
「困難は分割せよ」
作中の登場人物であるルロイ修道士が主人公の「私」に伝えた言葉です。
理由は詳しく書かれていないので分かりませんが、
主人公の「私」は、中学3年生の秋から高校を卒業するまでの間、
ルロイ修道士が運営している光ヶ丘天使園という児童養護施設で暮らしていました。
天使園を卒業後、大人になった「私」の元にある日ルロイ修道士から連絡が来ます。
故郷のカナダに帰ることになったから、その前に卒業生たちに会っておきたい、と。
上野の西洋料理店で二人は再会します。
初めて「私」が光ヶ丘天使園に来た日、ルロイ修道士が力強い握手で出迎えてくれたこと、
ルロイ修道士が子どもたちに食べさせる野菜を一人せっせと畑で育てていたこと、
高二のクリスマスに「私」が天使園を無断で抜け出して東京に遊びに行ったこと、
そしてその時初めてルロイ修道士から打たれたこと、
二人は様々な思い出話をします。
しかしその時「私」は、ルロイ修道士が注文したオムレツに全く手をつけていないことに気付きます。
そこで「私」は、ルロイ修道士が卒業生たちに挨拶に回っている本当の理由に思い至ります、、。
心温まる素敵な物語なので、後はご自身で読んでみて頂きたいのですが、
この西洋料理店の会話の中で、ルロイ修道士が「私」に伝えたのが、先程の言葉です。
「仕事がうまくいかないときは、この言葉を思い出してください。
『困難は分割せよ』
焦ってはなりません。
問題を細かく割って、一つ一つ地道に片付けていくのです。
ルロイのこの言葉を忘れないでください。」
抱え込んだ問題の大きさに圧倒されて何をすればいいか分からなくなる、
日々の生活の中で誰しも一度はそんな経験をしているのではないでしょうか?
例えば私が関わっている分野で言えば、
不登校になり長い間学習から離れていた状態から、高校受験、大学受験に向けて学習を再開したけれど、
一体何から手をつけていいか分からない、などという状況がそれに当たります。
そんな状況においてこそまさに「困難は分割せよ」なのです。
それでは、「困難を分割する」とは具体的にどうすることなのか?
そうすることで何が得られるのか?
長くなりましたので次回に続きます。