はじめに
近年、高齢の親に「会いたいのに会えない」という“面会拒否”の相談が増えています。
介護施設に入った親、病気や認知症で判断力が弱くなった親──その親のもとに通いたくても、
「きょうだいの一人に遮られて会えない」
「施設と連絡が取れない」
といった声が後を絶ちません。
この「面会拒否」は、親のためという名目で行われる一方で、きょうだい間の確執や支配欲が背景にあることも少なくありません。
今回は、そうした“トラブルの背景”を専門家の視点からひもといていきます。
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1. 親が要介護になると起きる「主導権争い」
親が高齢になり、介護や医療のサポートが必要になると、家族のなかで「誰が親の面倒を見るか」という大きなテーマが浮上します。
ここで起きがちなのが、きょうだい間での主導権争いです。
「私がいちばん親のそばにいる」
「介護しているのは私だから口を出さないで」
こうした心理から、特定のきょうだいが“親を囲い込み”、他のきょうだいに会わせなくなるという構図が生まれます。
2. 介護と支配が混ざり合う「囲い込み」
「面会拒否」の多くは、“表向き”は親のためを装っています。
たとえば、
- 「混乱するから会わせないほうがいい」
- 「医師が面会を控えるよう言っている」
といった言い分で、親に会わせない正当性を主張します。
しかし実際には、親の財産管理を握りたい、自分の思い通りに介護を進めたいという“支配欲”が隠れていることも。こうした「囲い込み」が深刻化すると、他のきょうだいが親と会う道が閉ざされてしまいます。
3. 認知症や病気が“口実”になる
親が認知症や重い病気を患っていると、「面会が負担になる」として会わせない口実になりやすくなります。
もちろん、医学的に面会が難しい状況はあります。
しかし、第三者の医師やケアマネジャーの判断ではなく、きょうだいの一存で面会を制限するケースが多く見られるのが実態です。
つまり、親の病状が「囲い込み」や「支配」の正当化に利用されているわけです。
4. 施設やケアマネも板挟みに
介護施設やケアマネジャーは、基本的には「連絡窓口となった家族」とやり取りします。
そのため、たとえば長男が「妹には連絡しないでほしい」と伝えれば、それに従うことが一般的です。
これは法的に問題があるわけではないものの、結果的に特定の家族が情報を独占し、他のきょうだいを排除する状況をつくってしまいます。
施設側も「家族間の問題には立ち入れない」として消極的になるケースも多いのです。
5. 法律の“空白地帯”と心理的な壁
驚かれるかもしれませんが、親と会う権利を保障する法律は日本には存在しません。
また、親が認知症で意思表示できない場合、「本人が会いたくないのか」「きょうだいが会わせたくないのか」の線引きも非常にあいまいです。
さらに、会わせてもらえない側も
- 「しつこく言うとトラブルになる」
- 「親に迷惑がかかるかも」
という思いから、なかなか強く出られないのが現実です。
おわりに:会えないのは“あなたのせい”ではない
「なぜ自分だけ会わせてもらえないのか」
「親が本当に会いたくないのだろうか」
そんな思いで苦しむ方に伝えたいのは、
このトラブルの背景には、あなたの努力不足ではなく、“家族関係の構造的な問題”があるということです。
一人で抱えず、ケアマネ・弁護士・第三者機関などに相談することで、突破口が見えることもあります。
「親と会いたい」という自然な願いを、どうか諦めないでください。
次回の記事では、「面会を拒否されたときに取るべき具体的な行動」についてお話しします。
──公認会計士・税理士/高齢親の囲い込み解消コンサルタント 白岩俊正
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