はじめに:なぜ、親を“独占”しようとするのか?
高齢の親が認知症や病気で判断力が低下してくると、その支援を担う子どもが必要になります。
しかし近年、「親を囲い込む」――つまり、きょうだいの一人が親を自宅や施設に入れたまま、他のきょうだいに会わせようとしないというケースが増えています。
この行動には、法律や介護制度だけでは説明しきれない「心理的な背景」が潜んでいます。
今回は、公認会計士・税理士としての視点、そして家族心理の視点から、この問題を掘り下げていきます。
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まず整理しておきたいのは、「親を囲い込む」とはどのような状態を指すのかという点です。
単に親と同居しているだけでは「囲い込み」とは言えません。
たとえば以下のような状況が該当します。
- 他のきょうだいが親に連絡しようとしても取り次がない
- 面会を求めても理由をつけて拒否する
- 「親が会いたがっていない」と主張するが、本人の意向が確認できない
- 施設に入所させていても、その連絡先・見学・面会の情報を他きょうだいに開示しない
これらは、法的には“支配的な財産管理”や“面会交流権の妨害”に近い行動です。
しかしもっと根本的には、「親をコントロールしようとする心理」が背景にあることが多いのです。
親を囲い込む心理のタイプ分類
では、囲い込みをする子どもには、どのような心理があるのでしょうか?
以下、代表的なタイプを4つに分けて紹介します。
① 優越感・支配欲型:「自分が一番親思い」だと信じたい
「他のきょうだいは何もしてこなかった、自分だけが親を支えている」
このような認知が強まると、親への介護や支援が「誇り」や「使命」ではなく「支配」に変わっていきます。
このタイプは、親と自分との絆を“独占的”に扱いたい傾向があり、他のきょうだいを「外野」「邪魔者」として排除しようとします。
② 不安・依存型:親を手放すのが怖い
逆に、親を手放すことに強い不安を抱えているケースもあります。
「親がいなくなったら、自分はどうなるのか」という不安が根底にあるため、親を他者と共有すること自体に強い拒否反応を示します。
特に、心理的に未分化な親子関係(いわゆる“共依存”)があると、囲い込みは「生きるための防衛」として現れます。
③ 過去の恨み型:きょうだいへの報復
きょうだい間で過去に確執があった場合、「親を通じて仕返しをする」ような構図になることもあります。
「今さら親に近づいてくるなんて虫がよすぎる」
「お前には介護の資格なんかない」
というように、親への態度ではなく、きょうだいへの“敵意”が主軸になるパターンです。
④ 財産・相続型:経済的利益のコントロール
最後に、やはり見逃せないのが「財産の管理・相続」が関係するケースです。
親の通帳を管理している、施設入所の契約者になっている、成年後見人になっている――そうした法的立場を盾に、親に会わせないという状況が見られます。
この場合は、心理というより「権限の囲い込み」が中心となるため、法律的な対抗手段も検討する必要があります。
なぜ、放置してはいけないのか?
囲い込みが長期化すると、以下のような深刻な問題を引き起こします。
- 親自身の「会いたい人に会う自由」が奪われる
- 親の認知機能が低下する(社会的交流の欠如)
- 相続・財産トラブルの火種になる
- 家族の関係性が決定的に壊れる
そして何より、会えないきょうだい側が「親に会えなかった後悔」を一生引きずることにもなります。
「親は家族みんなのもの」という視点を取り戻すために
高齢の親のケアは、単なる“作業”ではなく、“関係性の共有”でもあります。
囲い込みをしている子どもに対して、正面から否定したくなる気持ちもあるでしょう。
しかし、心理的には「自分も愛されたい」「不安なんだ」という内面があることも確かです。
一方で、「会えないきょうだい」が心を病んでしまうほど苦しんでいる現実も、直視しなければなりません。
家族の誰かが犠牲になることなく、みんなが“親との関係”を持てるよう、冷静な対話と必要に応じた法的整理が求められます。
おわりに:孤立ではなく、協力を選べる社会に
私たちが目指したいのは、「親をめぐってきょうだいが争う」のではなく、「親を中心にきょうだいがつながる」社会です。
親は、一人の人間であり、誰かの所有物ではありません。
だからこそ、「親は家族みんなのもの」という視点を、一人でも多くの方に思い出していただきたいのです。
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