どんなアプローチでもそうですが、良いことを聞いた！知った！となれば、早くそれを習得したいと思うのも無理はありません。ただ出だしはゆっくりとアクセルを踏んでくださいね。踏み加減は練習していくなかで、身体が覚えていくものです。
先生！ 
はい！なんでしょう。今日はどうしました？
先生の言われていたことを、ちゃんとやっていたんですよ？ちゃんとやっていたのに、最近、不安なことばかりに気が付いてしまって、かえって毎日、胸のざわつきが止まらないんですが…悪化してるかも…とか思って…
一字一句逃さずに、ノートにも書いていましたし、忠実に練習をしていたつもりです。
でも胸のざわつきが止まらないし、なんか神経が前よりも敏感になっているような気がするんです。
確かに神経が過敏になってしまっているようですね。このアプローチを始めて、間もない人にありがちな「力み過ぎ」がそうさせたかもなぁ。力み過ぎですかぁ？そんなつもりないんだけどなぁ。
初回のカウンセリングで、あなたは最後にこんな事を言ってくれましたね。「頑張ってちゃんとやりますので、先生！最後までよろしくお願いします！」って。
えっ！？それのどこがいけないんですか？
頑張るのは当たり前だし、やるからにはちゃんとやりたいです！
んー、確かにそれは必要な事だと思いますよ。おそらく不安感や症状についても、今までになく真正面から、向き合っていたんだと思いますよ。
はい、ちゃんとやってましたよ。ジッと観察してました！ジッと？それって観察じゃなくて、ジッと監視になってませんでしたか？監視？確かに出てきた不安や、不快症状がどうなっていくのか、ジッと見てましたが…これって間違ってるんですか？
んー、ジッと見るほどのちゃんとした頑張りはあっぱれなんですけどね。その状態のなりゆきを、ジッと監視するかのように見ることではないんですよ。
もしかして、もっとさりげなくでよかったということですか？というより、今だけを見て欲しいんです。今の確認です。その先のなりゆきをジッと見ているのは今を見ているようでいて、実際は未来へ意識は飛んでいるんです。
こうなっていないか？あーなっていないだろうか。そうなったら、こうしなきゃ…みたいな。
あっ！確かにそうだったかも。その不安や症状を見ていても、この後、こうなったらどうしよう…って思いながら見ていました。観察しているつもりが、いつの間にか監視になっていたんですね。
今まで避けてきた不快な感情や症状に向き合うのって簡単じゃないです。そのままの状態をただ、見るんですが、あなたのように意識しすぎてしまう人がいるんです。不快な感覚に気付くやいなや、その行き先をじっと見つめているのって、かなりの力技ですよ。
はい、あとですごい疲れました。それに常に今の自分はどうだろう？って自分の感じ方、状態にいつも意識を向けていたような気がします。確かにこれは監視ですね。そうですね。あくまで気付いたときに、それをあるがままに迎え入れ、それがあることを確認するだけのことです。あとは手放しちゃう。そもそもの今に自分を戻して、そっちに取り組むだけなんです。あなたは気付くことで、先の展開をコントロールしようとしていたのかもしれませんね。
でも、無理はありません。今まで避けてきたことに向き合うのですから、余計に意識してしまうんですから、神経だって敏感になるというものです。
はい。そのようです。今まで逃げてきたことに向き合うんですから、力だって入ってしまいますよね。そうですね。それが今回わかった上で、伝えておきたいのは、はじめのうちは、ゲーム感覚でやっていってください。眉間にシワを寄せてやるようなことはしないでください。もっと力を抜いていいですよ。コントロールするために実況中継などをやるのではないということは、もう一度確認しておいて下さいね。
それと、あれやこれやと、一気に様々なことに気付こうとか、お話したことを全てやりきろうとしないでくださいね。
監視や何もかもやろうというのは、どこかで症状を受け入れるというより、あわよくばコントロールしてやろうという意識になりがちです。
なるほど。新しい方法は徹底的に習得したい自分がいました。焦ってもいますから、早くうまくできるようになろうと必死でした。
それと同時に、はやめに気付いて不安や症状をできる限り、抑えこもうと考えていたのかもしれませんね。
もっと気楽にやったほうがいいですね。そうですね。ただありのままの状態をそのまんま観察して、そのあとは「そもそもの今」に自分を戻していこうと思います。
まだ練習も間もないからこそ、今回のような状態になる人は少なくありません。決してこの方法が向いていないのではなく、ちょっと張り切りすぎたぐらいに思って、次回からは、もっと力を抜いてやってみてくださいね。少しすると、また落ち着いてきますよ。はい！わかりました！もっと緩くやっていきます！