パニック障害になると、ひどい恐怖感にとらわれ、家で一人で過ごすことが困難になる人がいます。どうにかなってしまったら…なった事がない人には到底分かり得ない、誰も助けてもらえない不安は、はかり知れません。
先生、私ここ数年、家に一人でいることができなくなってしまって...
そうですか。結構そんな人いますよ。
えっ!?、そうなんですか? 私だけかと思った...
それで、どんな風に対応しているんですか?
主人は会社なので、戻ってきてもらうわけにもいかず、近くの実家へ一時的に身を寄せるか、お母さんに来てもらうかしています。
お子さんはいないんですか?
います。自分の子供いてくれたら大丈夫だったときもあったんですが、最近は...
そうですかぁ...それはお辛いですね。
誰もが一人でいることは、不安だったり、むなしさを覚えるときもあるものですが、それも一時的なものですから。あなたの抱える一人でいることというのは、レベルが違うんですね。
何を怖れているのでしょうね。
それはハッキリしています。
一人でいるときに、発作症状が出てしまったら、どうしようもなく取り乱してしまうことが怖いんです。
取り乱す?
はい。変になったらどうしよう...って。
何かしちゃうんじゃないかって思ってしまったり、ともかく無性に怖いんです、一人でいることが。
もう一度お聞きしますが、そんなとき、あなたはどのように対処するんですか?
酷くなってから、今は一人でいることがないので、目にはいるところに、身内がいれば何とか怖さもしのげますが...
とは言っても、どうしても一人でいるしかない事態もありますよね?
はい、それがもう大変なんです。だから一刻も早く治したいんです。
自分の家なのに、落ち着いて座ってられませんし、テレビや、灯りは全部屋付けて回りますし、部屋の中をその時間の間、ずっとウロウロしてしまうんです。
気持ちをリラックスさせようと必死になるんですが、もうそんなときは、何をやってもダメなんです。結局は、主人に電話をして気を紛らわしたり、友達に電話して来てもらったり...ともかく迷惑をかけっぱなしなんです、私。
もうどうしたらいいんだか...
大丈夫ですよ。あなたにだけ起きていることではありません。パニック障害などの不安障害を抱えている人の半数は、一人でいることをとても怖れています。理由はあなたと同じようなことです。
治していく方法はあります。ただこの方法は、その場で、その恐怖感が消えるような魔法ではありません。
というと...
あなたが目指さなくてはならないのは、「恐怖感なく一人でいられること」ではなく、「恐怖感はあっても一人でいられる」ようになること。まずはここを目指しましょう。
恐怖感を無くそうとしてはいけないんですよね?
そうです。恐怖感と戦ってはいけませんよ。
戦うのではなく、眺める、観察するスタンスでいられるようになるために、自分をコントロールする力を養っていく必要があるということです。
はい...なんか難しそうですけど...
まずは前提として、あなたが考える、「一人でいると、こうなってしまうんじゃないか...」などの内容はすべて「思考」、つまり単なる考えに過ぎないということ。そして怖いという感情は、その単なる考えの中から生まれた一過性のものに過ぎないということ。ここを前提として理解してください。
はい、私もそれは一つの考えに過ぎないことはわかってきました。でも、どうしても恐怖感だけは抜けないんです...
そうですね...そうした思考をあなたは今に至るまで、何度も重ねてきてしまったので、脳としては「事実」として学習してしまっているんです。
思いも繰り返されれば、脳は事実と間違って受け取ってしまうということですか?
そうです。あたかもソレが事実として受け取るので、身体にも、感情にもリアルに事実かのような反応が出てきてしまうんです。
そして面白いことに、それだけリアルに反応が出ているにもかかわらず、本当にそれが起きたことはないんです。
はい、その通りです。自分が毎回のように思い描いている最悪な状況は、一度も起きていません。
そうした妄想ともいえるものから、あなたの「恐怖感」が生まれているのだということを踏まえて、これからあなたが実践していってほしいことがあります。
はい、それはどういったことですか?
私、何でもやりますよ。
単純に「指さし確認」をしてほしいということです。
指さし確認? それだけ?
「あれがテレビというモノです」「これは掃除機というモノです」とかね。
中学生の英語の勉強みたいですね。
「あれが、これは」と指さし確認しながら、事実だけを言葉にしてほしいんです。
恐怖感でいっぱいな時、どうにかして気を紛らわそうと必死ですよね。
その状態は「今」にいません。
このあと、つまり未来にいってますよね?
そうですね。このあとのことを漠然と怖がっていると思います。救急車で運ばれている自分とか、子供が怖さで泣いている光景とか...
だから、その時、「今のうちにどうにかしないと!」って必死になっている自分はいます。
そんな状態はますます思考が暴走してしまって今にいることができません。
どんどんと妄想がかってしまって、最悪な展開に自分でもっていってしまうのです。
そこから戻ってこなくてはならない...?
その通りです。
ただし、そうしたからといって、すぐに恐怖感が和らいだり、消えたりすることはありませんよ。
その恐怖感は神経の興奮状態ですから、物理的に時間の経過が必要なんです。
私たちにできることは、今にいない自分を、指さし確認をして、「今、自分という実体がちゃんといる」ことをしっかりと確認するということなんです。
それが恐怖感がありながらも、ちゃんと自分は居るということになるんですね。
そうです。こうした客観的な自分確認を、その間、断続的に言葉と指さしでしっかりと確認動作をしていきます。
それが「今ここ」を認識できている状態、今にちゃんと戻ってきているということになります。
そうしていくとどうなるんでしょうか。
その場ではないものの、いずれは恐怖感もなくなっているんでしょうか。
恐怖感を無くすのではなく、恐怖感に対する免疫と言うんでしょうか、抵抗力が生まれてきます。崖っぷちでありながらも、ちゃんと歩けている実感を伴うようになるでしょう。そうしているうちに、気付けば、恐怖感が減ってくるようになります。
減らそうと努力しなくても、こうした「今ここ」を実感していく訓練を重ねていくことで、一人でも家に居ることができるようになってきますよ。
私、もともと一人で居ることが、嫌いな人間じゃなかったんですよ。むしろ、一人で静かな部屋で本を読んだり、一人カフェしたり大好きだったんですよ。それが今や...
そうでしたか...でも、ちゃんとまた一人の時間を楽しむことができるようになりますよ。
はい。そうなれるように、ちゃんと練習してみます。
「あれは〜というもの」
「これが、〜ということ」
など、モノや、自らやっていることなどを、指差し確認しながら、言葉にしていきます。
そうすることで、「今ココ」を離れてしまった自分を取り戻していくことができるようになってきます。
あらゆる恐怖感は未来にあります。
不確定な未来を先取りすることなく、何も起きてはいない、「今ココ」に自分を引き戻すことが
大切です。
今のあなたなら、それができます!
レッツトライ!
以上、「パニック障害になると、一人が怖くなる」でした。
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