二つの漫画をご紹介します。 | 井上政典のブログ

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 歴史ナビゲーターの井上政典がお贈りする祖国日本への提言です。
 
 ご意見は賛成反対を問わずどんどん書いてください。

 ただし、社会人としての基本的なマナーは守ってくださいね。

 還暦をかろうじて過ぎていますが、漫画は大好きです。子供のころは『巨人の星』や『タイガーマスク』また横山光輝氏の『三国志』などありとあらゆるジャンルの漫画を読んできました。さらには『青の6号』や『伊賀の影丸』または『のたり松太郎』など一つの分野に特化した漫画も多数ありましたね。

 

 日本の漫画とアメリカのコミックの違いをご存知ですか?

 

 アメリカのコミックは悪役と正義の味方がはっきりとしており、毎回同じ設定の中で事件が進行していく一話完結型が多いのですが、日本の漫画は設定自体が変化し、主人公が読者と共に成長していく、いわば大河ドラマ的な漫画が多いのです。

 

 孫と一緒に見ているプリキュアなどもいろんな性格を持ったプリキュアが困難を通じて成長していくのです。まあこの漫画は設定が変わるというよりも主人公がどんどん変わりますね。

 

 もちろん活字の本もたくさん読んできました。でも、最近は活字離れがどんどん進んできているようです。

 

 隣の韓国ではもっと深刻な事態になっています。それは朴正煕大統領時代に漢字教育をおろそかにし、ハングルだけを使用するという教育を始めました。過去に漢字を知っている世代は問題なかったのですが、初めから漢字を習わなかった世代が漢字が読めなくなっていったのです。

 

 福岡市も駅名の表記が漢字、英語、そしてハングルとなってめんどくさいですが、観光客としてくる韓国人の多くが漢字が読めなくなっていることからハングル表記が始まったと言われています。

 

 文章もすべてカタカナで書かれているようなもので、その言葉自体を知らなければ何のことか想像だにできません。

 

 そのためどんどん活字離れが進み、ネットの書き込みでもわかるように意見を書き込んでくるのが本文をほとんど読まずに、タイトルやコメントだけを見て書き込んでくる人が多いのです。それは日本のネット社会でも言えていますが、自分ではちゃんと検証せずにネット上の意見だけで自分の意見を言う人が散見されるのです。

 

 そんな中、活字の本を読めと言っても何も変わりません。

 

 だから、今回の私の出版した本は漫画にしました。

 

 7月1日から15日まで繰り広げられる福岡で最も観光客を呼べるお祭り「博多祇園山笠」の起源となった臨済宗の僧侶・聖一国師の半生を描いた作品です。原作・製作総指揮を私がそして福岡在住の漫画家・渋田武春氏が漫画を担当していただきました。

 

 2012年に友人らとともに承天寺で「博多の恩人聖一国師物語」を上演したのがきっかけで、それを見て感動した中間令三おいしゃんが漫画にしたいと申し出てこられました。でも、漫画化が容易ではないと知っていますので、良い漫画家が見つかればいいねと思っていましたが、中間氏は執念で渋田先生と出会われ、この話が本格的にスタートしました。

 

 実は渋田先生も偶然にもこの劇を観ておられ、当時の様子や観客の方々の盛り上がりを肌で知っていたのです。

 

 それでも鉛筆書きのネームと呼ばれる下書きを承天寺の住職に見せたり、博多祇園山笠振興会にもっていったりして細部まで時代考証を重ねていきました。そして清書されたものをもう一度承天寺や振興会に持ち込み再度チェックしたり、私と渋田先生で打ち合わせしたりと大変な作業でした。それでもどんどん現実味を増してくる本を作り上げるのはとても楽しい作業でした。

 

 そして原稿は完成しましたが、そこからが私の出番です。これを出版するには250万ほどかかります。そこで広告と協賛金を集めに回りました。二か月ほどでめどが立ち、5月末には刷り上がり、手元にこの本が来たときには格別の喜びでした。

 

 6月6日は記者会見を開き、今日までに西日本新聞、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞が大きく記事を写真入りで掲載していただきました。産経新聞も近々掲載予定と聞いておりますし、月刊誌でも『ふくおか経済』の来月号に掲載予定だと聞いております。

 

 また同日福岡市の教育長さんに福岡市の公立の小中学校の図書館(213校)に寄贈することを申し出て、贈呈式をさせていただきました。これもご支援いただいた皆様のおかげです。

 

 博多の山笠は旧筑前藩内のお祭りに影響しており、飯塚、直方、戸畑、八幡などの祇園山笠の起源が博多祇園山笠であり、聖一国師が起源となるお祭りです。

 

 お汐井取りの行事から生まれた言葉が山笠の掛け声である「オッショイ!」であり、その「お汐井」が本来は「お潮井」(海砂・真砂)で、これはイザナギノミコトが黄泉の国に行って禊をした時に海水で身を清めたところから始まるという説を書いたのが拙著『オッショイ 福岡の神社面白い』(啓文社)です。

 

 実はもともとこの漫画の起源となった聖一国師を調べている時に気づいたことなのですが、そこから神社の研究が宗像大社沖ノ島に5回も受け入れていただいたことにより、ものすごい速さで進み、去年の出版に結び付いたのです。

 

 日本文化の特徴の一つはこの「結び」。いろんなことを単体で終わらせることなく結んでいくことにより、いろんな形に変化し、たくさんの人と出会い、そしてそれが日本のためになっていくということを微力ながら実践しております。

 

 

 さて、もう一つの本ですが、これは10年来の友人であり兄弟分である狸オヤジから頂いた本(漫画)のご紹介です。

 

 『楽園のゲルニカ ペリリュー』(武田一義著・白泉社)という漫画です。

 

 ペリリューという言葉に反応した読者は歴史通です。そうあのペリリュー島の戦いを描いている漫画なのです。

 

 拙著が絵の細部にこだわり、歴史の副読本にされてもいいように制作したのに対し、この本は徹底的なディフォルメで登場人物を漫画チックに描き、最初はほのぼのとした漫画なのかと思わせる作りなっています。

 

 しかし、もうペリリュー島の激戦をご存知の方はお分かりのように、日米の若者が血で血を洗う戦いを繰り広げた場所です。ちっぽけな島ですが、マッカーサーが自分の名誉の雪辱するためにフィリッピン攻略を海軍が反対したにもかかわらず強硬に主張したために、流さなくていい血がたくさん流れたのです。

 

 フィリッピンもスペインからアメリカに宗主国がいつの間にか変わり、そして日本の占領によって他の国のように解放された場所です。しかしインドネシアやマレーシアのように連合国の上陸作戦がなく通過したところは、インフラを壊されずに戦後の独立に邁進できましたが、フィリッピンはアメリカ軍が上陸し各地で日本軍との間で壮絶な地上戦を繰り広げたためにインフラは破壊され、一般市民も戦闘に巻き込まれて大勢亡くなりました。

 

 戦後、復興に尽力したアメリカはすべて日本軍のせいだと教育したため、東南アジアの中では親日・反日が入り混じる国になっていますが、この小さなペリリュー島には大規模な飛行場があり、その飛行場を占領することが米軍のフィリッピン進攻に必要不可欠だと思われていたのです。

 

 南北9キロ東西3キロの本当に小さい島です。当初アメリカ軍は二日もあれば占領できるだろうとたかをくくって圧倒的物量で攻めてきました。ところが後にベトコンのクチトンネルに代表される戦術のお手本となった功名な日本軍の持久戦によって40日余りにわたって頑強に抵抗し続けるのです。その奮闘ぶりに先帝陛下も異例の多さのお褒めの言葉を賜るのです。

 

 もちろん日本軍守備隊で無傷の生存者は誰もおらず、寄せ手の米軍も日本軍の死者を上回る死傷者を出した最も過酷な戦場だったのです。

 

 指揮する軍曹も従う兵隊も20代の若者。相手の米軍の兵士たちも同じ20代がほとんどで、大勢無残な死に方をしていきます。

 

 しかし、簡略されたかわいい兵隊として描かれていますので、初めはその酷さに気づきません。しかし読み進めると戦争の酷さ、残酷さがいたるところから読み取れます。それでいて決して単なる反戦の漫画ではないのです。

 

 国家による戦争を戦った人の気持ちは戦場でたまの飛び交う中を経験した人でないとわからないと思います。しかし、若い兵士たちは飢えと渇きと死の恐怖にさいなまれながら何とか生きる手立てを考えていこうとするのです。またそんな地獄のような戦場では生きることの方が死ぬことよりも大変なのです。

 

 そういうことを淡々とした絵で描いていありますが、どんどん現実のものとして引き込まれていきます。本を頂いてからもう3回読みました。毎回感じ入るところが違ってきます。

 

 漫画とばかにすることなかれ、世界中の人が日本の漫画文化に興味を示し、漫画が与える影響は計り知れないものがあります。

 

 一時は芸術とは程遠いところに位置づけされていた浮世絵がヨーロッパの絵画に大きな影響を与えていたのがわかって芸術として見直されました。それと同じことが漫画の世界で言えるのではないでしょうか。

 

 そして本はできれば本屋でお買い求めいただきたいと思います。これらの本を探している間に別な秀逸な本との運命的な出会いもあるかもしれません。本屋は知的な空間です。そこにスマホに話ずらされることなく一時間いるだけで頭の中がすっきりとしてくるような感じがありませんか。

 

 福岡の方ならば本屋に行けば拙著『博多の恩人聖一国師と博多祇園山笠』はすぐにわかるところに平積みされています。その他の地方の方はネットでも仕方ないでしょうか。

 

 ペリリューの方は残念ながらネットの注文の方が便利かもしれません。でも、行きつけの本屋さんを作っておけば、すぐに取り寄せてもらえますよ。

 

 図書館で読むというのも一つの方法ですが、作家の立場から言わせてもらうとたくさん売れてなんぼの世界です。そして次の著作に取り掛かることができます。

 

 これをお読みの出版社のみなさん。いろんな企画があります。ぜひご連絡ください、世間の話題になる本を書く自信があります。

 

 また講演・卓話・研修など時間のある限り引き受けます。予算はそちらに合わせます。一応プロですからただ以外で引き受けますよ。

 

 そして最後にペリリュー島の激戦を締めくくる守備隊からの最後の暗号電報は「サクラ・サクラ」でした。この言葉に英霊になられた方がいかにそこを思い、家族のために死んでいったかがわかる言葉ではないでしょうか。

 

 そういう思いを若者にさせたくありません。だから他国に日本に攻め込まれないような備えをする必要があると思っています。そういう面からも憲法改正論議を大勢の方々とともにしていきたいと思っております。