カメラで意図的に思い通りの表現をするためには

①絞り
②シャッタースピード
③ISO感度

この3つの知識が必要不可欠です。


今回はその内のひとつ
『絞り』について学習します。







この金属の板がレンズの絞り羽根
実際に見たことがない方もいらっしゃるかもしれません。
『絞り』とはこの部分を開けたり締めたりして調整することを指します。

絞りを操作できる撮影モードは
・絞り優先モード
・マニュアルモード です。




絞りの役割は主に
①明るさ(露出)の調整
②ピントの合う範囲の設定
の2つを担っています。


①明るさ(露出)の調整
一回目の#01『露出』でも出てきたように
絞りは、シャッタースピード、ISO感度とともに明るさの調整をします。

絞りはレンズについたカーテン(遮光)と考えるとイメージがしやすいと思います。
カーテンを大きく開けると、光を多く取り込み
カーテンを少しだけ開けると、光はあまり入ってきません。

カーテンを大きく開ける=絞りを開ける
(F値を小さくする) 例:F2.8

カーテンを少しだけ開ける=絞りを絞る
(F値を大きくする) 例:F8.0

F値とは絞りの開閉の値を示し、
数字が小さいほど絞りが開くので、多くの光を取り込み、
数字が大きいほど絞りが絞られるので、あまり光が入らず暗くなります。


F値を1段刻みの数字で表すと
1.4/2.0/2.8/4.0/5.6/8.0/11/13/16/22/32
で表され、
例えば、F2.8からF4.0に絞ることを
「1段絞る」
と表現し、1段絞ると明るさは1/2に。

逆に、F4からF2.8に開けることを
「1段開ける」
と表現し、1段開けると明るさは倍になります。

明るさが倍になれば、同じ条件下ならシャッタースピードを倍の速さ稼げます。





実際の写真で絞り羽根の開閉状況を確認します。
(開放絞りF1.4のレンズ使用)

【F1.4】=絞り開放

【F2.8】

【F5.6】

【F16】=このレンズの最小絞り

F値が大きくなるにつれ、絞り羽根が閉じて、光の通る穴が小さくなり、光を取り込める量が減っていくのが分かりますね。







②ピントの合う範囲の設定
絞りは開くと(F値を小さくすると)、ピントが合う範囲が狭くなり、ぼける範囲が広がります。
反対に、
絞りを絞ると(F値を大きくすると)、ピントが合う範囲が広くなり、ぼける範囲が狭まります。

このピントが合う範囲を【被写界深度】といいます。


写真で確認です。



マジックペンをこのように配置して、センターの赤ペンにピントを合わせ、正面からいろんな絞りで撮ってみます。
(焦点距離100mm、開放絞りF2.8のレンズ使用)



【F32】被写界深度が深い
ピントの合う範囲が広いため、手前から奥までピントが合い、全ての色のペンがほぼハッキリ見えますね。

【F16】

【F8.0】
絞りを開けることで、だんだん被写界深度が浅くなり、赤ペン以外がぼけていきます。

【F5.6】

【F2.8】被写界深度が浅い
この条件で絞りを開放にすると、赤ペンにだけピントが合い、それ以外の色のペンがぼけます。

主役を赤ペンとすると、赤ペンだけを注目させることができて、主役の存在感を高めたい時に有効です。

※単焦点など明るいレンズでの絞り開放は、明るさを確保できたり、ボケ量が大きいため、ついつい多用したくなりますが、ボケ過ぎると逆に何を表現したいのかが分からなくなってしまう場合があるので注意が必要ですね。


【F2.8】Case.2
先程と同じ絞り(開放F2.8)で、今度は赤ペンではなく、前から3列目の紫のペンにピントを合わせました。
すると、同時に緑のペンにもピントが合いました。
これは被写界深度が面であるためです。

被写界深度を点ではなく面で捉えることは、とても大切です。






また、被写界深度は背景処理にも影響します。


【F2.8】被写界深度が浅い
背景の情報はあまり必要なく、それよりも奥行き感や背景ボケの表現を入れたい時は絞りを開くことが有効です。



【F32】被写界深度が深い
背景までピントが合い、背景もしっかり見せたい時には絞りを絞ります。

※近くから遠くまで全てにピントが合った状態をパンフォーカスといいます。


ピントの合う範囲を設定することで、写真のどの部分を見てもらいたいか、自分で決めることができますね。











さらに、『絞り』は細かいことをいうと
解像度にも関わってきます。

一般的に、絞りは開放よりも少し絞ると解像度が高くなります。
理由はレンズの中央部を使うからです。

レンズの周辺部は中央部より光学性能が劣っていて、絞ることで、その劣っている周辺部を通過する光をカットすることができ、優良な中央部のみ使うため解像度が高くなり画質が良くなります。
※同じ原理で周辺減光、口径食の影響も減らすことができます。


しかし、絞れば絞るほど、解像度が高くなるかというとそうではありません。

絞り過ぎると回析という現象が起きてしまい、画質が劣化してしまうので注意が必要です。


「風景撮るならF8」
なんてキーワードがありますが、
なるほど!ですね(^^)











長くなってしまいましたが、それだけ写真表現にとって『絞り』は大事な要素なんですね!

しっかり理解し、『絞り』による写真表現をマスターしましょう(^o^)/


記事作成:ろくまる


「カメ学」は、カメテク運営者が学んだ知識を展開し、記事にしています。
間違った内容等あれば修正しますので、ご一報いただけると幸いです。

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