健康保険制度の不公平な分裂

 

 健康保険の種類は様々あり、主に、被用者保険(公務員や会社員などの雇用者)、国民健康保険(医師、歯科医師、薬剤師、自営業者、農家、無職その他のすべての国民)、および、後期高齢者医療制度があります。

 さらに、被用者保険は、公務員などが共済組合を作り、大企業の労働者が独自に健保組合を作り、これらに入れない中小企業の労働者が協会けんぽを作っています。

 国民健康保険は、医師、歯科医師、薬剤師などが各々国保組合を作り、これに入れない者が国民健保に入ります。75歳以上になると後期高齢者医療制度に加入します。

 ただし、65歳以上74歳未満で一定の障がいがある場合には、本人の申請により後期高齢者医療制度に加入することができます。

 国民はいずれかの健康保険に強制的に入らせられ、強制的に保険料を徴収されます。

 したがって、これは税金としての性格も持っており、もし、払わなければ、資産の差し押さえを受けます。自治体によっては健康保険税と言っているところもあります。

 特筆すべきは、それぞれの団体は結構自由に保険料を決めていて独立採算制であるということです。

 独立採算制であるということは、企業の経営と同じことですから、給付すべき事例と、給付すべき金額に対して、納付する保険料が決まります。

 そうすると、災難は、所得に関係なく、誰にでも平等にやって来て、同じように病気をし、同じような医療費を支払いますから、所得の高い者たちで健康保険組合を作れば、所得の低い者たちの医療費を負担しなくても良くなり、所得が高い割には安い保険料を支払えば済むことになり所得の高い人はもう少し多くの保険料を払って下さいということにはなりません。

 そして、このような健康保険組合がたくさんあります。

 被用者保険の内、公務員や大企業の組合に入れない中小企業の労働者が協会けんぽに入り、国民健康保険の内、医師などの高所得者が作る組合に入れないすべての国民は国民健康保険に入ります。

 そういう風習がいまだに続いているのは、所得の高い者たちが、所得の低い者たちの医療費を負担する事態となるのを嫌がり、所得の低い者たちの保険団体と統合するのを嫌がったということです。

 おどろくべきは、自民党政府が、いまだにこれを許していることです。

 だから、所得の高い者ほど安い料率の保険料を払えば良く、所得の低い者ほど高い料率の保険料を払わなければならなくなっているのです

 所得の低い者たちの話をすると、第一に言えることは、どこの組合保険にも入れない人たちの最後に行き着く先のような、国民健康保険でさえ、当局から黒字となるよう指導され、叱咤されていますから、高所得者ではなく、むしろ、国民健康保険に入っている所得の低い者たち、自分たちの医療費だけでなく、さらに、どうしようもなく貧困で支払えない者たちの分まで支払わされているということになります。

 したがって、国民健康保険に入っている人たちの所得に占める保険料の割合は、他のどの裕福な者たちの保険組合よりも高くなるのです。

 国民健康保険は市町村ごとにあります。そして、保険料を鬼のように取り立て、払わなければ保険証を取り上げてしまう公務員の「厳しい対応」が報道されています。

 東京の国保料の「均等割」は、39歳以下の人で1人=5・1万円です。家族が1人増えるごとに、「5・1万円」「10・2万円」「15・3万円」…と、国保料の負担額が上がっていきます。

 低所得者には一定の減額があるものの、子どもの数が多いほど国保料(税)引き上げられる「均等割」には、「まるで人頭税」「子育て支援に逆行している」という批判の声があがり、全国知事会などの地方団体からも「均等割」見直しの要求が出されているほどです。

 確かに国民皆保険制度が発足した当時は、被用者保険がサラリーマンを対象とした医療保険であるのに対して、国保は主に農林水産業や自営業者が加入する保険であると説明することも出来ました。しかし現在は国保の構成員は半分近くが「無職者」なのです。

 では「無職者」とはどういう人々を指すかというと「働いていない人」や「失業して被用者保険から外れた人(及びその家族)」「年金生活者」などが含まれます。

 国保は構成員の大部分が、収入がもともと少ないかあるいは退職して収入が大幅に減った人々が加入している医療保険ということになるのです。

 また、国保は、年齢も高いことから病院にかかる割合も多く、しかもや心疾患をはじめ高度な治療や長い入院生活を余儀なくされる病気に侵されるリスクが高い者たちの集団です。さらに前述したように、保険料負担能力は被用者保険に比べて格段に弱い人の方が多いのが国保の特色です。

 つまりはそれだけ財政基盤が脆弱ということです。日本の歴代政府の定めた制度では公的保険の財源もまたその運営する保険者ごとで賄っていかねばならないことになっていますから、膨大な医療費支出に対処するために、国保は「収入」つまりは保険料(税)を高く設定し、低所得者や貧困層から過酷な金額を取り立てざるを得なくなっているのです。

 ここまで説明しても、まだ憤らない人など居るでしょうか。

 政府はどこまで国民を馬鹿にし、足蹴にすれば良いのでしょうか。国民は全員このことに憤慨し、政権を倒す運動をしなければならないと決意するはずです。

 このような国保に対しても収支を黒字化させなければならないという価値観は狂気であり、この状況を放置するなどということは、人として間違っています。

 こうした事態に至らしめたのは日本の歴代政府です。歴代政府が財政均衡主義を唱え、国家の通貨発行権を封印し、国家が国民に対する責任において、社会保障そして社会福祉の中心事業として行っている健康保険制度でさえも、保険者(事業者)が赤字であるとか黒字であるとかを問題とする感覚で運営させているのです。

 これは、国民貧困化政策の一環です。国民貧困化政策はデフレを維持するために国民にお金を持たせない政策です。

 国家の運営する国民の加入義務のある皆保険は国民健康保険に一本化し、現在の保険料制度はただちに廃止し、財源(インフレ抑制の手段として)は全額累進所得税に統合し、生まれた時から日本国民であり続ける者たちには医療費は免除されるべきです。

 それが、国家が国民に対して負っている責任としての社会保障制度として本来在り方というべきものです。

 付け加えると、社会福祉は、まさに、国家が通貨発行権をもって行う所得再分配の最も重要な事業です。

 それが独立採算制であるとか、病気になった者本人が負担するとかの発想は、商売そのものなのであり、もはや社会福祉ではありません。

 

 

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