③財政赤字の意味を教えない日本の大学教育

 

 低所得者や貧困層から所得を奪えば、手っ取り早くデフレに出来ます。

 これは低所得者や貧困層の限界消費性向の高さによるものです。低所得者や貧困層の限界消費性向高いので(税金や社会保険料の強制貯蓄の残りを全部生活費に使う)、その保有する貨幣の増減が景気接影響するのです。

 お金を使う量は、「所得×限界消費性向」ですから、お金を税金や社会保険料によって取り上げられれば、使えるお金が減り、労働者はお金を使いたくても使えなくなります。(※注意=お金を使う量は「所得×限界消費性向」参照。ただし、借入金と返済金を考慮すれば、お金を使う量は「[所得+借入金−返済金限界消費性向」

 また、労働者の賃金を圧迫し、投資家(富裕層)の保有する貨幣量を増やせば、投資家(富裕層)は大量の貨幣を貯蓄するので、すなわち、眠る貨幣(ケインズのM2)が増え、それによって景気は悪化します。

 低所得者や貧困層の限界消費性向は、税金、社会保険料、返済金の残りを全部生活費に使うので、税金社会保険料20%、借入金と返済金がプラスマイナス0であれば、生活費は所得の80%で、限界消費性向は0.8というように、制度に対して固定的なものです。低所得者の限界消費性向を政策的に上げようと思えば、税金と社会保険料を安くする以外の方法はありません。

 中産階級と富裕層の限界消費性向は、心理で変化しますが、もちろん、中産階級と富裕層の限界消費性向もまた税制、社会保障制度に影響され、政府が長期的な制度変更または公共投資に対して積極性か消極的かのどちらの姿勢を持っているかに影響を受けます。

 つまり、長期的な体制という将来の期待がなければ、政府が短期的な公共投資を増やしても、景気回復効果はわずかなものになります。

 景気を回復させるためには、限界消費性向が高くなるような、つまり、低所得者の使えるお金が増えるような税制や社会保険料を減額する政策が最も効果的です。

 また、政府が公共投資を行うにしても、財政収支に対する無知を晒し、財政赤字を増やさないようにチビチビと支出したり、いつ止めるかも判らないといった姿勢を見せたりしていては、国民は政府の方針を信用することが出来ませんから、国民の限界消費性向は高くなりません。

 つまり、政府は、マクロ経済に対する理解を示し、したがって当然のこととして財政赤字を容認し、低所得者への減税や消費税廃止はもちろん、その他の公共投資の増加に対しても、積極的な姿勢を持っていることをし、国民に安心感を与えたときに初めて、国民全体の限界消費性向は上がります。

 低所得者と貧困層の立場に立った税制と社会保障制度を備えた社会が存在して、常に、政府が雇用政策として公共投資に対して積極的な姿勢を示すならば、貧困化、景気の低迷に関する問題は無くなります。

 それは、国内消費の拡大によるデマンドプルインフレへの誘導になりますが、まさに、一定程度のデマンドプルインフレになることが理想であり、そうなることを目指して政治が行われなければなりません。

 一般的なインフレは国内消費の拡大によるデマンドプルインフレを指すので、以下、デマンドプルインフレをインフレと呼びます。

 インフレが急激である場合は、物価と賃金の上昇のスピードにズレが生じ、国民生活が苦しくなることがあります。このときは、賃金の上昇のスピードが物価の上昇のスピードに追い付くように、景気を冷まして、物価の上昇のスピードを緩やかにしなければなりません。

 その場合、政府が何もしなくても、所得税と法人税の税収弾性値によって自然に起こる税収の増加、つまり、市場からの貨幣の回収の増加も景気を冷ます役に立ちます。これを自然増収と言います。

 ただし、税収弾性値は所得税と法人税だけに存在し、消費税、固定資産税その他の応益税(外形を課税標準とする税金)には存在しません。

 所得税は累進課税であるがゆえに、法人税は黒字だけにかかるゆえに、税収弾性値が存在します。(所得税や法人税は低所得者または労働者への賃金の支払について、累進課税や控除といった担税力に関する計算が必要となるので、外形課税ではなく、能力課税になります。)

 この税収弾性値を持つ法人税の増税や所得累進課税を強化することは、格差の是正と同時に、税制において景気安定化機能を維持する意思を示すものであると言うことが出来ます。

 デフレで景気が悪くなっているときは、税収弾性値によって税収が自然に減少し財政は赤字になりますが、国民は一息つくことが出来ます。このとき、政府は景気回復の為に財政が赤字になっていたとしても、ますます、減税による財政赤字を拡大しなければなりません。

 デフレの時に、増税などによって、財政収支の黒字化をやろうとすれば、さらに景気は悪化するだけです。

 逆に、インフレになり景気が過熱し、税収弾性値によって税収が増えすぎても、減税してはならず、景気を冷ますためにさらに財市場から貨幣を回収し続け、ますます、財政黒字を拡大しなければなりません。

 このように、景気が冷え込んで企業が債務を縮小しようとしているときには、政府は債務を拡大し(つまり通貨発行量の増加)、逆に、景気が過熱し企業が債務を拡大しようとしているときには、政府は債務を縮小するという、企業の行動とは逆方向の行動を行わなければならないのです。これを合成の誤謬(ごびゅう)と言います。

 このマクロ経済学の基本を理解せず、政策を間違えているのがバブル崩壊以降の日本の歴代自民党政府の財政政策です。

 橋本龍太郎内閣以降の歴代自民党政府は、赤字企業が増加し、企業が債務の縮小を目指している中で、政府もまた財政の健全化を目指し、債務を縮小する政策を行って来ました。

 驚くべきことに、いまだに、債務を縮小する財政均衡政策は現在の自民党政権で継続されています。

 このように歴代政権は経済政策を盛大に間違え、よって、現在、日本は失われた30年になっているのです。

 何度でも言いますが、政府の財政収支赤字が拡大しようが、黒字が拡大しようがどうでも良く、また、政府債務残高についても、2000兆円になろうが、5000兆円になろうがどうでも良いことです。

 あらゆるシミュレーションによっても、政府の財政の悪化によって起こることは、財政破綻(デフォルト)ではなく、物価の上昇(インフレ)しかありません。

 インフレになれば国民は苦労すると言われますが、緩やかなインフレによる苦労は、賃金の上昇が物価上昇に追いつきますから、大したものにはなりません。

 むしろ、完全雇用がほとんど達成され、労働者や労働組合は雇用主と強気の交渉が出来るようになり、毎年、賃金の上昇率が物価の上昇率を上回ることが当然のようになります。

 この時はじめて労働者は豊かさを実感出来ます。

 また、インフレになれば、債務の実質価値が下がり返済が楽になるという希望が生まれます。これは低所得者が不動産を買い入れ、中間層に成り上がるために大変重要なことです。

 債務の返済が楽になるという実感を持つことが出来れば、人は債務を拡大しようとします。その債務を拡大しようという変化こそが景気回復の条件です。

 適度なインフレは低所得者と債務者にとって天祐であり、理想的な状態なのです。

 現在の日本の政治の世界では、財政赤字をいかに解消するかが政策の中心的なテーマとなっているというあきれた状況になっていますが、これは国際的にも常軌を逸しています。

 世界中のあらゆる国の中で、政府の財政収支を問題にしている国は日本しかありません。

 現代の日本の財政の方針においては、財政赤字の時は、通常10年償還の赤字国債(特例国債)の発行というシステムによって補填することになっています。補填の方法は、ダイレクトに政府貨幣を発行するという方法もあるのですが、現在、中央銀行が貨幣発行を担当する制度になっていますから、政府側としては赤字国債によって、金融機関から借入する形式が採用されているのです。

 しかも、わけの解らないことに、その赤字国債は原則禁止されており、特例公債法によって、国会の承認があったとき始めて発行できることになっています。

 それでは、赤字国債の発行が原則禁止されていることがナンセンスなのか、毎年慣例化していることがナンセンスなのかということになりますが、モノが増えているのに、おカネを増やさなければデフレになりますから、経済成長しようとする限りにおいて、赤字国債の発行が原則禁止されていることの方がナンセンスに決まっています。

 政府債務は、実際は債務ではなく、通貨発行量の記録にすぎません。だから、実質GDP(物量)の拡大と共に永遠に拡大され続けるべきものであり、実質GDP(物量)が拡大しているにも関わらず、政府の財政収支が大事だとか言って、貨幣発行量の拡大(政府債務の拡大)を行わないならば、デフレとなり、ナンセンスを通り越して狂気と言うべきでしょう。

 政府は、経済の成長すなわち物量の増大に対して、それに見合う量の通貨を発行しなければデフレになり景気後退しますから、必ず通貨を発行しなければなりません

 このとき、政府は赤字国債の発行という形式で発行すべき通貨を発行しているだけですから、財政赤字がいくら増大しても全く心配する必要はありません。

 返済すべき何者も発生しないのに、それにも関わらず、財政赤字が増えれば困ると言うのは、国民が豊かになったら困るという意味しかありません。そして、今まさに財政均衡派が財政赤字が増えれば困ると言っているのは、国民が豊かになったら困るからです。

 

 

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