②自民党の「地方創生」というペテン

 

 自民党の「地方創生」は、これもまたペテン師の安倍晋三氏によって練り上げられた手品そのものでした。

 自民党の「地方創生」は、政府が金を使わずに、いかに地方を切り捨てるかに精力が注がれていました

 自民党が地方創生を打ち出したのは、2014年5月、増田寛也元総務相が全国約1800の自治体のうちほぼ半数の896自治体が消滅する恐れが高いと警鐘を鳴らした「増田ショック」に起因すると言われていますが、自作自演のようでもあるし、第一、自民党が自ら地方窮乏化政策をやっているから自治体が消滅するのであって、他人事のように「警鐘」を鳴らすのは滑稽です。

 安倍政権は記者会見で地方創生について、『重要なことは地方が自ら考え、行動して変革を起していくことだ。国も予算や人材等あらゆる方策を使って応援する』と発言し、平成27年度補正に3275億円、来年度に1兆3991億円の関連予算を計上しました。

 しかし、そもそも、地方創生などのような国土計画は政権が指導力を発揮して行うもので、地方のやることを応援するというのは、主客が逆転しています。

 そして、地方創生の一環として、平成27年1月14日に、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局の発表した平成27年度予算政府案におけるまち・ひと・しごと創生関連事業の一覧なるものを出して来ました。

 この一覧は180項目に渡ります。しかし、これには著しい迷彩が施されています。というよりも、もはやペテンです。

 この中で、沖縄振興一括交付金(沖縄振興策)1617億円、沖縄教育振興事業等(沖縄振興策)179億円と、総予算の厚生労働省等の社会保障の充実(子ども・子育て支援新制度等)6766億円の予算の巨大さが目を引きます。

 確かに沖縄は地方に位置していますし、地方にも子ども・子育ての問題はありますが、これらは、それぞれ独自の目的が有るのであり、地方創生の予算に入れるべきではありません。

 あとのテーマについても、ことごとく、日本国に普遍的な問題としての後継者問題やエネルギー問題や環境問題など必ずしも地方創生と絡めなくても良さそうなものばかりです。

 東京への投資さえも、地方への投資に含まれているのですから、開いた口が塞がりません。

 この全体像からは、地方をどうしたいのかが分かりません。

 ましてや、地方に人口を還流させようという意思はまったく感じられません。

 なんでもかんでも地方創生という名のバケツに放り込んだだけにすぎません。

 安倍総理の地方への関心の低さに対して、大都市にはもっと巨大な投資計画がいくつもあります。例えば、オリンピックであり、東海道を走るリニアモーターカーであり、予算の4分の1近くを占める首都圏の公共投資です。これらがすべて東京か東京関連で行われます。こういうものに勝てる地方の公共投資は到底存在しません。

 しかし、これでどうして、地方に人口を呼び込んでいけるのでしょうか。どう見ても、地方創生計画ではなく、大都市創生政策としか思えません。

 大都市になるほど、公共投資の投資対効果が高いと言っている経済学者もいるようですが、これらの経済学者には、大都市への公共投資の一極集中がもたらす、人口移動や災害による地方住民の外部不利益は眼中に無いのでしょうか。

 むしろ、自民党政権の「地方創生」では、実質的に、大都市以外の辺境地域に対しては手厳しい対応をしています。

 冒頭の安倍晋三氏の発言である『重要なことは地方が自ら考え、行動して変革を起していくことだ。』というのもおかしな話です。そもそも地方に『自ら考え、変革を起こす』ような自由は与えられていません。

 自民党の「地方創生」では、自治体が地域再生計画を策定し、それを政府が認定すれば、日本政策投資銀行から低利の融資を受けられるようにすると言っています。

 地域再生計画とは、例えば、官公受注において地方のベンチャー企業を優遇すること、地域特産品の販路開拓などに対して政府支援を強化することなどを掲げていますが、これらのものが、特殊な場合しか意味を成さないことは周知のことです。

 日本全国に及ぶ普遍的な地方の活性化にはほとんど役に立たないものばかりです。

 あらゆる権限は、中央政府すなわち通貨発行権と一体でなければ機能しないのですが、ところが、むしろ、自民党政権は、通貨発行権の行使どころか、地方の住民に対しては固定資産税や三位一体改革による課税強化によって、住民からこれでもかと貨幣を回収し、枯れ果てた川の中で、上手に泳いで見せろと言っているのです

 私が幾度も強調しているように、地方税の固定資産税は都市部に比べて所得がなかなか上がらないので。所得に対する負担割合が大きくなっています。

 すなわち、建物固定資産税の課税標準は再建築価格であるために、東京であろうと、地方の田舎町であろうと課税標準額は変わらず、東京と地方の田舎町とで同等の建物には同額の固定資産税額がかかっているのです。

 その結果、地方の田舎になるほど、土地建物を合わせた不動産所得に占める税負担は重くなっており、したがって地方の地価は下がり続け、ゆえに地方の住民は担保を失い、金融機関による融資が減り、資金調達が困難となり、地方の中小企業は衰退の一途をたどっていす。

 また、三位一体改革によって、所得累進課税は緩められ、フラット税の地方税が増税されたことで、これによっても、地方住民の負担はより一層増えています。

 これに対して、政府支出の内、地方に対する支出である公共投資は、人口比で均等に割り振られるために、田舎に行くほど公共投資は少なくなっています。

 つまり、田舎に行くほど、所得に対する相対的な税負担は増大し、公共投資の支出は減少しているのです。

 また、公共事業の地方分担金の存在がこれに拍車をかけています。

 最近、台風被害や大雨被害が大きくなって来ていますが、防災のインフラの脆弱さが露呈しています。例えば、以前はダムの建設や堤防の護岸工事がしょっちゅう行われていましたが、最近ではほとんど見かけなくなりました。

 ダムや堤防は台風被害や大雨被害に対して絶大な効果がありますが、それらは財政を赤字にするとか、利権にまみれているとかの理由で、計画そのものが行われなくなっているのです。

 現在の日本では一級河川でさえ、堤防整備率は60%にすぎません。今、テレビで見ている大雨による堤防決壊などは先進国の有様ではありません。

 人口の一極集中を是正するためには、人口の分布に逆らって公共投資が割り振られなければならないのに、自民党政権では、これとは逆に、人口の東京一極集中を後押しするかのように公共投資を東京や大都市に集中させています。

 地方への公共投資が減り、または、地方からの税金の回収が多ければ地方は衰退します。

 また、地方への公共投資が増え、地方への投資が多ければ地方は繁栄します。この極めて単純な法則から目を背けるような地方創生計画は全てニセモノです。

 ところが、驚くべきことに、自民党政権は、地方から出される税負担の軽減、地方交付税の増加の要望に対して、地方の自主性や自立性の問題を持ち出して、古い中央依存型への逆行だなどと叫んでいます。

 そして、地方が競争力を失って来たのは、地方自身が中央依存体質から脱却せず、地域間競争に打ち勝つ努力をしなかったからだなどと言っています。

 しかし、むしろ、故意に地方に重い税負担を押し付け、地方を貧困化させて来たのは自民党自身なのです。

 

 

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