③一つの企業とマクロ経済の関連付け

 

 Uは外部へ支払ったものを、Fは内部へ支払ったものを、したがって、生産要素は自社の労働者を、要素費用は賃金を指しています。

 いままでの説明では、「Y=A‐U=F+R」などを自明のこととして、設備や商品の一つ一つに労働の価値や利益が内蔵されているものとして説明していましたが、今度は、賃金が投入された後の話ではなく、賃金が投入されるところに遡って生産活動を見て行きます。

 ケインズは次のように言っています。

 『ある事業者が、他の生産要素に対してそのサービスの対価として支払う金額は、その生産要素側から見れば自分たちの所得になりますが、これをAの要素費用と呼びましょう。要素費用Fと利用者費用Uの合計を、産出Aの原価と呼ぶことにします。』(山形浩生氏訳)

 そこで、売上Aの原価をI0、利用者費用をU、賃金をF、利益をRと置くと、(ただし、原価をI0と置くのは当ブログ発案です。原価投資I0の定義は、GDP統計における投資の定義と異なります。投資は、原価投資I0における利用者費用の中に含まれ、その内の資本設備の増減を表すものになります。

I0=F+U・・・・・・・・・・・・・・・

A=I0+R

よって、

Y=A‐U=(I0+R)‐(I0‐F)

よって、

Y=F+R

 賃金Fは、労働の対価として労働者に支払われるものです。役員も労働しているとみなされ、役員報酬も含みます。

 利益Rは、買主からの無償の所得移転であり、同様に無償の所得移転であ利子・地代の支払、株主への配当、内部留保金に分配されます。内部留保金は株価の一部となり、結局は株主

 I0は、労働者の労働によって一旦すべてが資本設備(生産設備、仕掛品、在庫品)の一部となります。

 それのものになります。

 原価投資I0は、まず、販売を開始していない段階において、仕入A1を行い、既存の設備や在庫品からA2を取り崩し(このときA1、A2は共にプラス)、賃金Fを支払って、当期の生産を行うことを言います。A2のプラスは在庫品の拠出を意味します。

ゆえに、

I0=F+U=F+A1+A2・・・・・・・

から販売が行われ、販売されたものに対しては利益Rが生まれます。(利益の定義は、搾取の定義と同じで、他人の所得に対して、等価交換を上回る分を無償で手に入れることです。)

 すると、

A=I0+R=F+U+R・・・・・・・・・・・・

 U=A1+A2だから、

A=F+R+A1+A2・・・・・・・・・・・・・

 ただし、企業が社内の労働者に支払った賃金や、中間財や水道光熱費その他の支出、既存の設備から摩耗したものなどが、販売した商品の方に含まれているのか、社内に残留している設備や在庫品の方に含まれているのかを峻別することは不可能であるし、また、それを知ったところで意味がありませんので、それぞれの記号の意味合いによって、イメージして行くしかないものと思われます。

 そうした意味で、当期の仕入A1は、一旦は、既存の設備や在庫品となり、販売活動を開始し、当期の売上Aが発生した時点で、売上の一部になったものがUであり、今期、売上が大きくなり、したがってUも大きくなり、企業内から拠出された在庫品A2プラスになったときに、UがA1を上回ったということであり、企業内の在庫などの資本設備が減少したということです。(その代わりに、それだけ売上Aは増えていて、利益も増えています。)

 A2がマイナスになるということは(それはIがプラスになるということですが)、それは仕入れを積極的に行ったということです。A1のうち、売上の一部にならなかったものが存在し、資本設備(在庫品など)はその分むしろ増え、それがA2のマイナスで表示されす。

 I=‐A2ですから、A2をマイナスにするとは、在庫品を増やすということです。

 すなわち、投資Iが増えれば増えるほど、A2のマイナスは大きくなり、企業内の資本設備や在庫は大きくなります。

 投資とはすなわち企業内の(在庫などの)残留資本設備への投資です。

 そして、商品の販売が行われることでA2のマイナスは小さくなって行きます。(在庫などの)残留資本設備は売上に転換されて行きます。在庫品が足りなくなれば、A2がプラスになって行きます。

 そして、A2がプラスになれば、AおよびRが増え、資金は増えて行くものの、そのままにしておけば、生産力が減りますから、企業は次の儲けを狙って、A2をマイナスにするように投資Iを増やすのです。

 GDP統計では、投資Iは必ずプラス(A2はマイナス)になっていますが、それは、売上Aが大きくなれば、企業は投資Iを増やし、A2をマイナスにし、(生産設備や在庫などの)残留資本設備を大きくして行くからです。そうしなければ、企業は大きくなりません。

 一つの企業において売上Aが大きくなるということは、マクロ経済においては「A‐A1=C」であり、つまり、「A=C+A1」ですが、消費Cが増大しないのに、企業が仕入A1を増大させることはあり得ませんから、Aが増大しているということは、消費Cが増大しているということです。

 そして、消費Cが増大するから企業が仕入A1を増大させ、事業を拡大するために在庫などの残留資本設備を増大させなければならないので、I(‐A2)を増大させるのです。

 したがって、「Y=C+I」においては、Cに対してIは独立して存在し得ず、Cに対してIは従属的にしか変化しません。これがケイン経済学の趣旨です。

 まとめると次のとおりです。反復となるのは了承下さい。

 I0は販売を開始する前の投資の原資であり、「A=I0+R」は販売が終了し、利益が発生した後の、結果としての利益を含むところの売上Aがマクロにおける原資のすべてを表します。

 一つの企業が投資を開始し、利益が生まれる前は、

I0=F+A1+A2

 利益が発生して、

I0+R=F+A1+A2+R

 「I0+R=Aとすると、

A=F+A1+A2+R

Y=F+R=A‐(A1+A2)=A‐U

 「Y=C+I」ですから、そこで、

C=A‐A1

と置けば、

I=‐A2=A1‐U

 これはマクロ経済と一致します。つまり、原価という視点の導入によって、一つの企業とマクロ経済の関連付け、および、賃金が原価投資の一部であることが説明出来ました

 Aはマクロ経済の総売上ですが、すなわち、企業の原価投資と利益の合計です。そして、すべての企業のその年度の結果の経済統計における場合の、あるいは利益を予想して算入する場合の、投資の原資の合計です。

 一つの企業の仕入費が他の企業の売上となり、どちらも投資の原資となり、Aの一部に重複してカウントされています。

 Y(総所得または総付加価値)は、Aから重複されてカウントされてい利用者費用U(A1+A2)を差し引いたものを意味します。

 

 

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