⑥仮想通貨を規制すべき理由

 

 商品券であろうと何であろうと、継続して自分の商品と交換しても良いという商店が存在すれば、それを貨幣として通用させることが可能です。

 もし、法定通貨との交換が禁止されていたとしても、一旦、商品と交換し、それを法定通貨で売れば良いのですから、基本的に商品と交換してくれる商店さえ存在すれば、この世に存在するあらゆる物は、たとえそれが貝殻であろうと、貨幣とすることが可能です。

 もともと、貨幣の信用とは商品と交換出来るということにすぎませんから、誰かが何らかの仮想通貨を作り、たとえ一社でも仮想通貨と商品を交換し続けると宣言すれば、その仮想通貨を貨幣として通用させることが出来ます。

 例えば、トヨタ自動車がある車種とビットコインの交換比率を決めて、商品をビットコインで売ると宣言すれば、ビットコインは安定した価値を持つ貨幣になります。

 なぜなら、他の誰も商品と交換してくれなくても、まず、トヨタ自動車で自動車を買い、その自動車と目的の商品と交換するシステムを作れば良いからです。

 トヨタ自動車だけでなく、複数の会社が複数の商品と交換するようになれば、仮想通貨の貨幣としての地位はもっと安定したものになります。

 税金も複数の商品一つにすぎません。仮想通貨で税金が払えれば、仮想通貨の貨幣としての地位の向上に寄与しますが、地位の向上に寄与するだけのことであって、絶対に必要なことではありません。

 世界の「富裕者連合」で各国の法定通貨に代えて世界中で通用する「国際仮想通貨」を発行すれば、各国の通貨発行権の一部を奪うことが出来ます。

 グローバリズムが極端に進んで、各国政府が国際投資家の都合の良いように法律の改変を繰り返して、多国籍企業が世界を支配するようになると、あり得ないことではありません。

 仮想通貨と言いながら、貨幣と同じ機能がありますから、これは事実上においても貨幣になります。

 また、課税や政府決済が法定通貨である限り、仮想通貨が本流になることはないと言う者がいますが、納税するときだけ法定通貨と交換すれば良いのですから、課税や政府決済の基準が法定通貨であるということは、仮想通貨を貨幣として成立させないための十分条件どころか必要条件でさえありません。すなわち、因果関係としては全く無関係です。

 おそらく、そのときは、むしろ、意志薄弱な政府が「富裕者連合」に擦り寄って、その利便性に便乗するという理由付けで、仮想通貨による納税すら認めるようになるでしょう。そうすると、日本も事実上ギリシャと同じような通貨発行権を持たない国になります。つまり、いくら円を発行しても、国民はそれを受け取ることに難色を示すようになるのです。

 「富裕者連合」による仮想通貨と、法定通貨による納税の分離は可能です。ただし、その場合は、政府支出の財源は通貨発行権ではなく、完全に、税金および他人からの負債ということになります。なぜなら、誰も法定通貨を欲しがらなくなるので、法定通貨建て国債の価格は暴落するか、売れなくなり、仮想通貨建て債務にせざるを得なくなるからです。

 そうすると、今まで、政府が通貨発行権を独占し、財政政策や金融政策を自由に行っていたものが、政府だけでは財政政策や金融政策を行えなくなるという恐るべきことが起こります。

 例えば、政府が物価を上げようとして円通貨で財政支出を行っても、円通貨の仮想通貨に対する交換比率が下がるだけで、仮想通貨を基準とした物価は変わらないのですから、財政支出による景気回復効果はほとんど無くなります。

 金融政策においても同様です。金融緩和を行ったとしても、円通貨と仮想通貨との交換比率が変わるだけで、金融緩和の効果が無くなります。

 これらのシミュレーションは、日本政府が通貨発行権を持たずに、例えば、ギリシャのように国内にユーロが流通している状態で、円通貨による財政政策や金融政策をやろうとした場合にどうなるかを考えれば判ります。

 財政政策や金融政策を行っても、円の価値が下がるだけですから、円の保有は忌み嫌われるだけになるでしょう。

 今はまだ、仮想通貨は一部のブームにすぎませんから、そのため、今はまだ、円通貨に対する乱高下が激しい資産の一つにすぎませんが、仮想通貨が一般的な通貨として流通し始めれば、円通貨と仮想通貨の立場は逆転する可能性があります。

 各国の意志薄弱な政府が十分弱体化し、良い頃合になると、ある日突然、世界の「富裕者連合」が「国際仮想通貨」を発行するかも知れません。そして、「国際仮想通貨」によってグローバル経済は安定するかも知れません。そうすると、もう、アウトです。経済の主導権は国民の手から離れます。

 今、かすかに残っている「政府は通貨発行権をもって所得再分配政策や景気回復政策を行うべきだ」という主張も消し飛んでしまいます。

 ビットコインは、政府に通貨発行権を放棄させるための一つの実験でしよう。

 どういう実験かと言うと、通用するかどうかの実験ではありません。貨幣の意味を考えれば、通用することは初めから判っています。

 これは、どの国の政府の脇が甘いのか、どの国の政府が規制する方向に動くのかの出方を見るという実験なのです。

 弱者に冷淡な日本政府は、国民を守る意思が薄弱ですから、むしろ、国際投資家のために一刻も早く国家を消滅させたいのか、早々にビットコイン取引を認めてしまいました。

 日本の民間銀行も政府の認定を受けてビットコイン決済を受け入れる方向です。

 日本の自民党政権は世界で唯一緊縮財政を続けるだけでは飽き足らず、ビットコインに協力することで、自らの通貨発行権を放棄しようとさえしているのです。

 それを実行しようとしている勢力は、おそらく、強力な軍事大国の中国の前で武装解除して丸腰になれと言っている連中と同じでしょう。すなわち、自民党の主流派の新自由主義者、民主党のマルクス主義者、共産党などです。

 CoinChoisというウェブサイト2017年10月4日版『竹中平蔵に聞く、国や銀行にとっての仮想通貨』で、竹中平蔵氏は編者の質問に答えて、こう言っています。

竹中:仮想通貨の取引所に投資している銀行もありますが、ある意味これは銀行の自己否定になるのではないでしょうか。・・・例えば送金手数料が100円から10円になったというと、利用者にとって安くなったのは90円だけです。でも、ほとんど全員に行き渡るものなので社会全体として物凄く大きな利益があるはず。一方で、銀行業界が失う利益は深いんですよね。この人たちは徹底的に反論します。例えば話題になっている加計学園の問題や、過去の郵政民営化だって、既得権益を失う人たちは少数でも失うものが大きいので、徹底的に抵抗してきました。改革をする方はほとんど応援団がいませんが、実はこれ全てに通じていると思います。

 竹中平蔵氏は、ビットコインは国民全体として物凄く大きな利益があり、国や銀行は既得権益を守ろうとして抵抗しているだけだと言い、貨幣に関する国や銀行のコントロールを解体したがっています。

 こういう竹中平蔵氏のような者がかつて小泉純一郎内閣で、現実に日本の国の制度を投資家の都合の良いように、自由自在に作り変えて来たのです。

 そして、現在も、竹中平蔵氏の影響の色濃い自民党政権の下で、公的機関におけるビットコイン決済が受け入れられようとしています。

 しかし、断言しますが、「国家主権」以外に国民を救う者は存在しません。国民国家となってから後は、「国家主権」は「国民」がその力を行使するための唯一の手段です。私たちは、そのことを、もう一度思い出さなければなりません。

 国家主権の最も重要な柱である通貨発行権を犯すような貨幣制度の導入は、国家が国民を国際投資家に売り渡す売国政策そのものです。

 このままでは、日本国民は竹中平蔵氏をはじめとする国際投資家のカモにされるだけです。

 ドイツや中国などではビットコインを規制しようとする動きがありますが、これこそが国民を守るための正常な行動です。

 政府は、国家主権をもって、自国内に外貨を流通させないために、ありとあらゆる障壁を設けるだけでなく、売買や交換について有無を言わさぬ禁止措置を行うことが出来ます。また、そうすべきです。

 

 

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