①ハイパーインフレはむしろ国民を幸福にする

 

 ハイパーインフレは、南北戦争後のアメリカ、第一次大戦後のドイツ、オーストリア、ハンガリー、ポーランド、近年では、アルゼンチン、ブラジル、ロシアなどの例があります。

 いずれの場合も、生産物が不足しているにも関わらず大量の貨幣の発行が行われたことが原因となっています。

 ハイパーインフレと言えるほどのインフレが起こるケースは、戦争や災害によって国内生産力が損なわれたり、または、アルゼンチンの例などのように外貨建て債務がデフォルトして輸入が止まったりして、いずれにせよ、極端なモノ不足が発生した場合などに限られ、それ以外に例はありません。

 モノが無くなるので、通貨がモノを分配する意味を持たなくなるという現象がハイパーインフレです。

 したがって、ハイパーインフレは、生産力の強大な先進国では有り得ない現象です。

 特に、日本は強大な生産力が存在するのですから、貨幣をいくら発行したところで、決してハイパーインフレは起こらず、せいぜいインフレが起こるだけです。

 ハイパーインフレの沈静化について、第一次大戦後のドイツにおけるレンテンマルクの奇跡と言われているものは、不動産や工業機械を担保とするレンテン債権と交換できるレンテンマルクを第二の通貨とすることで達成されました。

 これは、つまり、大量に供給された貨幣に代わって、少量に制限された貨幣を流通させ最終的に何か価値のあるものと交換可能であるという、貨幣としての安心感を持たせたということです通貨として通用させるためには、何らかの安心感を持たせれば良いわけで、そこに絶対的な規則というものはありません。

 ちなみに、この経験が何を教えているかと言うと、それは、価値あるものと交換されるという信頼があれば、どんなものでも貨幣の役割を果たし得るということです。例えば、仮想通貨でも、その仮想通貨と商品を交換する商店が一つでも存在すれば貨幣として流通します。

 なぜなら、仮想通貨で価値ある商品を手に入れれば、他の価値ある商品と交換できるからです。もちろん、仮想通貨と商品を交換する商店が多ければ多いほど、商品の再調達の手間が省けるので貨幣としての信頼感は高まります。

 ドイツのハイパーインフレで注目すべきは、それまでの通貨のマルクはすべてレンテンマルクに切り替えられ消滅したのですが、不動産、工業機械、住宅などの資産は、債務者の手から無くなっていないということです。

 戦争で生産力が破壊され、ハイパーインフレが起ったのですが、ハイパーインフレによって残っていた生産力まで破壊されたわけではありません。

 現代の日本で、戦争や災害で生産力が破壊されるのではなく、貨幣の出しすぎなど政策的な理由でハイパーインフレが起こるとすれば、現在自分の持っている資産も天文学的に高くなるのですから債権者も紙屑同然に価値が下がった債権では到底買えるはずはないし、他に誰も買い取ることが出来ずに、生産者の手に生産力がまるまる温存された状態でのハイパーインフレになります。

 しかも、新たにどうしても導入しなければならない生産技術はありません。日本は国民生活に必要な生産技術を全て持っていますから、それを使い続ければ良いだけです。

 日本では、そうした生産力が十分過ぎるほど温存された状態で、貨幣価値がなくなるだけですから、政府や国民が貨幣に頼らないで生産物を物々交換の方法で分配すれば、ハイパーインフレはすぐに解決されます。むしろ、問題は、政府にそのような意思や理解力があるかどうかです。

 当該部署の業務担当者において、食料などの生活物資を配給する体制を築けば、国民への生活支援も容易に出来ます。

 社会保障を始めとする住民サービス、あらゆるインフラの保持も、国民の生産力を供給源としていますから、政府が裁量権を発揮して分配を行えば、国民への生活支援、住民サービス、インフラがストップしてしまうようなことはり得ません。

 経済学者のほとんどは、国内生産力の巨大さを無視して、ハイパーインフレによって国家が外部から物資を調達できなくなり国民は餓死するかのように言っています、日本国内には豊富な農産物と工業製品を生み出す生産力があるので、物々交換で物資を海外から調達することが出来、例え貨幣価値がなくなっても、悲惨な状況を想像する必要はありません。

 国内においても、貨幣が消滅すれば、政府が物資をあるところからないところへ配給すれば良いだけです。国家権力はそのためにあります。

 人類史上において、戦争や飢饉による餓死者の例はあっても、ハイパーインフレによって餓死者が出た例はありません。

 ハイパーインフレの分析では、いつも、国民の生命は安全であることが見過ごしにされています。

 そして、ハイパーインフレの沈静後は、ある程度の生産力を持っている国は、それらの生産力は傷付いていないので、どの国も飛躍的な経済発展を遂げています。

 なぜなら、ハイパーインフレでは、現金や預金が紙切れになると同時に債務の帳消しが起こるだけだからです。これは、現代における徳政令(債務帳消し)そのものです。

 借金のことが頭から離れなかった債務者は、ハイパーインフレの沈静後は、借金から解放され、新たな気持ちで生産に専念することが出来ます。

 国民が最低限の生活に甘んじて、政府が貨幣政策を立て直す期間(それは大概、一、二年ですが)辛抱していれば、人材も住宅も工場も農地も、そのまま、国民の手の中に残っているのですから、すぐにまともな経済が帰って来ます。そして、それ以外何の苦難もありません。これは、世界中で起こってきたハイパーインフレの実例が証明しています。

 ハイパーインフレを何だと思っているか知りませんが、これはパンデミックでもなければホロコーストでもありません。

 むしろ、ハイパーインフレは現代に許された究極の徳政令(債務帳消し)であり、債務者にとって、天からの贈り物です。

 ハイパーインフレの災厄は、全て富裕層と呼ばれる債権者や投資家たちに降りかかって来ます。

 富裕層にとって、ハイパーインフレはそれまで築いて来た預金と債券の価値のすべてを水の泡にします。

 しかし、富裕層にとっても不動産、工業機械、住宅などの膨大な資産は手元に残るのですから、預金と債券の価値がなくなるくらいは、その後頑張れば何でもないはずです。

 高々、富裕層の預金や債券を守ってやるために、国民はハイパーインフレどころかインフレの心配までしてやらなければならないとは思われません。

 ハイパーインフレが起こっても、貧乏人、破産者、年金受給者、生活保護受給者は困りません。なぜなら、生活の必需品や食料はほとんど現物支給に近い形が採用され、大災害のときと同様に、平常時の今以上に手厚い補助が行われるからです。

 貧乏人、破産者、年金受給者、生活保護受給者はむしろ、ハイパーインフレの只中の方が今より良い生活を送れるかも知れません。

 つまり、ハイパーインフレを怖がっているのは、現金と預金を溜め込んでいる投資家と、他人にお金を貸し付けている債権者だけなのです。

 逆に、債務者は、何億の債務があろうと全て帳消しになるのですから、まったく恐れる必要はありません。

 今の日本には、返済できないほどの債務を背負い、死ぬほどつらい思いをしている債務者が大勢います。いつかは差し押さえを受け、自宅を含めて資産の全てを失う運命にあります。そのとき、一家心中するかホームレスとなるかを選択しなければなりません。

 しかし、こうした境遇の者たちは、ハイパーインフレが起こったときに、わずか一年ほど、少しばかりの不便になんとか耐えていけば、家も土地も売らずに済み、借金から解放されるのです。中小企業経営者でも、現金や預金以外の資産は守られます。

 ドイツの例でも不動産や機械は守られました。だから、それを担保にしてレンテンマルクという新貨幣が作られたのです。

 普通の国民は、いくら債務を抱えていようと、債務が毎日何分の一、何十分の一になるのですから、不動産や機械を債務のカタに取られることはありません。もちろん、外国人に取られることもありません。

 ちなみに、インフレやハイパーインフレになると、資産価値が上がり、結局、富裕層が得をするという者がいますが、資産価値は物価に合わせてスライドして行くだけで、得をするということはありません。反面、預金や債券はゼロになるので、富裕層が損をすることだけは確実です。

 また、インフレ税によって、国民から政府へ実質所得が移転するという者もいますが、債権者から債務者へ実質所得が移転するのであり、政府も形式的には債務者ですから、あたかもその恩恵の如きものは受けるように見えるものの、実際は債務ではありませんから、どうでも良いことにすぎません。

 そして、また、インフレで国民から政府へ実質所得が移転するときは、富裕層から政府に実質所得が移転するだけで

 その者が、グループ分けをせずに、漠然とさせて国民から政府へ実質所得が移転するなどと言っているのは、インフレに悪いイメージを付けるためのプロパガンダにすぎません。

 ハイパーインフレが起こっている間でも、政府は、どんな手段を使ってでも飢え死にを出さないよう、必ず物資の分配を行います。また、それが政府の役割です。

 第一次大戦後当時のドイツでもそうしたのです。ましてや、現代の日本には世界に冠たる生産力が存在するのですから、その気になれば、容易に物資の生産が出来るし、外国との資源の交易も望む通りのものが出来ます。

 ところが、日本政府はあたかもハイパーインフレが来ると、行政サービスがストップし、国民の多数が飢えるかのようにプロパガンダしています。

 これは、日本にはハイパーインフレを乗り越える意思や理解力のある政治家はいないと言っているようなものです。政治家が自分の知能が足りないと宣伝するとは、どういうつもりでしょうか。恥ずかしくないのでしょうか。

 債務者にとってハイパーインフレが恐れるべきものではないからには、一般国民はほとんど債務者ですから、一般国民にとってハイパーインフレは恐れるべきものではないということになります。

 財政破綻とはハイパーインフレのことですから、これはすなわち、富裕層を除くならば、その他の大勢の一般国民はまったく財政破綻を恐れる必要はないということでもあります。

 むしろ、生活苦をしばらく我慢すれば、資産を失うこともなく、借金が全て無くなるのですから、債務者にとって政府の財政破綻は望むべきものです。早く起こって欲しいものです。

 しかし、残念ながら、日本ではハイパーインフレは起こりません。この「債務者の夢」は決して叶えられません。

 生産力の強大な日本では、どんなに貨幣を印刷しても、ハイパーインフレにはなりません。100兆円や200兆円をヘリコプターでばら撒いたところで、せいぜい物価が5パーセント上がるくらいが関の山でしょう。または、政府債務1000兆円を増加し、国民ひとりひとりに1000万円ずつ配ったところで、物価が2倍になるどころか、50パーセント上がるかどうかも怪しいと思われます。

 なぜなら、インフレが経済成長をもたらし、名目GDPと共に実質GDPも上昇し、瞬時に、物価は物量の増大に吸収されからです。

 物価は、貨幣量を物量で割ったものですから、分母の物量を生み出す生産力が日本ほど巨大であれば、ハイパーインフレなどは起こそうにも起こしようがないのです。

 

 

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