法人税と消費税で逆の懲罰効果が存在する

 

 法人税は株主の利益を懲罰し、消費税(実体は付加価値税)は労働者の賃金を懲罰します。これによって、法人税強化はインフレと好景気をもたらし、消費税強化はデフレと不景気をもたらします。

 ケインズは、富裕層の保有貨幣(M)が増大すると不景気になり、低所得者や貧困層の保有貨幣(M1)が増大すると限界消費性向が上がり好景気になると言っています。

 法人税には企業の純利益に対する懲罰効果があります。その懲罰効果で、企業に純利益を縮小しようとする力が働きます。

 純利益を縮小するときは、売上を縮小しようとすることはあり得ず、経費を拡大しようとします。

 かつての日本の企業は、短期的な利益を出して高額の税金を払うくらいなら、中長期的な成長のための設備投資や人材育成のために支出したほうが得策であると考えていました。その結果、中長期的な未来を見据えた、したがって重厚な投資が普通に行われていました。

 日本の技術は、日本人の職人気質が生み出したものに違いありませんが、職人気質を存分に発揮できたのは、短期的な成果主義が抑制され、職人が人として安心して生活出来る雇用と税制において、結果として職人を手厚く待遇する環境があったからです。

 その環境の最も大きな部分を占めるものが税制であり、純利益に対する法人税の高さ、富裕層に対する累進所得税の高さです。

 逆に、法人税が減税されれば、中長期的な整備投資や人材育成に力を入れるメリットがなくなり、むしろ短期で利益を出すために、人件費を削り、株主配当を増やそうとします。

 税にこのような、人間の行動を決定する効果があることは経済学の常識です。

 税金が、人間の行動を一定のあるべき方向に誘導する力を称して、税金の懲罰効果と言います。

 日本経済の絶頂期1989年(平成元年)の竹下登内閣で、消費税(国税3.0%)が導入されました。

 日本経済の絶頂期に日本経済を死地に追いやる税金の第一弾が導入されたのは、日本経済の絶頂というものが、誰かに仕組まれたものであることを示しています。(日本経済を死地に追いやる税金の第二弾は固定資産税増税です。)

 消費税は次のように日本経済を死地に至らしめました。

 消費税が創設されたということは、時の政府が付加価値の中でも賃金を懲罰する意思を持ったということであり、つまり、時の政府が、付加価値の分配について、どの部分を削減するかを、企業に任せようとしたということです。つまり、政府は卑怯極まりないことに、自らは手を汚さず、経営者に賃金を削らせ、削らせた分を消費税として税務署に差し出させようとしたということです。

 「付加価値=賃金+利益」であり、付加価値に消費税を課税するということは、消費税を、賃金か利益かのどちらかから削って出さなければなりませんが、それを企業に決めさせるのですから、当然ながら、企業は株主に所有されていますから、株主配当ではなく、賃金を削減します。

 課税当局は課税の専門家であり、付加価値に課税するからには、株主あるいは経営当事者がどのような行動を採るか熟知した上での消費税(付加価値税)の創設でした。

 納税義務者の企業にとって、消費税の実体は付加価値であり、「賃金+利益」に直接税として課税される外形標準課税ですから、賃金を増やせば増やすほど企業が支払わなければならない消費税額が増えます。よって、株主は、雇用を抑制し、賃金を削減するようになります。

 消費税が創設される前までは、付加価値が「賃金+利益」「賃金+地代+利払い+純利益」に分配されていたものが、消費税が創設された後では、GDPが消費税分増えなければ価格転嫁は不可能ですから、結局、価格転嫁は出来ずに、同じ粗利で「賃金+地代+利払い+純利益+消費税」に分配しなければならなくなりました。

 すると、株主は、地代、利払い、消費税は削れませんから、「純利益」を守るために「賃金」を削ったのです。よって、日本国民の名目賃金は下がったのです

 リストラは大概が純利益を守るために行われます。

 法人税の強化においては賃金を上げる力が働き消費税の強化においては賃金を下げる力が働きます。

 これが、法人税と消費税で逆の懲罰効果が存在するという意味です。

 賃金が上がらない限り、限界消費性向は上がりません。限界消費性向が上がらなければ、景気は良くなりませんから、消費税は景気に悪い影響を与えます。

 消費税の、消費者に課税されるという間接税方式は、付加価値税の変形と言われていますが、変形などされていません。

 実体も形式もストレートな企業にかかる直接税の付加価値税のままであり、付加価値税を消費税と言い換え、納税者を納税義務者と言い換えただけにすぎません。

 消費税の問題の本質は、消費税は付加価値税であり、本当の納税義務者が企業であることから、企業側から見れば、賃金を増やせば消費税も増えるという、賃金のアップにマイナスのインセンティブが与えられる課税であるということにあります。

 消費税で、どれほどの賃金が削られているかというと、地代と利払いは削れませんし、株主は法人税を下げられたことから、もはや利益を下げる理由はありませんから、賃金だけを削ろうとするので、「賃金+地代+利払い+純利益」にかかる消費税は、すべて賃金を削ることで調達されます。

 年間の消費税収が20兆円であるとすると、年間に削られる賃金は20兆円であるということになります。

 消費税は消費者に負担させることで消費を阻害すると言われているのですが、消費税の本質は消費の阻害に存在するのではありません。

 消費税の価格転嫁は実質的に強制することは出来、消費者はいくらでも安いものを選ぶことが出来ますから、むしろ、消費税に消費を懲罰する効果はありません。

 これは、自民党の仕組んだ論点のすり替えで、消費の方に目を向かせ、消費にそれほどのダメージはないと判断させ、消費税を受け入れさせようとするレトリックです。

 1997年に橋本内閣が消費税を増税した翌年から耐久財の消費が減ったという統計がありますが、価格転嫁されたとして、200万円の自動車が210万円になったからといって買わなくなることはないでしよう。最初はショックでしようが、時間が経てばそのショックも和らぎます。

 耐久消費財の消費が減るのは、付加価値税によって労働者の賃金が下げられることによって買えなくなるからです。

 すなわち、耐久消費財の売上が下がったのは、労働者の賃金が下がったからです。

 現代の若者は自動車の所持や結婚に関心を持っていないと言われますが、自動車を買いたくても、また、結婚して子供を作りたくても、所得が下がっているために、心理学でいう補償や合理化によって欲求が押さえられているにすぎません。

 お金があれば、やはり自動車を買いたいし、結婚もしたいのです。

 そのような若者の本当の気持も解らずに、政治家やマスコミが、現代の若者は草食性だの、宇宙人だなどと、とぼけたことを言っていることには腹が立ちます。

 

 

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