③BIS規制による間接金融の妨害

 

 金融機関の融資(信用創造)には、地価の下落による担保不足と、BIS規制という障害が立ちはだかっています。

 政府は、金融機関に中小企業や国民への融資(信用創造)を諦めさせるように、あらゆる政策で妨害している張本人ですから、当然、そのことを良く判っています。

 融資(信用創造)の障害に最も早く気付き、最も不満を持つ者は、融資(信用創造)をしようとする金融機関です。

 そこで、政府は金融機関の不満が爆発しないよう、インフレ抑制による債権の実質価値の維持、インフレ無き国債の提供、証券市場への参入の自由化、種々の手数料の値上げ、当座預金付利子など様々な大サービスを行って来たのです。

 また、郵便貯金の民営化の本質は、郵便貯金から国債を引き受ける特権を奪い、一般の金融機関に国債保有の恩恵を分け与えるためのものでした。

 そして、現在、郵便貯金による国債保有残高は激減していますから、すでに民営化の目的は達成しています。ここまで来れば、郵政民営化を唱えていた連中にとって、完全に民営化されようとされまいとどうでも良いことです。

 すなわち、政府は、金融機関による間接金融を機能不全にしたからには、金融機関に何らかの飴(保護)を与えなければなりませんでしたそのひとつは郵政民営化で達成されました。

 そうでなければ、金融機関から政府の金融行政に疑問の声が上がり、中小企業に融資について間接金融を停止させようとする新自由主義的な企みは挫折しかねません。

 例えば、もし、政府が、金融緩和によって金融機関の国債保有を削減したときに、同時に超過準備預金付利子制度を廃止すれば、金融機関の不満が爆発し、政府の金融行政に批判が向けられることになるでしょう。

 間接金融(信用創造)に最も悪質な影響を与えたものは、1994年に実施された固定資産税の増税という資産政策、そして、1993年に実施されたBIS規制とその実施手段である金融検査マニュアルです。

 BISとは各国中央銀行を株主とする国際決済銀行(Bank for International Settlements)のことで、金融に関する国際間の取引を調整する機関です。

 BIS規制が間接金融に対して最も悪質な弊害になっていることは、金融機関が一番良く判っています。なにしろ、金融機関の融資の現場で毎日悩まされているものが担保の不足とBIS規制の二つだからです。

 かつて、BIS規制を徹底する手段として、竹中平蔵氏の作った金融検査マニュアルがありました。これは、竹中平蔵氏が誰かの代理人として小泉政権に受け入れさせたものです。間接金融を停止させれば、直接金融が日本国内で儲けることが出来ます。

 金融検査マニュアルは、中小企業融資を行えば行うほど、金融機関がリスクを積み重ね、健全経営から遠ざかる仕組みになっています。

 金融庁は、これを元気付け、中小企業融資を奨励するかと思いきや、反対に、ダメな中小企業に融資してどうするのかと、中小企業に融資した金融機関に対して貸倒引当金を積み増しさせるなどの懲罰を行う始末です。

 政府は預金者を保護するために金融機関の健全化が必要であると言っていましたが、預金者を保護するための手段は、政府が預金の全額保護を継続すれば良いだけの話であり、金融機関の経営者たちの懐の健全化を行う必要はありませんでした

 この「預金者を保護するため」ということが本当の目的なら「金融機関の収支の健全化」という方針は完全に見当違いと言うべきで

 預金者を保護するためには、金融機関の収支の健全化や経営者の利益を守る必要はありません。

 ところが、こうした金融機関の経営者の利益を守らなければならないという口実によって、日本政府は、中小企業を切り捨てる政策を行ったのです。

 そして、他方において、まさしく、中小企業は、貸し渋りや貸し剥がしといった塗炭の苦しみを味わいました。

 金融検査マニュアルでは、金融機関が中小企業融資を止めれば高評価になりますが、その目的が、間接金融と中小企業を切り離すことにあると考えれば合点がいきます。

 これらの指導は竹中平蔵氏によって行われたと言われています。

 国際決済銀行(BIS)のやっているBIS規制の根拠は、金融機関はしばしば間違った融資を行い、国民に迷惑をかけるので、国際決済銀行(BIS)と各国政府が監督しなければならないというものです。

 しかし、BIS規制の目的である「金融機関の間違った融資を止めさせること」つまり「金融機関の経営の健全化を図ること」という大義名分は、リスクを消滅することでしか実現されないものであり、すなわち、中小企業や国民への融資を止めることでしか、実現しないものなのです。

 ゆえに、金融機関の経営の健全化の目的を唱えるような世迷い事は、それは少なくとも、国民のため、とりわけ中小企業のためにるものではありません。

 金融検査マニュアルは、金融機関の自己資本比率に関する国際基準であるBIS規制を守らせるための、日本独自のマニュアルですが、政府がその役割を終えたと判断したことにより、2018年度で終了しました。

 しかし、その金融検査マニュアルの目的であるBIS規制が終了したわけではありません。

 また、金融検査マニュアルを手本とする指導が終了するわけでもありません。その検査のシステムを衆目にさらすことを止めようというにすぎません。

 「金融検査マニュアル」というツールを変更した真の理由は別にあります。すなわち、日本の地価が十分に下がり切り、どう足掻いても中小企業や国民への融資(信用創造)が出来なくなっていることを確認し、もはや、BIS規制という自己資本比率規制については、金融機関が自らの利益のために率先して行うようになっているので、定期検査である「金融検査マニュアル」という方法を止めたです。

 「金融機関の健全化」のためには中小企業に融資させない方が良いと考えた者は、証券市場で投資資金を調達している、いわゆる国際金融資本と呼ばれる投資家たちです。

 つまり、日本においては、主として経団連の大企業の株主たち中小企業に融資させない方が良いと考えたです。

 中小企業への融資が減少すれば、大金持ちの投資家たちは投資を独占することが出来るだけでなく、他に資金繰りを頼むところはないのですから、産業部門に法外な利益を要求することが出来ます。そのようにして、今、日本の大企業の株主や投資家たちは空前の利益を上げています。

 地価を下落させ、国民の担保力を破壊し、それだけでは飽き足らず、金融検査マニュアルで金融機関に嫌がらせをした結果、金融機関は中小企業への融資を止めてしまいました。

 また、バブル(バブルは崩壊によって定義されるので、バブルはすなわちバブル崩壊の準備段階でもある)を起こしたのは政府自身の経済政策によるものであり、金融制度ではなかったのですが、これもまた言いがかりの一つで金融制度の改革の理由にされたのです。

 そして、いまや、日本はBIS参加国の中でも飛び切りの優等生になっています。

 すなわち、地価下落によって担保力破壊を行い、ほとんど完全に中小企業融資を止めたのです。

 かつての日本の金融機関は、よく調査をし、親身になり、地元の中小企業と運命を共にする覚悟で融資を実行していました。その金融機関の努力があって、日本の中小企業はさまざまなチャレンジが可能になっていたのです。

 また、そうしなければ、金融機関も生きて行けなかったのであり、中小企業融資以外の道が塞がれていたがゆえに、中小企業融資が金融機関の使命となっていたのです

 しかし、間違ってはいけないのは、金融機関のリスクとは金融機関の経営者のリスクであって、間接金融のシステムのリスクではあり得ないということです。

 金融機関が破綻し、経営者が変わっても、政府の思惑次第で、いくらでも通貨発行を行い、(経営者を懲罰した上での話ですが)金融機関の損失の補填および預金の保護をしてやることによって金融機関そのもの、そして、その業務や雇用を存続させることが可能です。

 そうしてこそ、地元中小企業も再生の道を見出すことが出来るというものです。

 そういう意味で、間接金融のシステムのリスクは政府の思惑次第でどうにでもなります。

 ここでの問題意識は、それにも関わらず、なぜ、自民党政府は間接金融のシステムまで変更して、間接金融をつぶしてしまったのかということです。

 間接金融のシステムは政府の思惑または国家の意思によるものです。決して、自然現象のように勝手に変わるものではありません。

 バブル崩壊以降の日本政府は明確に一定の意志をもって間接金融のシステムを変更し、つぶしたのです。

 たとえ外圧があったとしても、どのような工夫をしてでも日本の既存の制度を守ることは可能でした。

 BIS規制にしても海外業務を行う金融機関だけが対象であり、国内の全ての金融機関に適用する必要は存在しませんでした

 しかし、日本政府は、国際業務を行いたい金融機関が国内でも不利にならないためという理由で、国内の全ての金融機関に間接金融が機能しないほどの規制をかけたのです

 しかし、国際業務を行いたい金融機関が国内でも不利にならないということすら言い訳にすぎません。本音は、国内における大企業独占を目的として、直接金融を中心に据えたいがための間接金融の破壊にあります。

 そして、正に、間接金融を停止させる致命傷を負わせた政策地価下落政策でした。

 日本のバブルの当時は信用の高い土地の価格を担保として、金融機関が積極的な融資をしており、日本の企業はその間接金融の資金力を背景に強力な国際競争力を持つことが出来たのですが、これに怒ったアメリカの要求により、日本政府は固定資産税の重税化による地価下落政策を行ったのです。

 したがって、固定資産税の重税化は、日本の間接金融を絞殺する目的を持って行われました

 そして、間接金融を停止させる第二の方法がBIS規制でした。

 BIS規制は世界の国際投資家たちが、自分たちの資本の希少性を守らんがために、世界的規模で仕組んだあらゆる国の間接金融を停止させるための謀略です。

 

 

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