④アメリカでもハイパーインフレは起こらない

 

 アメリカでも、デフォルトやハイパーインフレは起こりません。なぜなら、アメリカは通貨発行権を持ち、かつ、アメリカ国内であらゆるものが大量に生産されているからです。

 アメリカは、ウォールストリートにばかりに焦点が当てられていますが、依然として世界一の生産大国なのです。

 アメリカ国内の生産が無くなれば、アメリカが基軸通貨国であろうと、金融立国であろうと、ハイパーインフレが起こり、輸入がストップしてしまう事態が起こります。

 通貨発行権を持ち、生産力が強大であれば、政府の財政は無敵です。すなわち、いくら政府債務が膨大になろうとも、デフォルトもハイパーインフレも起こりません。

 そして、基軸通貨国を標榜することが出来ます。

 基軸通貨国であることは、生産力が強大であることと同意義であって、それ自体に大した意味はありません。

 日本が通貨発行権を行使して債務を返済する場合、つまり、金融緩和を行う場合、日本にインフレが起こったからといって、他国に責任を負う必要はありません。

 通貨発行権とはそういうものです。有無を言わせぬ強引な通貨発行が、通貨発行権を持つ国の特権なのです。

 もちろん、日本は完全な管理通貨制度で変動相場制の国ということもありますが、どこかの国と固定相場制が採られていようと、通貨発行権の過剰な行使については、固定相場制が失敗、二国間で変動相場制になってしまうという以外の問題はありません。

 通貨発行権の行使にとって重要な裏付けは国内の生産力だけなのです。

 通貨発行は、「国内の生産力」に裏付けされていなければ、インフレになり、または、ハイパーインフレになります。そして、ハイパーインフレになるということは、政府が発行した貨幣が信用されなくなるということですが、その場合は、当然ながら、通貨との交換によってのみ価値づけられている国債も信用されなくなり、国債も暴落します。

 アメリカや日本では通貨発行権があることでデフォルトは無く、しかも、いくら通貨を発行しようとも、通貨の発行によっていくら政府債務を返済しようとも、発行貨幣量に見合う十分な生産力がある限りは、インフレが起こりにくいことから、アメリカや日本の国債は安全であると言われているのです。

 EU諸国では各国独自での通貨発行権を持ちませんから、中央政府以外の各国の財政は民間経済の一員であるも同然となり、家計と同じくデフォルトが起こる可能性があります。

 地方政府に徴税権があっても、国内または地域内のあらゆる決済を行える通貨の通貨発行権がなければ、マネーストックの中で貨幣が移動するだけなので民間企業と同じです。

 ギリシャ政府はあらゆる決済を行える通貨の通貨発行権を持たないので、企業と同様に財政黒字を出して、物々交換の原理で、他者に返済しなければなりません。

 ギリシャ政府の発行する国債は外貨建て国債と同じであり、外貨建て国債は、必ず、債務に見合う生産物を差し出さなければなりません。それが出来なければデフォルトになり、デフォルトのリスクによって国債が暴落します。

 ギリシャなどは、景気が良いわけでも、投資が活発なわけでもないのに長期金利が25パーセント前後を推移しているのですが、これはデフォルトのリスクを反映しているもので、評価として、国債が暴落していると言えるでしょう。

 これに対して、通貨発行権を持つ国で自国通貨建て国債を発行している場合の財政破綻は、デフォルトではなくハイパーインフレを意味します。

 この、通貨発行権を持つ国と持たない国とで異なる財政破綻の意味するものの区別は重要です。

 また、アメリカについて、自国通貨建て国債を発行しているのに、日本や中国の持っているアメリカ国債を売ればアメリカは「破綻する」とか言う者がいますが、わざとなのか無知なのか判りませんが、そういう者は、破綻の意味がデフォルトなのかハイパーインフレなのかの区別がついていないのであろうと思われます。

 アメリカは、通貨発行権と巨大な生産力の両方を持っているので、デフォルトであろうと、ハイパーインフレであろうと、財政破綻などするわけがありません。

 アメリカが「財政の崖」などと言って騒いでいるのは、単に、アメリカは赤字国債の発行高の上限などを国内法で勝手に取り決めしているために、それに違反する「財政の崖」などの「政局」が起こるのであり、財政均衡派(金融資本家たち)がわけのわからない喧嘩をふっかけ、政治が混乱したり、政権が倒れたりする恐れがあるというだけのことにすぎません。

 「財政の崖」などの創作された危機を度外視するとしても、なお、アメリカが日本にアメリカ国債を売却させないよう圧力をかけているのは、日本がアメリカ国債を大量に売るときはその中古国債の価格を下げて売ることになり、アメリカが新たに発行しようとする新規国債の価格も下がるからです。

 また、日本に出来ることは、中古国債を証券市場で転売するだけですが、それだけでは、アメリカ政府は痛くも痒くもありません。アメリカ国債は満期になるまで返済されませんし、返済は新規国債の発行で付け回しが行われるだけで、アメリカ国内の貨幣発行量は変化しません。

 つまり、国債も貨幣政策の一つであって、国債と貨幣の交換をしたからといって、アメリカが貧乏になるということは起こらないのです。

 もし、日本が協力しなくなって、アメリカの新規国債を買わなくなったり、アメリカ国債を売ようになると、ドルが財市場に放出され、アメリカはインフレに誘導されます。

 そのままインフレを許容すれば何の問題もないのですが、インフレを許容すると、アメリカの財政均衡派(金融資本家たち)政府を無能呼ばわりするでしょう。

 だから、アメリカ政府は目先のインフレを回避するために、国債の売れ行きを挽回しようとして、アメリカは国債価格を少し下げて、つまり長期金利を上げて販売しなければならなくなるかも知れません。

 しかし、本当は、日本にとって日本国債の販売の不振がまったく危機的な意味を持つことはないと同様に、アメリカにとってもアメリカ国債の売れ行きの悪化は、アメリカ経済にとって大した問題ではありません。

 アメリカは、自国の国債価格が下落すると、長期金利が上がり、中小企業の設備投資を圧迫しますから、財市場ではインフレ懸念から一転して、今度はデフレを心配しなければならなくなります。

 そうすると、アメリカはデフレ回避の政策として、内需拡大政策つまり財政政策や金融緩和を行わなければならなくなります。(アメリカにおいても、内需拡大政策が本物であるとき、経済は成長します。このような一進一退の攻防の中で、アメリカの経済は成長して来ました。)

 しかし、アメリカ政府が内需拡大政策に踏み切れば、そのとき、所得再分配が大嫌いなアメリカの財政均衡派(金融資本家たち)は、自分たちがロビー活動で政府にゴリ押して決めさせた「財政の崖」と呼ばれる「緊縮財政政策の与野党合意」を盾に財政の悪化を非難し始めます。

 アメリカの政治家は、こうした複雑な政局の発端が、日本のアメリカ国債売却となることを嫌っているだけです。つまり、単なる政局のタイミングの話にすぎません。

 すべてはアメリカの政治家の都合から生まれるのですが、日本の経済学者も政治家もマスコミも、なぜか、アメリカの政治家と同様に大騒ぎをしているのです。

 むしろ、アメリカも、「財政の崖」などという「財政均衡政策の与野党合意」を放棄して、低所得者や貧困層を救済するために、今以上の積極財政政策を行うべきです。

 実際のところは、アメリカより日本の方が「財政均衡政策の与野党合意」は強固であり、アメリカの「財政の崖」などというものが生易しく見えるほどです。

 日本の政治家はアメリカの政治家など問題にならないくらいに、一人残らず、自民党であろうと、民主党系であろうと、共産党であろうと、ゴリゴリの財政均衡派です。

 日本とアメリカの違いはアメリカが財政均衡主義は策略であることを理解して行っているので、しばしば互いに財政政策において妥協し、そのことによって経済成長しているのに対して、日本の政治家は一人残らず、自民党であろうと、民主党系であろうと、共産党であろうと、日本がこのまま政府債務を拡大していけば財政破綻し、ハイパーインフレになると信じ込んでいるところです。

 ゆえに、日本においてはどのような社会政策であろうと、すぐに財源均衡論と増税の話になり、財政赤字を拡大しても良いという方向の妥協はありません。ゆえに、世界の先進国で日本だけが経済成長において一人負けしているのです。

 

 

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