消費税はこの世に存在してはならない税金

 

 企業の中で生産されるものが付加価値ですが、付加価値は、賃金、利益、地代、利払いに分配されます。

 ただし本来、地代と利払いは資本の調達費用であり、また所得移転なので、株主の利益に含まれるものですが、ここでは、削られる余地のあるものとして、表面に持ち出しておきます。

 この付加価値の分配を受ける者の中に、「消費税」という新参者が参加します。

 この新参者が入って来た場合でも今までと変わらない同じ量の付加価値を、賃金、利益、地代、利払い、そして、消費税に分配しなければなりません

 この場合、一番強いのが税務署(消費税)、二番目が債権者(利払い)と地主(地代)、三番目が株主(利益の配当)、一番弱いのが労働者(賃金)です。

 株主も労働者も、税務署と債権者と地主には逆らえません。そうすると、この場合の消費税を支払うための努力はどういうものになるかというと、この序列に従って、一番目の税務署、二番目の債権者と地主は苦も無く分配を受け、三番目の株主と一番弱い労働者が熾烈な戦いをすることになります。

 一般的に、インフレの時はほとんど完全雇用が達成され、労働者か有利になりますが、デフレの時は不完全雇用状態になりますから、労働者は不利に、株主が有利になります。

 しかし、消費税の導入の目的は、低所得者や貧困層、すなわち労働者からの搾取なのであって、株主から税金を取るためのものではありません。

 なぜなら、株主の負担を増やすためには、法人税の増税が最も理にかなっているのに、そうしないのは、株主の負担を増やすことが目的ではないからです。

 だから、消費税が創設されたからには、消費税以外のあらゆる政策もまた株主を勝利に導くように構築されます。

 消費税の創設は、消費性向の高い低所得者と貧困層にお金をもたせない目的を持つものであり、決してインフレにさせないための政策なのです。

 もし、消費税を維持したままインフレを起こそうという者がいたとすれば、それは、もう、はっきりと頭がおかしいと言うしかありません。

 消費税の導入政策とインフレの誘導政策では、目的が逆向きなのです。

 消費税の導入においては、世の中をデフレに誘導しながら、企業内で株主と労働者を戦わせ、そして、労働者の賃金減少させて行くことが目的です。

 株主の能力とは、労働者の賃金から消費税分を削り取る能力と言うことになります。それが出来なければ、株主は無能と言われます。

 それが出来ない株主は生きていけなくなります。消費税の創設は単なる増税ではなく、明らかな新自由主義への体制の転換です。

 本来の意味における担税力とは、生活に必要なものを支払った残余や貯蓄のことなのに、「付加価値税」でいう担税力は、このように株主が労働者から賃金を削り取る冷血さを指すことになります。

 しかし、それにしても、シャウプごとき者の単純な発想、「分配面のGDP」の前の段階の「生産面のGDP」つまり生産現場に担税力が存在するという発想に騙される政治家も情け無いと言うしかありません。

 課税当局が、生産現場の戦いが終わり、所得生産者たちに分配されるまで待ってやれば、正真正銘の担税力が生まれるというのに、なぜ、分配まで待てないのでしょうか。

 そうすれば、利益を得た企業と、所得を得た個人に、法人税と所得税で課税することが出来ます。誰でも、これくらいの理屈は判るでしょう。

 ところが、利益や所得に法人税と所得税で課税されたくない富裕層が居て、その連中が政治家をロビー活動で抱きこみ、分配面の前の生産面で、そして、工場で労働者が働いている最中に、労働者の道具箱の中から何がしかの物をかっさらおうと策略を立てたのです。

 したがって、労働者は賃金が削られ、生きるだけの食料は買えても、高価な耐久消費財(家や自動車)を買えなくなったのです。

 今、ほとんどの労働者は家を買うためには夫婦共稼ぎをしなければならなくなっています。今、主婦が家庭から引きずり出されて働かされ、共稼ぎで、ようやくかつての家が買える程度の所得になっているのです。

 こうして、現在の消費税は、賃金から削り取られており、シャウプの付加価値税の初志は少しも損なわれることなく貫徹されています。

 株主配当というインカムゲインは純利益から分配され、株主の利益になります。そして、さらに配当した後の残余が企業内において集積され、内部留保金となり、株価を上げ、やはり行き着く先は株主の利益になります。

 法人税の減税は、純利益への懲罰をゆるやかにし、株主にインカムゲインとキャピタルゲインの二重の利益に保護を与えるのです。

 その株主の用心棒たちがひんぱんにテレビに出て、純利益が大きくなれば設備投資や雇用も増大すると、デタラメなプロパガンダをやっているのですから、国民はたまったものではありません。

 資金が、設備投資や雇用拡大に使われていれば、純利益は減るのですから、純利益から設備投資費や賃金が支払われていると言う理屈は成り立ちません。

 法人税は企業の純利益(株主の利益)を懲罰し、労働者の賃金や設備投資への分配にインセンティブを与える税金です。

 逆に、法人税の減税を行うということは、企業の純利益を優遇し、むしろ、労働者の賃金や設備の削減にインセンティブを与えるということです。

 よって、労働者の賃金を上げようとするのなら、法人税の増税が正しいのです。

 法人税と所得累進課税は、企業の内部留保金という株主の利益、および富裕層への所得の集中を懲罰します。

 その分、低所得者や労働者の負担は軽減されますから、法人税と所得累進課税は弱者を保護するための良い税金す。

 ゆえに、法人税と所得累進課税が強化されれば、平等への道標となり、同時に持続的な経済成長を約束します。

 法人税が高ければ高いほど、あるいは所得税の累進度が大きければ大きいほど、労働者の賃金が上がり、設備投資が行われ、限界消費性向が上昇し、資本の限界効率が高くなり、経済成長ることが出来るようになります。

 逆に、消費税は労働者の賃金を削減させ、労働者を貧困にし、限界消費性向が下降し、資本の限界効率が低くなり、経済成長ることが出来なくなります。

 完全雇用が達成されていれば、労働者にも多少の勝ち目がありますが、消費税の存在する世の中では、消費性向が低くなり、資本の限界効率が低くなり、投資家は投資(生産と分配)をしなくなりますから、完全雇用は不可能になりま

 だから、この世に消費税が存在する限り労働者に勝ち目はありません

 もし、消費税が強化されているのに、賃金が上昇するような何かの動きがあったとしても、それは明らかな政策の矛盾であり、おそらく、その整合性があるとすれば、「労働者は生かさず殺さず」という政策の中で、「殺さず」の政策が少し行われただけであり、または、それが大企業だけの賃上げならば、さらに格差の拡大が進行しているだけのロクでもないものということが出来ます。

 また、公務員給与は大企業の賃金に関連付けられているので、すぐに公務員給与も上がり、公務員と民間労働者の賃金格差もまた拡大するでしょう。

 消費税の存在について、寛容な態度で、少しくらいなら良いだろうと考えがちですが、そして、世論はそのように誘導されていますが、それは少しくらいなら強盗をしても良いという考え方と同じものであり、この少しくらいなら良いだろうとする考え方が、現在の惨たんたる状況を到来させたのです。

 ただでさえ、経営者は、人件費を削り、あるいは、賃金を下げようと躍起になっているのですから、消費税と呼ぼうと、付加価値税と呼ぼうと、労働者に所得を分配することにマイナスのインセンティブを与えるような税金は、たとえ僅かであろうと、その存在自体を許してはならないのです。

 

 

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