▼ 慶応大学病院で最も治験が多く実施されているチオプリン製剤
東京の慶応大学病院では、潰瘍性大腸炎/クローン病の治療に使われるチオプリン製剤の治験が、このところ活発に実施されています。チオプリン製剤とはどんな薬なのでしょう?
商品名だと、イムラン®、アザニン®、そして、ロイケリン®があります。
◎ 図は薬剤師の脳みそから拝借
杏林大学の教授が報告する潰瘍性大腸炎薬物療法の最前線 2023年のレポートを要約しながら、加筆してみました。
▼ 開発史
チオプリン製剤
チオプリン製剤は、 1950 年代にアメリカのふたりの研究者らによって白血病治療薬とし て開発されました。
◎ 同僚同士のエリオン博士とヒッチングス博士。この薬の開発で1988年にノーベル化学賞を受賞。
▼ 海外では1970年代から治療薬、日本は36年後
海外では 1970 年代頃から潰瘍性大腸炎/クローン病の治療薬として使用されはじめました.
日本では、2006 年に ステロイド依存性の潰瘍性大腸炎/クローン病に対してイムラン®の適応追加が承認され,ステ ロイド漸減や寛解維持を目的に広く 用いられています。
なんで36年も待たなければならなかったのでしょう?
▼ 生物学的製剤
最近では、生物学的製剤の抗TNFα抗体製剤(レミケード®など)の効果を弱めてしまう抗製剤抗体を抑える目的で,チオプリン製剤を一緒に使います。
レミケード®など以外の生物学的製剤では,チオプリン製剤の効用については不明です。
▼ 保険対応2種、対応外1種
潰瘍性大腸炎/クローン病の治療で保険が適応されるのは、イムラン®、アザニン®の2種。ロイケリン®は、効果が確かめられず保険適応外。
◎ イムラン®とアザニン®(青字)に比べてロイケリン®(緑字)の構造はシンプル。そのぶん、効果が薄れるのかな?
▼ 作用
みっつの薬は、それ自体には薬としての効果はなし。でも、体内で化学変化が起きると、薬としての効果が出るというちょっと不思議な薬。
潰瘍性大腸炎/クローン病は、正体不明の根源太郎のせいで、好中球ちゃんやクロスケ、将軍たちが、勝手に異常に増えることで炎症が悪化する。
迷惑な増殖を抑えるにはどうしたら良いのか? みんなが分裂して増えるのを防げば良い!
どうやって?
みんなのからだを構成する物質を製造させなければよい。いかにして?
この先は憶測です。
好中球ちゃんたちは、細胞分裂で増えます。細胞分裂するためには、細胞ふたつ分の材料が必要。その材料は、細胞のどこかで作られます。作業を邪魔すれば、好中球ちゃんは分裂して増えることができない。邪魔役が、チオプリン製剤です。
チオプリン製剤は、根源太郎をやっつけられないけれど、勝手に増殖する迷惑な好中球ちゃんたちを抑え込むことはできる。ごめんね、好中球ちゃん。
やたら増えまくっていた好中球ちゃんたちが少なくなれば、腸の炎症は下火になる。
喜ばしいことですが、ウイルスやばい菌が入ってきた場合、好中球ちゃんたちの数が少ないので、風邪やインフルエンザになりやすいという死角ができてしまう。
このため、チオプリン製剤を使っているときは、感染しやすい人込みの中に入らない、体力を常に温存しておくなどの注意が必要です。
続く・・・