ちゃちゃさんとの潰瘍性大腸炎の入院時の対話の中で、炎症が起きていても、検査にそのことが反映されないとのお話がありました。
この検査は、CRPのことです。
▼ 武器の注文主はクロスケ、製造と発送は肝臓が担当
からだの中でウイルスや細菌によって炎症が起きると、クロスケや好中球ちゃんたちが駆け付けて、退治にかかります。
ウイルスや細菌は、分裂を繰り返しながらものすごいスピードで増殖。クロスケや好中球ちゃんたちの攻撃だけではとても追いつけない。
そこで、クロスケは、肝臓に武器の大量生産を依頼する注文書(番号:IL6)を血管に放出して送ります。
武器の注文書が肝臓に到着するまで30秒以内。取引先の肝臓は、急ピッチでタンパク質性の武器を製造し発送。それがCRPです。
◎ CRP (C-アクティブ プロテイン=C反応性たんぱく質)
からだの中で炎症性の刺激が起きたり、細胞が破壊されると、血液の中に急増するたんぱく質。
▼ 肝臓での製造は急ピッチ
武器であるC反応性たんぱく質は、炎症が起きてから2~3時間たてば血管の中で一気に増えます。肝臓が急ピッチで製造するため。
その後、血中量は、数日でピークに達します。症状が続けば、肝臓はフル操業を続ける。からだの状態が正常に向かえば、今度は急速に量が低下していく。
症状が急激に悪化すると、このたんぱく質の検査数値が上昇するため、活動期の指標になります。
▼ C反応性たんぱく質(CRP)
血液検査を受けると、結果表にはCRPの基準値と患者の数値の両方が記載されています。このため、患者は、このたんぱく質は、炎症を測るためにあると思ってしまう。
実は、そうではなくて、C反応性タンパク質は、クロスケや好中球ちゃんの戦いを援護する武器のひとつ。検査用に採用されたのは、このたんぱく質の量が、炎症の度合いと比例するとされるから。
▼ 謎
からだのなかに炎症が起きていれば増えるタンパク質。が、実際は、そうではないこともある。
- 出血しているのに検査値がゼロだった。
- 内視鏡で中等症の活動期とされても、CRPの上昇がない患者が2割ほどいる。
- 重症で活動期でも、1割の患者は検査値が上昇していなかった。
C反応性たんぱく質の発見は、1930年。96年も前です。ですが、上記の謎のようにわからないことが多く、研究も残念ながら進んでいません。
▼ 問題点:全身の中で起きている炎症の様子を反映
C反応性たんぱく質は、全身を流れる血液を検査して値を得ます。このため、大腸の炎症度を知りたくても、他の部位でケガをしていたり、生理中だと、検査値がより高くなる可能性があり、大腸の様子が正確にわからない。
▼ 海外の治験1)
C反応性たんぱく質の信頼度はどのぐらいなのでしょう?
イギリスで、C反応性たんぱく質を使った有効率に関する治験がかなり以前に行われました。
小児患者を対象
潰瘍性大腸炎は100%
クローン病は60%
成人
潰瘍性大腸炎は100%
クローン病は50%
患者の様子:
クローン病は、ほとんどの患者の症状が低かった。
92.9%は、CRP値は軽度で、0.6mg/dl 以下だった。
内視鏡的に病変があったが、大多数が軽度だった。
(炎症度を示す数値は低かったCDEIS≦6)。
感想:
治験をしたとき、重度の患者が入院していなかった??
潰瘍性大腸炎の患者についての説明はありませんでした。憶測するに、軽度なら数値は低め、重度なら高かったというように、研究者を満足させるものだったのかも。
あまり参考にならないデータです。
▼ 治験2)
クローン病では、C反応性たんぱく質は、内視鏡結果と細胞組織の検査では、重度の炎症と関連していた。
潰瘍性大腸炎では、細胞組織の検査で重度とされた炎症とのみ関連していた。
▼ 抗 TNF-α 抗体 生物学的製剤
クローン病では、C反応性たんぱく質の値が高いほど、レミケード®、ヒュミラ®、シンポニー®、シムジア系の有効性が高かった。
◎ 将来的な手術のリスク
これは、CRPとは関係ない情報です。たまたま今回見つけたので、紹介します。
潰瘍性大腸炎/クローン病の両方で、抗 TNF-α 抗体の検査値が高いと、将来的に手術のリスクが高くなるとの報告がある。