良くも悪くも、負けてこなかった。
だから、あなたの目の色はずっと変わらない。
このままの努力を続けていれば志望校に受かると、本人は信じて疑っていない。
焦らない。
慌てない。
その底知れぬ自信と、波のない感情のおかげで、
学校生活で悩んだことはなかった。
でも、受験の世界に入ってから、
それが少し怖くなった。
他人との比較から生まれる競争心が、どうも弱い。
何不自由なく育ててきた。
大きく挫折することもなく、
「自分はできる」という感覚のまま、ここまで来た。
それは今までなら、きっと良いことだった。
でも、受験ではどうなんだろう。
負けた経験がないこと。
悔しくて仕方がない、という経験が少ないこと。
それが、今になってマイナスに働いているような気がしてならない。
もっと早く、
誰かと比べて悔しがる経験をさせておけばよかったのか。
もっと「負けたくない」と思う環境に置いておけばよかったのか。
でも、もう遅い。
今さら他者比較する力を育てている時間なんて、ほとんど残っていない。
このままのあなたで、本当に大丈夫なの?
そう思う私の隣で、
本人は今日も、いつもと変わらない顔で勉強している。
志望校に受かることを、疑っていない。
その揺るがなさを頼もしいと思う日もある。
でも今は、
その自信が、ただの自信なのか。
それとも、まだ「負ける」ということを知らないだけなのか。
分からない。
受験まで、もう時間がない。
今の私に、何ができるんだろう。



