我が子との大切な時間を、
こんなふうに過ごしたかったわけじゃない。
私はもともと、お出かけが大好きだ。
休みがあれば旅行の荷物を車に積み込んで、
「とりあえず行ってみよう」と弾丸旅行に出る。
計画なんて後から考えればいい。
家族で笑って、
知らない場所へ行って、
美味しいものを食べて、
「楽しかったね」と帰ってくる。
そんな時間が、私は大好きだった。
それなのに今、
我が家はほとんどの時間を家で過ごしている。
勉強。
模試。
宿題。
また勉強。
家族全員が応援団になって、
気がつけば我が家は、すっかり受験一色だ。
もちろん、受験を投げ出したいわけじゃない。
本人が頑張っていることも知っている。
ここまでやると決めた以上、
できることは全部してあげたいと思っている。
それでも、ときどきものすごく虚しくなる。
まだまだ親と一緒に出かけることを楽しんでくれる我が子。
「どこ行く?」と聞けば喜んでくれる。
今しかないこの時間を、
もっと一緒に遊んでいたい。
もっと遠くへ行きたい。
もっとくだらないことで笑いたい。
本当は、そう思っている。
でも、現実が甘くないことも分かっている。
だから、この時間を「犠牲にしている」なんて、できれば思いたくない。
受験が終わったあとに、
「あのとき、もっと遊びに行けばよかった」
なんて後悔するのも嫌だ。
でも同時に、
受験が終わったあとに、
「あのとき、もっと家族で過ごせばよかった」
と後悔する可能性だってある。
だって、今の時間は二度と戻ってこないから。
結果が分かっていることなら、
努力する意味も見つけやすい。
頑張れば必ず報われるのなら、
この時間にも迷わず意味を持たせられる。
でも、受験はそんなに簡単じゃない。
どれだけ頑張っても、
必ず合格できるわけじゃない。
どれだけ時間を費やしても、
最後の日に結果が出なければ、それまでとは違う意味になってしまう。
だから怖い。
これだけ家族みんなで頑張って、
これだけたくさんのものを後回しにして、
それでも届かなかったら。
そのとき私は、
「仕方なかった」と思えるんだろうか。
それとも、
あの時間を返してほしい。
そんなふうに思ってしまうんだろうか。
だからといって、今さら受験をやめるわけにもいかない。
やると決めた。
本人も頑張っている。
家族みんなで応援している。
だから、前を向くしかない。
それでも私は、ときどき思う。
この子と過ごせる「今」を、
受験のためだけの時間にしたくない。
勉強している姿も、
頑張っている姿も、
もちろん大切な思い出になる。
でも、
一緒に笑ったことも。
突然思い立って出かけたことも。
何でもない日に家族で食べたご飯も。
そういうものだって、
きっと同じくらい大切な時間だったはずだ。
受験が終わったら、また出かけよう。
そう思っているけれど、
「また」は、今と同じではない。
子どもは今のままではいてくれない。
今しか一緒に遊べない。
今しかできないことがある。
だから私は、
合格だけを見て走ることが怖い。
でも、後悔もしたくない。
受験をやり切らなかったことも。
もっとできたのに、と振り返ることも。
そして何より、
大切な時間を、大切にできなかったと思うことも。
結局、私は何を選んでも怖い。
だから今日も、
勉強する子どもの隣にいる。
家族全員で、受験を応援する。
そして心の片隅で、
「これでよかったんだよね」
と、何度も自分に問いかけている。
後悔したくない。
子どものためにも。
家族のためにも。
そして何より、
私自身が、後悔したくない。
こんな風に思いたくないのに思う自分も嫌だ。

