映画「ミッドサマー」感想&シネマイラストetc. | la petite chambre

la petite chambre

illustrator ree*rosee art works

春は近付いているのに、先月からコロナ・ウィルスの影響で不穏な日々。

なるべく外出は控えるようにしていますが、2月は見たかった映画が多く、

人が少ない時間帯、近くに人が座らないような席を選び、マスク必須で

2月に鑑賞した映画の1作「ミッドサマー」について。

 

女子大学生ダニーは、精神疾患の妹が両親を巻き込んで一家心中した為、

本人も精神を病み、冒頭から早くもどんよりした絶望的なモード。

恋人のクリスチャンはダニーにうんざりしていたが、精神不安定な彼女に

別れを切り出せず。大学の仲間と計画していた、男だけで行く予定だった

スウェーデン旅行がダニーにばれて、彼女も同行することに。

スウェーデンからの交換留学生ペレの誘いで、彼の故郷の村で90年に1度、

9日間開催される夏至の祝祭に一行は参加する。

到着初日からドラッグをキメて幻覚症状を感じ、日が落ちない白夜の中、

奇妙な時間を過ごす。花があふれる楽園のような村で、美しい民族衣装の

村人に迎えられ、少しずつ異様さを感じ、恐ろしい出来事に巻き込まれて行く…

 

映画を見て想起したのが、リメイク版「サスペリア」、ゴシックロリータ映画

闇のバイブル」、ヘンリー・ダーガーの世界。

カルトのコミューン、儀式の為の生贄、選ばれし者の構図は、リメイク版

「サスペリア」の白の世界。

「サスペリア」は映像的にダークで、本作は明るい色彩でファンタジー色が

あるけど、衝撃的なグロさは負けず劣らず、不気味な息づかいや時空を超えた

シーンなど、重なる部分が多い。

終盤の非現実感満載のホラー映画「サスペリア」に比べ、伝統儀式として

現実的にあり得そうな怖さの、サスペンス風メンタル崩壊パニックムービー。

 

恐怖でグロくてパニック要素満載だけど、シュール過ぎてところどころ笑えた。

メイクイーンになったダニーが大量の花に埋もれるシーンも、顔はめ看板や

アイコラみたいで、きれいな花と対照的にどんよりしたダニーの表情も笑える。

その印象的なシーンを絵にしました(トップ画像)

フォークロア衣装も美しく、美しい映像と対照的に、じわじわ炙り出される村人の

恐怖の連帯感に緊張と不安を感じる、美しき白昼悪夢。

 

幻想と狂気的な白昼夢の世界観は、繊細で美しい色調と毒性のある不気味な

ヘンリー・ダーガーが描く絵の世界。


ダーガーは何度か展示で原画も見た好きなアーティスト。少女性と毒気のある作風、

拙さのある絵や色彩、群像感のある構図は好きな反面、両性具有の少女の変態性、

血塗ろ・内蔵グロ系の狂った世界観は不気味で、ファンタジーと狂気の融合が

この映画の雰囲気とリンクしていた。

 

「ミッドサマー」の舞台はスウェーデンだけど、フォークロア衣装が何となく

東欧っぽいと思ったら、ロケ地はハンガリー、衣装デザインもハンガリー出身の

デザイナーとのこと。

カルトな祝祭儀式の描写、変態で官能的でミステリアスな雰囲気は、チェコ映画

「闇のバイブル」(Valerie and her week of wonders) ぽさも感じた。

 

鑑賞前にネット検索してたら、生贄、カルト宗教を描いた恐怖映画として、

70年代の映画「ウィッカーマン」ぽいという意見もあり、パンフレットでも

触れられていたので、レンタルでチェックしてみたいと思う。

 

キャストは知らない俳優ばかりと思ったら、主演のフローレンス・ピューは、

若草物語のリメイク「ストーリー・オブ・マイ・ライフ」の四女エイミー役を

はじめ注目株の新進女優とのこと。

ムッチリ健康体型、いわゆる美系女優でなく普遍的な女性っぽさがリアルで、

本作では洗脳の洗礼を受け、崩壊していくメンヘラ女を熱演。

恋人クリスチャン(ジャック・レイナー)は「シング・ストリート」の主人公

の引きこもりっぽいダメなお兄ちゃん役で、本作とは違うタイプのダメ男。

 

怒り眉が特徴的でいかにも悪人相な、チャラ男のマーク(ウィル・ポールター)

は見たことあると思ったら「なんちゃって家族」の偽息子で出演。

比較的マトモそうな黒人のジョッシュ(ウィリアム・ジャクソン・ハーバー)

は「パターソン」の酔っぱらいのダメ男役だったらしいけど気付かなかった。

学生仲間は全員同世代と思ったら、他は30前の俳優陣だけど実年齢は彼だけ

アラフォーで、黒人男性って若くて年齢不詳な人が多い。

 

一番驚いたのが鑑賞後キャスト見て、村の長老が「ベニスに死す」の美少年の

ビョルン・アンドレセンだったこと。

あの作品以外は見たことなくて、俳優活動続けてると思ってなかったので、

久しぶりに見たのが、とんでもない作品でどえげつない役でびっくり。

ほぼ面影なくて気付かなかったので、もう一度見直したい。

痩せこけて病弱そうで白髪の長髪とヒゲの仙人みたいな外見のせいか、

実年齢65歳より老け感がすごかった(70代の役ということもあって)

 

パンフレットの完売・転売ついて前回書いたけど、増刷されて6日から再販され、

買い逃しのないよう初日に買いに行き、無事入手しました。
A5のコンパクトサイズながら、大島依堤亜さんらしいこだわりあるデザイン。

映画で登場した書物に倣って不揃いなギザギザ仕様のページ、観音表紙、

ゴールド仕様、ヒグチユウコさんのイラストも掲載された見事な1冊。

そういえば「サスペリア」のパンフのデザインも大島依堤亜さん&

日本版ポスターもヒグチユウコさんのコンビでした。

 

最後に薄紫のヒヤシンスと「ミッドサマー」の花にまみれたダニーのドローイング。

本日はミモザの日ということで、先日買ったミモザのドライフラワーのカケラも。