ジャンヌ・モロー&「天使の入江」 | la petite chambre

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今年7月末に亡くなったジャンヌ・モロー。

最近まで女優業を続けていて、89歳の高齢で幸せな最期だったと思うけど、

好きなフランス女優の一人だったので訃報はショックだった。

 

9月に大阪で上映されたジャック・ドゥミ&アニエス・ヴァルダ特集で、

見たかったドゥミ作品、ジャンヌ主演の「天使の入江」をようやく鑑賞。

 

 

ストーリーは、

銀行員のジャン(クロード・マン)が同僚に勧められたカジノで大当たりし、

更に一儲けしようと向かった南仏のカジノで、ブロンド女性のジャッキー

(ジャンヌ・モロー)と出会う。

ギャンブル依存症のジャッキーは、勝負運の強いジャンと出会ってツキ始め、

ギャンブル依存は加速する。

勝ったり負けたりを繰り返し、ジャッキーの無茶振りに振り回されながらも、

妖艶な彼女に次第に惹かれてゆく。

白のスーツや大きな花柄の背中の開いたタイトなワンピース、羽飾りなどの

ファッションで颯爽と歩くジャッキーが素敵で、自分勝手だけど若い男を

魅惑する女を好演。

ジャンヌ・モローの近作はあまり見ていないけれど(最後に見たのは多分

オゾンの「ぼくを葬る」だったと思うので10年ぐらい前)、若い頃〜

中年期の出演作で見た多くが悪女やワケありな役で、悪女が似合う女優。

「天使の入江」のジャッキーも、平凡な男を惑わし道連れにする破滅型女。

共倒れしないかハラハラしながら、ジャンの愛に向き合ってあげて!と

懇願しながら見ていて、面倒な女だけどこちらも彼女に惹かれていた。

 

ドゥミ作品は名作「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人たち」

「ロバと王女」(※リンク先音あり注意) のようなカラフルでドリーミーな

作品ももちろん好きだけど(シェルブールの内容は悲劇だけど)

長編デビュー作「ローラ」や「天使の入江」など初期作品はモノクロ

ということもあり、シックで少しビター、大人な香りがして好い。

 

恨みのある男たちに次々復讐を仕掛ける「黒衣の花嫁」(トリュフォー)

のサイコ的な悪女は清々しく、「死刑台のエレベーター」「恋人たち

(共に当時パートナーだったルイ・マル作品)では不倫妻を演じ、

小間使の日記」(ブニュエル)は低身分ながら強かさのある小間使など、

多様なクセのある女性を印象的に演じた。

冒頭にアップしたドローイングの「エヴァの匂い」(ジョセフ・ロージー)

も悪女役だけど、かなり前に見たので記憶が薄れてるので再鑑賞したいし、

「黒衣の花嫁」で当時ジャンヌと好い仲だったピエール・カルダンが

担当した衣装も見直したいと思う。

 

どの作品も強さのある女で好きだけど「突然炎のごとく」のカトリーヌは

何度か見たけど苦手。

女1人、男2人で愉快に繰り広げる関係性は楽しかったし、自由奔放で

キュートな笑顔は魅力的だけど、あざとく男を翻弄して破滅させ、

(特にラストは許せない)エゴイスティックで好きになれないキャラクター

だったな。

 

不機嫌そうなへの字口の顔が苦手という人も多く(本人もいわゆる美人

タイプでないことは自覚してたみたいだけど、恋多き女でモテたらしい)、

日本で人気の高いBBやアンナ・カリーナのような愛くるしいアイコン

タイプではないけど、媚びなくて強い女性というイメージ。

見ようによって美女な時と、おばさんぽい表情の時の差が激しく、

仏頂面顔で怖い印象もあれば、笑顔はとてもチャーミングで、

「天使の入江」の笑顔もとても素敵だった。

新たな出演作はもう見られないけれど、今後も過去作品を見続けたい。

 

 

今年は特にフランス映画界の著名人の訃報が続き、10月は特に多かった。

前の記事でも書いたアンヌ・ヴィアゼムスキーの訃報の数日後には

ジャン・ロシュフォール氏の訃報顔

 

 

髪結いの亭主」が特に著名だけど、多数のルコント作品で「タンゴ

タンデム」のようなドタバタコメディ、「列車に乗った男」のような

渋い老紳士など、面白さと哀愁を併せ持つ味わいのある喜劇俳優、

品の良いムッシューで大好きだった。

昔劇場で見た「ポリー・マグー」にも出てたみたいだけど、

映画のビジュアルはカッコ良かったけど爆睡でほとんど覚えてなくて、

ロシュフォールの出演記憶も全然ない。

もう一度見直したいのだけど、レンタルがないので無理そう。。

ダニエル・ダリューも同月半ばに亡くなり(ご高齢で大往生だけど)

とにかく訃報が続いている。

 

好きな俳優や好きな(あるいは思い入れのある)映画に出演した俳優、

監督、著名人の訃報を聞く度に、他人のことながらまるで身近な人が

亡くなったような、不安なドキドキした感情になります。

高齢になったお気に入りの著名人たちも、亡くなってもおかしくない

年齢なので緊張感が伴い、少しでも長く彼らの活躍を見続けたいという

気持ちがより強くなっています。