LARME 013号 連載シネマ5. シェルブールの雨傘 | la petite chambre

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illustrator ree*rosee art works

続いて「LARME」13号 、巻末のシネマイラストページ。
今回は秋冬ファッションをテーマにした「シェルブールの雨傘
について描きました。

随分前に「ロシュフォールの恋人たち」について描いたので、
「シェルブール」の方も描きたいと思い続けて数年越しで
ようやく実現しましたありがちなキラキラ
(次は「ロバと王女」を描きたいけどいつになることか…?)

LARME 013号 cinema fashion room vol.5  シェルブールの雨傘 / Les Parapluies de Cherbourg
cherbourg

 


詳細は本誌でチェックしていただきたいと思いますが、補足を。

どのファッションもシンプルながら、色やデザインが素敵ですキラキラ
他の映画でも言えることですが、絵を描く為に観察していると、
同じデザインで色違いのものが何度か登場することに気付きます。
上の白いコートと同じ型のピンクのコートも一瞬登場して
(右下の水色のノースリーブ・ワンピースに羽織っていて、
このノースリーブワンピも白の同じ型を別のシーンで着用)
ハイウェストのドレス型コートのフォルムや丸襟が可愛いキラキラ

少女から妊婦、マダムになるヒロインの変化がファッションと
共にヘアスタイルにも表れています。
トップで結んだリボンのマドモワゼル・スタイルは若々しくて
キュート、妊婦になってからはセンターパーツで耳を出さない
一つ結びもフォルムが美しい。
ラストの黒尽くめなブルジョワファッションは「昼顔」での
マダムな彼女を思い出します。盛りヘア・マダムスタイルだけど
リボン留め(カチューシャ?)に可愛さあり♡

大きな花柄のブルーが美しいマタニティドレスは、彼女の寝室の
壁紙に似ているので合わせたのかな。
フェミニンな壁紙やインテリアは、美術担当ベルナール・エヴァン
によるもの。
ジャック・ドゥミのデザイン学校時代の同級生で、多くのドゥミ
作品の美術担当を手掛け、それ以外にも数々の名だたるお洒落
フランス映画(私の好きな作品もたくさん!)にも携わった方
だそうです♡


※以下、映画の内容的ネタバレ含む

***
これ言っちゃあ元も子もないけれど…
恋人ギイが戦地に赴任後すぐに妊娠し、戦地から
戻って来れるか
わからないあの時代に、シングルマザーになる
かもしれない不安が
大きかったと思うけど、実質
離れていた期間は1年くらいでした。
本気で愛しているなら何故
待てなかったのか、時代が今とは違うのと
色んな状況が重なって
仕方なかったのでしょうか。。

タイミング良く(悪く?)現れた裕福な男性に見初められ求婚され、
経営危機の店を持つ母親に遠回しに唆され、その影響もあって、
心が揺れて、自身の判断が見えなくなってしまったのかもしれない。

最終的には自己決断した人生を選んだものの、ラストシーンで
再会したギイに「今幸せ?」と確認し「ああ、幸せだよ」と返され、
虚しさのある表情を浮かべたのが物哀しかったです。
一方的に去られたギイは悲しみを乗り越え自分を支えてくれた
パートナーと再出発した人生を歩んでいたのに対し、去った側の
ジュヌヴィエーヴは家の為に犠牲になって(その原因となる母も
間もなく亡くなる)未練があるように見えました。

***

ジャック・ドゥミ展で印象的だったドゥミの言葉の引用。
「『シェルブール~』は戦争に反対し不在に反対し、幸せをぶち壊す
嫌悪すべきものすべてに反対する映画」であり「結婚の悲劇を描いた」
映画だそう。
ジュヌヴィエーヴの母親は、最終決断は娘に託しているけれど、
娘の気持ちや幸せより、経済的に自分たちを守ってくれる好都合な
カサールに娘を差し出す、利己的な人物として描かれたようです。


もう一つ印象的だった展示でメモした言葉(どの映画に関してか
うろ覚えですが…)
「深刻な問題を扱う軽い映画の方が軽い問題を扱う深刻な映画よりも
価値がある」

ちなみに、ラストシーンで車に乗ってる少女(ジュヌヴィエーヴの娘)
はドゥミ監督の義娘(アニエス・ヴァルダの連れ子)だそうです。
このエピソードについては
こちらのテキストから知り、他にも
各映画のキャラクターへの監督自身の想いや反映についても
考察された面白い記事なので、ぜひチェックしてみて欲しいです。


本誌でも触れましたが、ドゥミの長編デビュー作「ローラ」で
長年ローラに片想いしていたロラン
は「シェルブール」で
ジュヌヴィエーヴに求婚する紳士カサールとして再登場します。
「ロシュフォール」ですれ違ったドヌーヴとジャック・ペランは
ロバと王女」で新たなキャラクターで再会します。

「ローラ」がナントで待ち続けた夫ミシェルは「天使の入江」で
悪女ヒロイン(ジャンヌ・モロー)に惚れてローラの元を去った
という設定だったらしく(←解説によれば)、傷心のローラが
渡米したLAを舞台にした続編「モデル・ショップ」へと繋がる…
様々な作品がリンクしているのが興味深いです。

 

 

lolapeau
「ローラ」               「ロバと王女」

 

 

angelmodelshop
「天使の入江」             「モデル・ショップ」
 

 

 

 

ドゥミ映画に限らず、ヌーヴェルヴァーグ作品では他の監督の作品で
キャストのカメオ出演やパロディなど、繋がりのあるエピソードが多く、
見る度に新たな発見が楽しみでもあります。


ジャック・ドゥミ展を通して、作品だけでなく監督自身に関しても
新たな発見が多かったので、次の記事(ブログ)でもう少し掘り下げて
追加感想を書いてみたいと思います。

 

ガーランドガーランド ガーランドガーランド ガーランドガーランド ガーランドガーランド ガーランドガーランド 
実は「グランド・ブダペスト・ホテル」DVD発売に合わせ、
当初この映画でのシネマイラストのテーマ案があったのですが、
本誌の別企画がクローズアップされた経緯で(AMOちゃんの
グランドブダペスト・キャラクター6変化、可愛かったですね♡)
この企画の代わりに、元々準備していた「シェルブール」になりました。

今回はブダペスト~が描けず残念でしたが、ちょうどドゥミ展を
見たところでドゥミ熱が高まってたのでタイミング良かったかなと
思います。
ブダペスト~も描きたいテーマなので、いつか改めて描けたら…と
思います星のステッキ星