と、よく声を掛けていたら、健康上の問題を抱えているのかと心配されたそうだ。
日本人はよく天気や気分のことを話題にするが、それは気遣いがあるからだろう。
気の字は、意識や心の動き、気分、気体、雰囲気など、非常に多義に使われる。
気の字の付く熟語や慣用句は、なんと360以上もある。
日本人は気に関して特別繊細な感覚と気風があるのかもしれない。
というわけで気が多い詩と逸話です。気兼ねなく気休めにお読みください。(笑)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『雨ニモ気バラズ 風ニモ気ガノラズ』
宮澤賢治の『雨ニモマケズ』の詩のもじりです。「気」の字が付く言葉をちょうど70個入れました。
雨にも気が向かず
風にも気が進まず
雪にも夏の暑さにも気が散らぬ
気癪なからだをもち
気概はなく気鋭もなく
決して気が大きくならず
いつも気弱に気恥ずかしがっている
気合を入れて玄米四合と
味噌と少しの野菜に食い気を出し
あらゆることを気に病み
気を抜き 気合を入れず
よく気が詰まり 気が散り
そして気晴らしをせず
野原の松の気の蔭の
気がつまる小さな小屋にいて
東に 気を揉むほど気難しい子どもあれば
気さくに行って 気が狂うほど気が済むまで叱りつけ
西に 気がふれるほど気が変になる気味悪い母あれば
気おくれしつつ行って 陰気と邪気と妖気を吸って気絶し
南に 色気と洒落っ気ある気取った浮気女あれば
気安く行って 気が高ぶる気が遠くなる気もそぞろ と気を持たせ
北に 気が引けるほど気掛かりな景気よき雰囲気あれば
気はこころ 気前よく気張って金よこせ と気を吐き
陰気殺気 また嫌気怖気の気配あれば 涙をながし
気が重い足は 芝居気たっぷりにオロオロあるき
みんなに 無気力気ままなデクノボーとよばれ
気味悪い 気色悪い不気味 と断固ほめられもせず
気にもされず気にも留められず
そういう気が利かない気の毒な者とは
わたしは気が合わない気にくわない気が腐る気が滅入る
※他にも、気疲れ、気が差す、気にするなど、ネガティブな意味合いのほうが多いですね。
これは冗談ですので、『雨ニモマケズ』の原作で、お目目直しをぜひどうぞ。→ 青空文庫
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
“気”の持ちようで、悪行雑言は気にならなくなる。
世の中には時々、辛辣な言葉を平気で言う陰気な気性の者がいる。
そうするのは、優越感を抱けて、気慰みになるからかもしれない。
そうしなければ、潜在的な劣等感が拭えず、気落ちするからかもしれない
そうすれば相手が気を悪くするだろうという気遣いが薄いせいかもしれない。
ひとから嫌な言葉を投げかけられたときは、釈迦の逸話を思い出すといい。
あるバラモン教の僧が、釈迦に向かって非難の言葉をこれでもかと投げつけた。
釈迦が平然としているので、弟子が不思議に思い、なぜ怒らないのか訊ねたら、
釈迦がこう言った。
「おまえが持っているものを私に投げようとして、私が受け取らなかったなら、
おまえの持っているものはどうなるか」
「私の手元にあります」と弟子が答えた。
「そうだ。悪口も受け取らなければ、いつまでも相手のなかに留まりつづける。
悪口を言われて腹が立つのは、自分が受け取ったからだ」
イエスの「右の頬を平手打ちされたら、左の頬を出しなさい」の言葉も似ている。
平手打ちとは身体を痛めつけるためではなく、侮辱したり、挑発するためにする。
つまり無抵抗であれの意ではなく、挑発に乗らずに受け流せと言われているのだ。
誰かが悪口を投げつけてきても、受け取る気がなければ感情は乱されません。
自分の感情は、自分の気の持ちようで変えられる――――。
これは少しは気がまぎれる話ではありませんか。
学校でのいじめ。仕事でのパワハラ。おとなしくて弱い立場だと言葉の暴力を受けることがあります。
言い返すと却って事態が悪くなるのなら、軽く受け流し、相手を哀れだなあと思うこともできますね。
※絵は、エドワード・バーン=ジョーンズ(1833-1898)。本文に関係なく使わせていただいています。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
これは少しは気がまぎれる話ではありませんか。
学校でのいじめ。仕事でのパワハラ。おとなしくて弱い立場だと言葉の暴力を受けることがあります。
言い返すと却って事態が悪くなるのなら、軽く受け流し、相手を哀れだなあと思うこともできますね。
※絵は、エドワード・バーン=ジョーンズ(1833-1898)。本文に関係なく使わせていただいています。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――