小惑星アポフィス地球大接近シミュの
やっと、第2回目です。
前回は、アポフィスの軌道の概要について書き
ましたが、今回は、2029年にどのように地球に
近づいてくるのか、なるべくグラフィックを拡大
して、その様子を探っていきたいと思います。
その前にアポフィスそのもののデータを見てみま
しょう。
直径 325m
自転周期 30.4時間
公転周期 323.53日
絶対等級 19.7
アルベド(反射能)0.23
この中で最も気になるのが、大きさ(直径)です。
325mというと、そんなに大きくない印象ですが、
もし、これが地球に衝突したらどうなるのでしょ
うか?
比較する事例として、1908年シベリアのツングー
スカ大爆発事件を調べますと、直径が約50mの
天体が降ってきて、その衝突エネルギーがTNT
火薬換算10~15メガトンと推定されています。
これは広島型原爆1000個以上分の爆発があった
ということです。
その音響は1000km先でも聞こえ、爆発の衝撃
波は地球を3周しました。また、2000平方kmの
森林が焼失、約1000頭のトナカイが焼け死んだと
されています。
一方、アポフィスの直径は約325mですので、
ツングースカ隕石の6.5倍です。
すると体積は6.5×6.5×6.5で275倍となり、
衝撃力は重量に比例しますので、成分と衝突速度
が同じと仮定すると破壊力も275倍になると思わ
れます。
もう少し大きな、直径1kmの天体が衝突すれば、
半径60kmは跡形もなくなる(天文年鑑2021)
とのことです。
アポフィスはこれまで、地球への衝突の可能性が。
2029年、2036年、2068年と予想されましたが、
幸いなことに、NASAの研究者が100年間は衝
突はないと発表しました。
今回のシミュレーションでは、このような地球接
近天体(地球近傍天体)がどのように接近してく
るのか、その一例として示せればと思って取り組
んでいます。
まず、シミュレーションで採用したアポフィスの
軌道要素は、「TheSkyLive」掲載のも
のです。
が、これをそのままインプットしても、地球接近
はなかなか起こりません。
今から7年後まで軌道要素が一定ではないことも
原因の一つではないかとも考えられますが、
もともと、天体の地球接近というシチュエーション
は、針の穴を通すような精密な計算が求められると
思います。
また、今回の接近では、アポフィスが地球重力作用
圏まで入ってくるので、ある期間は太陽との重力関
係が薄くなり、「月」のように地球重力との関係が
強まるということも計算を困難にしています。
下のグラフは、アポフィスが、いつ地球の重力作用圏
(93万km)に入ってくるか予想したものです。
最接近の2日前から入ってくることがわかります。
以上のことから、今回のシミュレーションでは、軌道
の形は変えず、「軌道元期の数値を調整しながら、
NASAが発表した接近距離までアポフィスを近づけ
てみる。」という方法でやってみたいと思います。
NASAが発表している地球接近は、「2029年
4月13日(日本では14日)に地表32000km
まで接近する。」というものです。
地表32000kmということなので、
地心距離38378km
(32000+赤道半径6378km)になるようにします。
結果的には軌道元期を、1.483317日だけ減じること
で、軌道の形を変えず、地球への接近のタイミングを
少し早めて目標の接近距離に到達することができました。
私としては、「いい感じ」に仕上がったと思います。
(笑)
では、その結果をグラフィックで表示していきます。
いろいろと表示させた結果、接近9時間前から3時間
ごとの変化を示すことにしました。
まず、太陽座標系での運動を拡大して表示します。
これが、前回も書きました、「顕微鏡で太陽系を覗く」
という感覚です。
いかに地球がちっぽけなものか実感してきます。
地球の大きさは実スケールですが、まだ小さいです。
この図を見ると、上から下へ地球とアポフィスがまるで
競走しながらお互いに接近していくのがわかります。
最初はアポフィスが先行して、地球が追い抜いた瞬間が
最接近となります。
例えて言いますと、ゆるやかな左カーブのハイウエイ
で地球車が、右側車線を走行中のアポフィス車を追い
越した瞬間、アポフィス車が気づいて増速しながら
インサイドに入り込み追い込んだが、あと一歩のとこ
ろで地球車が逃げ切って振り切ったぞ!という感じ
です。
次に地球を固定してみた場合を上方(北側)からと
横からに分けて表示します。3時間ごとの時刻
(日本標準時)と地心距離も表示しています。
地球の大きさは実スケールです。前の図よりは実感
が出ると思います。
このシミュレーションで、最接近の日時は日本時間
で2029年4月14日3時51分ということになります。
●地球を中心に上(北)側から見た位置変化
この図をみると、アポフィスが逆行(東から西へ)して
地球に接近することがわかります。
日々の「月」の移動とは逆方向です。
●地球を中心に横(秋分点)側から見た位置変化
この図は、地球軌道面の真横からですので、アポフィス
の軌道の傾斜角がよくわかります。
(上の図の左側から見たもの)
地球の南半球側から北上していくのがわかります。
次回は、このアポフィスの大接近が、地上からどのよう
に見えるか。どの程度明るくなるのかグラフィックで表示
していきたいと思います。
当然、場所によって見える時刻や天球上での位置が変わって
きます。
乞う、ご期待!!
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