ノマー・ガルシアパーラ
1973年7月23日に、メキシコ人の両親の間に生まれる。ノマー（Nomar）という名前は、父親のラモン（Ramon）が自分の名前をひっくり返したことから取っているそうです。
打席に向かう時やベンチに戻る時などは決まった足から踏み出し、決まった足取りで行き来。階段も決まった足取りで昇り降りし、ベンチに戻ると決まった手順でグラブにタッチ。最も有名なのが打席での動作で、打席ごとにではなく1球ごとにバッティンググローブやプロテクターを絞め、スパイクのつま先を地面にトントンとする動作。
友人でもあるジーターは打席での一連の動作を "too long" （「長すぎるよ」）と評したが、ガルシアパーラ本人は「僕は何を言われてもいいんだ。あれで効果があるわけだから」と、意に介さず。外角に強く強靭なリストで引っ張ることを好み、2000年には最多敬遠を記録するほどの打者が、2001年の手首の故障以来本来の打撃が影をひそめます。
カリフォルニア州ベルフラワーのセント・ジョン・ボスコ高校に入学後、1991年にハイスクルー・リーグの最優秀選手に選出され、ミルウォーキー・ブルワーズからドラフト5巡目（全体130位）で指名されたが、契約せずジョージア工科大学へ進学。1992年 にはバルセロナオリンピック のアメリカ代表として出場。1994年のドラフトでボストン・レッドソックスから1巡目指名を受け入団。
1996年にメジャーデビューを果たし、この年は打率2割4分1厘、4本塁打、16打点を記録。遊撃手として153試合に出場。7月26日から8月29日にかけて30試合連続安打を達成し、ガイ・カートライトのリーグ新人記録を54年ぶりに更新し、球団史上トリス・スピーカーに次ぐ歴代2位。1番打者としてのメジャー記録となる98打点を挙げ、30本塁打は遊撃手としての新人記録 。リーグ最多の209安打のジョニー・ペスキー の球団新人記録を55年ぶりに更新し、365塁打はテッド・ウィリアムズ の球団新人記録を58年ぶりに更新。
守備での貢献も多く、新人王を満票で受賞 。1998年には打率3割2分3厘、35本塁打、122打点とさらに成績を伸ばし、MVP投票では2位。
1999年は打率3割5分7厘、27本塁打、104打点を記録し、首位打者のタイトルを獲得。2000年は打率3割7分2厘を記録して2年連続で首位打者となり、20敬遠もリーグ最多。この頃のガルシアパーラは、アレックス・ロドリゲス （マリナーズ→レンジャーズ→ヤンキース）やデレック・ジーター （ヤンキース）とともに、実力・若さ・容貌を兼ね備えたスター遊撃手として人気を博します 。
2001年は手首を痛めて、7月29日にシーズン初出場。ガルシアパーラは当初「手術で100％完治するという保証はどこにもない」と、患部をギプスで固定して自然治癒力に任せる方法で治そうとしたが、結局手術。
その後、8月26日を最後に再び欠場し、この年は21試合出場。翌2002年に打率3割1分、24本塁打、120打点、56二塁打（遊撃手史上最多）を記録して復活。
2003年3月に、レッドソックスはガルシアパーラに4年6,000万ドルでの契約延長をオファーしたが、これに対しガルシアパーラは4年6,800万ドルを要求したため、契約延長交渉は決裂。迎えたシーズンでガルシアパーラは打率3割1厘、28本塁打、105打点という成績を収め、またシーズン終了後の11月23日には有名女子サッカー選手のミア・ハムと結婚。公私とも充実し、米国の「スポーツセレブリティーの顔」ともいえる存在に。しかし契約延長交渉はシーズン終了後も不調に終わり、球団はガルシアパーラ放出の検討開始。
2004年、レッドソックスはガルシアパーラの後釜としてアレックス・ロドリゲスの獲得を狙い、ロドリゲスとマニー・ラミレス とのトレードで獲得し、ガルシアパーラはマグリオ・オルドニェスとのトレードでシカゴ・ホワイトソックスへ放出する計画が水面下で動きます。ロドリゲスとラミレスのトレードが選手会の反対で頓挫し、この計画は実現しなかったが、シーズン前に右アキレス腱を痛めて開幕を故障者リストで迎えたガルシアパーラは心身ともに傷つきます。
6月9日に復帰しましたが、怪我のせいもあり守備での動きの悪さが目立ち始めます 。守備のミスから不要な失点を重ね、非自責点の多さが7月末時点でリーグワーストになっていたレッドソックスは、守備の名手を獲得するためトレードを画策。また、7月1日のヤンキース戦で、ジーターが観客席に頭から突っ込んで顔面を強打しながらボールを捕ったプレイを見せたのに対して、ガルシアパーラはベンチに座ったまま動かなかったため、ガルシアパーラを支持するファンも減少 。7月31日、ガルシアパーラは四角トレードでシカゴ・カブスに放出。
トレード翌日の8月1日、ガルシアパーラはカブスの本拠地リグレー・フィールドでのフィリーズ戦で新天地でのキャリアをスタートさせ、10月3日にシーズンが終了するまで43試合に出場。打率2割9分7厘、4本塁打、20打点を記録。
ガルシアパーラを放出したレッドソックスは、前述の四角トレードでエクスポズからオーランド・カブレラ
遊撃手を、ツインズからダグ・ミントケイビッチ一塁手を獲得。ゴールドグラブ賞 受賞経験者2人が加入したことで守備が改善され投手陣も成績が向上、また球団や地元マスコミと確執があったガルシアパーラがいなくなったことでチームから火種
が消えるなど、チームの状況が好転。この年、レッドソックスは86年ぶりの世界一
を達成。
シーズン終了後、ガルシアパーラはFAに。しかし、打撃で平凡な成績しか残せず守備も急激に衰えていたうえ、カブレラやエドガー・レンテリアなど他の有力遊撃手もFAとなっていたため、結局1年825万ドル
でカブスに残留。2005年シーズン、故障に悩まされたガルシアパーラの出場試合数は62試合にとどまり、三塁手としての34試合に出場。限界説が囁かれるようになり、カブスもシーズン終了後に再契約のオファーを見送り。
シーズン終了後、守備経験はないが負担の軽い一塁手や外野手として移籍先を探し、12月19日に1年600万ドルでドジャースと契約。2006年は、両親がメキシコ人であることから、MLBのシーズン前に開催されるワールド・ベースボール・クラシックにメキシコ代表として出場を打診されたが、シーズンに集中したいと出場辞退。シーズンでは、開幕当初は故障者リスト、4月22日に戦列復帰してからは早いカウントから好きなボールを的確にとらえる打撃が復活し、打率3割3厘、20本塁打、93打点をマークし、30三振・42四球と好打者に見られる四球が三振を上回る逆転現象 。9月18日のパドレス戦では9回に4者連続本塁打で追いつき、延長10回はサヨナラ弾などの劇的な一打を連発。このとき登板していたのは斎藤隆投手で、１人がHRを打つたびに、「俺があそこで抑えていれば点差は縮まったのに・・・。また打った！ああ、抑えていれば同点だったのに・・・。何でこんな辛い目に・・・」と思ったそうですが、ガルシアパーラや周りの選手が「お前がいたからここまで来れた！顔を上げろ！」と励まされたそう。斎藤投手が顔を挙げられなかった本当の理由は？シーズン終了後にはカムバック賞を受賞。
11月に2年1,850万ドルでドジャースと契約延長。2007年は、シーズン途中で若手のジェームズ・ローニーに一塁のポジションを譲って自身は三塁手となり、前年とほぼ同じ試合数に出場したが6本塁打どまり。
3月6日、オークランド・アスレチックスと1年契約するも結果を残せず。
2010年3月10日、1日だけレッドソックスとマイナー契約を結び、レッドソックスの選手として引退。
怪我などもあり衰えが早くきた感があります。統計家ビル・ジェームズが９８年に生涯成績を予測しました。それによると、ガルシアパーラは３５１７安打５５２本塁打を達成すると予測されていました。通算成績でははるかにおよばないものの、ところどころで見せる勝負強さは魅力的。怪我をする前は肩も強く、広い守備範囲を誇っていましたし、打撃でも１試合で２本のグランドスラムを放つなど力強いバッティングを見せてくれていました。