敵基地攻撃能力に限らず日本の軍備、装備品の選択は巨大なフィクションの上に成り立っていると思う。

 「中国やロシア、北朝鮮のミサイル攻撃に対しての迎撃システムや航空戦力の増強が必要だ」などはワイドショーや軍事大好きyoutubeチャンネルにありがちな論説だ。小川さんが書いているように周辺国が自国の利益を考えたとき、日本に向けてミサイルを撃つのはコストに合わない。そんなこと各国の現状や歴史に学んで少し考えればわかると思う。戦争行為は国にとって人的にも経済的にも負担の大きい大バジェットな企画なのに、戦争当時の帝国軍部のように空気に抗えないような決定プロセスというのが非常に情緒的で懐疑的だ。

 とくに現代の戦争といえば航空戦力にしても地上戦闘にしても実際の兵士が最前線に出向き行う消耗戦が中心。アメリカのアフガン侵攻に代表される戦争行為は軍産複合体と軍属の存続のためにあるという研究結果もある。技術的に可能であろうAI搭載ミサイルやドローンなどによる遠隔操作戦闘は限定的だ。

 どの国にもミリタリストというのはいると思うが、日本では誰がどのような決済過程を経て購入を決めているのかはなはだ疑問の装備品が多い(もちろん防衛省官僚と自衛隊上級幹部、そして自衛隊退役系議員を中心に与党が決めている)。どこにも設置できないうえに効果的な防衛機能があるのか疑問のイージス・アショアだったり、アメリカでは酷評のオスプレイを高額で買ったり、同じくアメリカでは退役間近のリモコン飛行機グローバルホークを定価購入したりと、何から誰を守ろうとしているのかわからない。

 現在的には飛行機や戦車よりサイバー戦を高度化することが国益を守るのだと思う。デジタル庁も結構だが、情報戦に弱ければせっかくの迎撃システムもF35のミッションネットワークも宝の持ち腐れだ。

 前述のイージス・アショアだけではないが、国内にあるPAC3やペイトリオットといったミサイル迎撃システムにしても、どの国がどんな機体にどんなミサイルを何発搭載して攻撃してくることを想定しているのか偉い人に聞いてみたい。飛んできたミサイルを撃ち落とすにしても、実弾演習がアメリカでしかできないことを考えれば撃墜精度は非常に疑わしい。

 つまり自衛隊の装備品はある種のデモンストレーション的価値も付与されていると思う。自衛隊は“解釈”されていない本来の憲法によって防衛以外の他国との交戦を認められていないのだから、装備品の選択はその範疇によるものに“決まっている”のだ。それゆえに情緒や空気ではなく理性と科学でその判断をしてほしい。巨額な予算が動くものなのだから、我々庶民にしても宮台真司が言うところの「日本人の劣等性」的なものに抗って少しでもマシな選択をしたい、と思う。