私にとって金字塔のような作品です。なにがそれほど私の心に引っかかったかといえば、それは俳優のみなさんの「山椒のようにピリッとする」演技です。存在感といってもいいかもしれません。本放送当時の私は中学生だったので、今も心に残っているということは、よほど感覚的に刺さったのだと思います。
 その演技の秀逸さは田宮二郎や山本学だけでなく、いわゆる端役といわれる俳優陣に強く感じられます。演出も昔の作品だけに荒っぽさも感じますが、すごくエネルギッシュでした。小沢栄太郎や金子信雄、曽我迺家明蝶などは私にとってキラ星のような存在感です「金か、金ならナンボでも出したる」。この人達がヒールを演じていたから素晴らしいドラマなんです(断言)。今時、こんな濃い、仁丹の匂いが伝わってくるようなリアリティのあるオヤジ俳優や演技にはナカナカお目にかかれません。他にも理想を追求したあげく大学病院にいられなくなった里見医師の兄役の岡田英次も枯れた中年を素晴らしく演じていました。そうそう、印象的なバイプレイヤーとして若かりし頃の堀内正美も忘れられません。私的名台詞は第一外科医局の財前シンパに向かって言った「オマエたちこそ里見先生の爪の垢でも煎じて飲んだらどうだ!」青臭くて最高です(この1巻には収録されてませんけど…)。
 女優陣もステキです。どう見てもホステスにしか見えない大地喜和子が(本当に元看護婦のホステス役なのだけど)財前に対しては異性としての魅力に加え医師としての尊敬や母性愛、そして実の母親を含めた家族愛まで慈愛に満ちた女を演じていて思わず唸ります。初々しいイメージの島田陽子は世間知らず風の演技が似合っているし、清貧な里見医師の家庭を守る女房役(医師家庭のお嬢さんだから、生真面目な里見をもどかしい思いで見つめているんですね)上村香子の昭和の女的な魅力とか。まだまだあります。裁判の勝敗を握り、第一外科医師として将来が約束されている柳沢医師に“実弾”としてぶつけられる有名薬局の娘、野田華子のプチ肉食っぽい迫り方などは、もう……
 だめだ、魅力が多すぎてキリが無い!
 ちなみに私は平成版も好きです。別物として完成度が高いと思います。そもそもリメイクの多い本作ですが、リメイクものとして珍しい成功例だと思います。