「機動警察パトレイバー2 the Movie(以下、パトレイバー2)」で南雲しのぶを演じた榊原良子。この作品が南雲と後藤喜一、そして柘植行人を中心としたドラマであることから彼女の演技のウエイトはすごく重いと思う。それゆえに有名になった榊原さんのブログ

 

 

は彼女の役への向き合い方が非常によくわかる興味深いものだった。

 押井と演技に関して考え方の相違があったのは事実だと思う。演出家と俳優が一つのキャラクターの表現を巡ってぶつかることは少なくないと思うし、そうやって作り上げる現場もあると思う。伝え知る限りこの時は役を作り上げるほどのディスカッションは無かったようだが「袂を分かつ」は大げさというか、話を面白くしたい人の悪意が感じられる。あくまで榊原さんが演技プランを提示してそれが却下された。それだけの事実があっただけだと思う。

 これは立場の違いもあると思うが押井が世界の構築を優先してキャラクター造形をステロタイプにしすぎた感じは拭い去れない。榊原さんが創造する南雲しのぶは深い。複雑なコンプレックスを背負った女の仕草まで表現しようとしている。

 自分的には「パトレイバー2」は大人のラブ・ストーリーが入っている知能犯の捕物帳だと考える。ラストの柘植の逮捕シーンにふたりの手の動きがアップで描写されるシーンがあるなど、押井にしてもその要素は否定できないだろう。

 そしてそれを強く印象付けているのが榊原良子の演技なのだ。アニメは多くが先にビジュアルがあり、声の演技を後から加える作り方が一般的。つまり演者の仕事である「声」は条件付きの表現ということになる。榊原さんがこだわるポイントは多々あるが、中でも「間」を追求する姿勢は驚くほどの探究心が感じられる。そう、セリフとセリフの間は俳優がコントロールできる数少ない領域だ。しかしそれとて絵の動きを外してまでは自由にはならない。

 願わくば「あなたを、逮捕します」の前に〝引き〟の止め絵でもいいから24コマつまり1秒挟み込んだディレクションbyアクトレス・カットを観てみたかった。しかし、これは押井の作品だから完成したもの以外は存在しない。

 この時の榊原さんは〝自分のプランを通すことが物理的に無理だとはわかっていながら、役者として考え導いた結論〟を言わずにおれなかったのだと思う。彼女にとっては当たり前なのかもしれないが、映像になっていないシーンまで想像してキャラクターをつかもうとしていたのだから、微細な「間」の違いも気になると思う。

 

 彼女を最初に意識したのが1982年の劇場版「SPACE ADVENTURE コブラ」のアーマロイド・レディ。新人ながらコブラ役の野沢那智が絶賛するなど破格の扱いだった。まだ20代前半の若い女優による落ち着いた大人の女の演技というギャップもあり、まだ経験値の少ない高校生のオレは当時かなりドキドキした。それ以来、官能的な大人の女の演技ができる俳優は高島雅羅や武藤礼子を抜いて榊原良子が最上位となった。

 あ、最上位は池田昌子だった。すいません。