成長期における文学の役割は、閉塞して生きにくい日常を突破する熱を表現すること……のようなことを村上龍が自著の末文に書いていましたが、まさにこの作品は成長期が終わる頃の空気をうまく映画にしていると思います。
私のようなウカツな東京人は宇都宮へ行くと無責任に「ここは自然が残っていていいな」などと言いがちです。しかしそれは日常的に村社会的な小さなコミュニティの中で、単調で殺風景な環境をバックに気を使いながら生きていく現実を知らない寝ぼけた観光客のタワ言でしょう。
印象に残ったのは、そんな郊外の窒息しそうな雰囲気が各所に感じられたことです。例えば満夫の祖母、原泉さんが演じる認知症ぶり。あの意思疎通が困難だけど、家族だから粗末に扱うワケにはいかない老人が生活の中に存在する(若者目線の)不条理さ。普通に恋愛をするには家族や友人、ご近所さんとの距離がやたらと近い“やるせなさ”。まぁ、それが実家に住み続けるってことですけど……
私が物語の時代を少し知っていることもありますが、そんな主人公たちのイライラやチョットした嬉しさが映像から感じられて楽しく観れました。
追記:ケーシー高峰のキャラは最高に面白かった。彼と藤田弓子の2人だけはマンガみたいに見えました。
