皮肉のきいた“観察”エンタテイメントだと思います。コメディとしても出来が良い。カメラ位置、構成が素晴らしく、笑いとともに脱力感に襲われます。
ドブ板という、いわゆる昔から続く選挙スタイルを踏襲する先輩議員、主人公の選挙事務所とそのスタッフ。志や強い動機というより成り行きで出馬したとしか思えない落下傘候補の主人公は、彼らから怒られ続け、それでもひたすら指示に従い、さして選挙にも候補者にも興味の無い通りがかりの人々に握手を求めます。
「なんだかバカなことやってるなぁ」と思う反面、このドブ板が効果を発揮しているのも事実です。景気低迷が続く最近は少し変わってきたかもしれませんが、高齢者増加と閉鎖的コミュニティが継続する地方においては、冷静な現状分析より旧体制の価値観や大マスコミの影響が根強いのだと思います。大統領選のオバマ陣営のようにツイッターの活用どころか、webでの選挙活動にすらキツい制限があり、識者が言う理想の近代的選挙という姿になるにはまだ時間がかかるでしょう。
気持ち悪くもリアリティがあって面白かったのが主人公の選挙事務所にいる面々です。先輩議員を除いてこのスタッフのみなさんが普段何を生業としているのか知りませんが、(ドブ板)選挙に関しては自分たちが巧者であるというメンタリティは笑えます。そして極めつけは「フォーマットに沿ってやっていれば間違いない」という彼らの予定調和的で疑いを持たない姿でしょう。
そして小泉フィーバーの中だったとはいえ、この主人公が当選してしまう事実から「旧体制依存から抜け出せない自分たち」が見えるような気がして脱力するのです。口当たりの良い発言だけに飛びつき、わかりやすい効果を十分な時間もかけずに期待して、大マスコミに踊らされるように短絡的な文句を言う。我々の多くがそんな“お子様”な有権者だから「ヤワラちゃんでも出しとけ」なのだと思います。
この作品を観て「こういう選挙の片棒を担いでいる」かもしれない危うさを自ら感じ『小沢批判なんかしてる場合じゃないだろ』と誰ともなくつぶやく今日この頃です。(2010年に書いたレビュー)