時期を誤れば、ただ漁夫の利を献上するだけに過ぎない。

客に解り易く、敵に解り難い。

それが為、誤りに相当期間気が付かなくなる。

自分の為にやっている事がそのまま他人の為になる。


故にこの手の遣り方は非常に効果がある。

壁の内の世界を知り、外の世界を知るに至る。

残りは壁をぶち破る事だけだ。

ただこの1点に集中する。


もうこれ以上のものも無いし、これ以下のものも無い。


解り易くて良い。


影はまだ消えてはいない。

新しい習慣を手に入れる事に成功する。

いずれそれは義務となって我が身を助けるであろう。

人間の生命力は規則正しい生活の中で、回復に向かう。

程好いリラックスと共に集中している。


取り巻く環境が変わり始めている。

何かが始まろうとしている。

少しずつ良いものが満ちてくる。

悪いものから開放されていく。

バラバラになっていたものが1つに集約されていく。

今では苦汁の遠回りにも、計り知れない価値を見出せる。


漸く清々しい朝を迎えようとしている。

行ける。

それはラブレターの様にも思えたし、私との間に一線を画す手紙の様にも思えた。

どちらにせよ、それはらしくない事をさせた様に見えたけれど、精一杯心を開こうとする想いが溢れんばかりに詰まっていた。

そこには私がずっと感じていたその人がいた。

私はその内容に喜びを感じ、彼女はそれを書き終える事が出来た事を喜んだ。


真面目で正直で優しくちょっとだけ高飛車でプライドの高い、そして聡明でか弱く美しい人。


私は彼女の幸せを心から望んでいる。

その事は同時に私の想いを留まらせる。

会社を辞めて自己の業を終了しても、滅んだ心が回復する事は無いであろう。

私の周りのあらゆる事象が快方に向かっていると言うのに。

そうする事で、むしろもっと息苦しい世界へ導かれる事は間違いない。

私がやるべきは、もっと過酷なギリギリの世界に再び戻り、私が私の為に遣り残した事を片付け、心の平穏を取り戻す事だ。


その為に、意志の力を要求する。

塗り潰せ。




この期に及んで何がそうさせるのかは解らないが、国内・海外企業からの問い合わせが徐々に増えてきている。

直販も僅かに上方修正。

そして私は引き際を覚悟する。

海外企業の後ろ盾を元に上位進軍するも良し。

上位へ譲り渡し見えない対価を得るも良し。


ただ1つ、窓口だけは我が手中に置いて。


そしてまた、上位連結の上、材料のみの販売とするも良し。

連合艦隊を用いて、新規の共同発注を開始するも良し。


目指したのは「マクドナルドはハンバーガー屋ではない」と言う事。


そこが一体何屋さんかは、誰にも解らない。

そうであってそうでないもの。

右のポケットから突っ込んで、左のポケットから出す。

それが本来の目的を達成する為の近道となるであろう。


重いと思えば重くなり、軽いと思えば軽くなる。

それが、重いか軽いかを決めるのは自分だけだ。

そうやって強い人間と弱い人間が生まれていく。

ウェイターがフォークとスプーンを片手で器用に使って、前菜を取り分けるようにして。


私は気丈な彼女の細い体に、少しの間だけもたれ掛かろうとしている。

そしてそれは多分、相手も同じだと思う。


その少しの間はもっと早くに来るべきだった。

それが救いだったのだから。


人間関係の結び付きとは、潜在意識での意味と意味の結び付きであるのだから。

嵐は去ったと確信した。

1ヵ月半程度続いたであろうか。

少なくとも今後3,4ヶ月は大丈夫そうだ。

こいつは、気が付くか否かは別にして、1年に2,3度は必ず誰の元にもやってくる。

不定期ではあるが、定期染みている。

ちゃんと感覚的な予兆もあるし、礼儀正しい奴ではある。


よくTV等で占い師が「何もしないでおきなさい。」と言っている時期であるが、実際には「そのまま滞在しておきなさい。」と言うのが正しいだろう。

今ではバイオリズムというものを経験的に知っている。

私はいつものように自発的な活動を停止し、広告費を献上するのを止める。

おかげで一日に2冊ずつ小説を購入していた。

出来る限り最低限の活動に抑えて慎ましく生活し、混乱の綻びだけを繕いながら。

それは、流れに身を任せるのではなく、留まる為の活動だった。


そして思うのである。

訳の解らない何かに、やっぱり人間は左右されているのだと。


またこうも思う。

この得体の知れない圧倒的な生き物のような何かと上手に付き合う術を忘れてしまったら、きっといとも簡単に飲み込まれてしまうんだろうと。


どっちにしろ、居心地の良い奴ではないな。

慣れない英語でシンガポールと交信中。

言葉のニュアンスが正確に伝わらないので、駆け引き無しの至ってシンプルな形で進行している。

その会社はシンガポール内のその手の業種では最も大きな企業の1つでweb上での情報の入手にさえ困る事は無かった。

作っているモノがどこの国でも売れるのが間違いない程に素晴らしく洗練されている。

そして、かなりの高級志向だ。

規模が合わないのだけれど、もうこうなると正直にそして素直に伝えるしかない。


彼らは我々の利用している材料が欲しいらしく、それを活用してデザイナー等と組んで製品を生産し顧客や建築主に供給したいらしい。

そして、さらに生産した製品の一部をこちらに納入する事を希望しているようだ。

コラボレーションしたいとはっきり明言してくれて、どうなるにせよ嬉しいものを感じた。


当初より断るつもりだったが、これを断ったら何を断らないんだというような、そんな申し出ではある。

問題は資金ではあるが、絶対に断ってはいけない気がする。

何かしらの形を共に生成するんだ。

自分らしさを抹殺する世界で自分らしく生きているふりをする。

自分らしさを忘れぬように。

填められた枷は思った以上に肉に食い込んで、容赦なく心身を蝕んでいく。

とうに苦痛が止む事は諦めて、まだ枷を外す事を諦めていない。

立ちはだかる大きな壁。


不自由さの中で私はカードを何度も引き直し、2ペアまで持ってきている。

ずっとフルハウス狙いだったが、あと1枚がなかなかやって来ない。

誰がどこから見ても疲れ果てている私。

紙一重の壁。


たった1チャンス、たった1年で人生など大きく変えられるものなのに、そいつはまだやって来ない。