冒険者を志したばかりのころ、冒険者の証明であるアイテムがとれなくて
ずっと足止めをくらっていた。
同じように不運だった二人と即席でパーティを組んだ。
狩場で出会うたびに成長を喜び合い、次第に仲良くなった。
頼る者もいない同士、そのうちなにをするにも三人一緒になった。
身を寄せ合う仲間、だった。
いつからだろう。
セナとユウの間に友情以上のものを感じるようになったのは。
いつからだろう。
自分の中にもユウへの友情以上の気持ちが芽生えていたのは。
左手が燃えるように熱い。
潮時、なんだろうか。
あの二人と離れて行動……
出来るだろうか?
さまざまな敵と戦ってきた。
三人でやっていくべく、無理と言われても戦士で盾をこなせるように努力した。
無理な編成なりに三人で工夫した。
失敗の多かった依頼も今ならなんだってこなせる。三人なら。
「それなのに…」
自分の思考とは別に、何者かの声が聞こえる。
「裏切られた。」
…。違う。
「自分一人のけものにされた」
違う。
「復讐したい…」
声は甘く、アイクの体に波紋のように広がる。
「自分の気持ちに気づきもしないあの二人に同じ苦しみを与えたい」
「違う!!!」
最後の否定の言葉は叫びとなって口をついてでた。
いつの間にか、眠ってしまっていたようだ。
静まり返った酒場に声だけがひびいた。
「大丈夫?」
目の前にいて、驚いたようにアイクをみやるミスラと目があう。
ミスラ…はずっと隣にいたのか…いや、むしろ、いつから…
何かを問いかけようと口を開いたアイクのほほに手を添える。
「大丈夫?」
ゆっくりと、言い聞かせるようにミスラが言った。
柔らかくふってくるその言葉に、アイクは二、三度まばたきする。
寝起きの頭はかすみがかったように思考がはっきりまとまらず、点が定まらない。
ただ
「大丈夫…」
繰り返すように答えるので精一杯だった。
「よかった。」
ミスラが甘くほほ笑む。
左手のアザがちりちりと疼くのを感じた。
続く