今日も美術室では、美術部員たちが各々の美術作品の完成に向けて没頭していた。
ハルもその一人だ。
思う色を出すのに苦戦し、パレットの上の絵の具と格闘していた。
「ハル先輩、またその絵ですか?」
水を換える用事でそばを通ったらしい後輩がハルに声をかけた。
「おう、柏木。これを今度のコンクールに出そうと思ってるからな。でもなかなか難しいよ」
「そうですか?もう充分素敵ですよ、この絵。私ここのグラデーションが好きです」
「ここか。確かにここはこだわったからなぁ」
後輩の素直な評価は嬉しい。
ハルはそのグラデーションの箇所をそっと優しく撫でた。
「‥先輩は、この色好きなんですか?」
「ああ、青が好きだ。だからこそ、濃淡で深みを出して、青だけでキャンバスを塗りたかったんだ」
「そう、なんですか」
伏し目がちになる後輩を、ハルはそのまま見つめ続けた。
「俺、青が好きなんだ」
「…さっき聞きましたよ、それ」
そんなやりとりを遮るように、「えーっと柏木さんいますかー?」と、部室の扉から後輩を呼ぶ声がした。
どうやら彼女のクラスメートだったらしく、後輩は軽く返事をして駆け寄っていった。
「アキちゃん、どうしたの?」
「ごめんねアオ、部活中に。借りてた宿題のノート、返し忘れてたからさ。助かったよ~ありがと・・・・って、アオこそどうしたの?顔が赤いよ?」
「えっ?!そう?な、なんでもないよ…」
後輩が去ってまた一人での作業に戻ったハルは、さっきの会話を思い出して苦笑した。
「色のこととして、なら、はっきり言えるんだけどな・・」
誰にも届かないような声でぼそっと呟くと、ハルはキャンバスに向き直った。
05022015