カランカラン、と扉の開いた音が響く。
いらっしゃいませー、と条件反射に口が動く。
手は空いたばかりのテーブルの清掃に忙しく動かしたまま。
あ、彼女だ。
「ブレンドのLと、うーんと…ハムエッグのサンドイッチ一つ、テイクアウトで」
「りょーかい。今日は少し早いんだね」
親父は俺の気持ちを代弁してくれた。
いつも通りの時間なら、俺が注文を受けられたのに。
「あ、今日は昨日の仕事が少し残ってて。早めに出勤してやらないといけないんです」
「おお、そりゃ大変だ」
親父はすぐお客さんとお喋りしたがる。
常連さんの多くはそれも楽しみの一つにしてくれているようで、有り難いことだ。
だが、彼女はあまり喋らないタイプだぞ、馴れ馴れしいぞ親父。
「はい、お待たせ。気をつけていってらっしゃい」
商品を受け取って扉へ向かう途中の彼女と、ぱっと目があった。
ずっと見ていたことがバレただろうかと肝を冷やしたが、そんなことは杞憂だったようだ、彼女は笑顔で会釈してくれた。
俺も思わず満面の笑みになる。
「ありがとうございましたー!」
カランカランと扉の鈴がなる。
「お前、ハリキリすぎだ」
親父の言葉は無視して、掃除の作業に戻った。
今日も良い一日になりそうだ。
≪幕間 -3- へ≫
15061720