Reddened -15ページ目

Reddened

stories, and so forth.






何もかもが静寂の中に身を潜めて、ただ月明かりだけが夜に存在を主張している。



「すまないね」



ごく小さな声で囁かれたはずなのに、妙に辺りへ響いた気がした。



「こんなことに君を巻き込んでしまって」



喋る度に白い息が出る。もう冬が近くなってきている。



「いいんだよ」



自分の声は逆に小さすぎるように思え、相手にちゃんと聞こえているか少し不安になった。



「君は人がいいからなぁ」



そう言いながら相手は静かに笑った。


よく笑う人だ。こんな状況でも笑うなんて。



「あなただからいいんだよ。あなただから、全て委ねられる」



世紀の大告白みたいな台詞だ。ただ本音すぎて、恥ずかしさの欠片もない。



「嬉しいこと言ってくれるね」



そう言いながら、ひとつも嬉しそうな顔をしていない。真剣な顔で、眼下に広がる夜の街を見つめている。



「じゃあ、君の命、今夜だけわたしにくれるかい?」



白い息が舞った。



「喜んで」



今度ははっきり、夜の空気のなか響くように答えた。相手は了解したというように、ゆっくり頷いた。



「それじゃ、本番だ」



すくっと立ち上がった姿を見上げ、それがまるで夜空に浮かぶ月を背負ったようで、自分はこの情景を一生忘れないだろうと思った。