君は突然にやってきた。
「どうしたの?」
「会いたかったから」
即答だ。
「ありがとう、でも―」
「会いたかったから来ちゃったの。だめ?」
君の顔はきつく、それでいてすがるようだった。
「―いいや」
私はにっこりと笑った。
君は扉を抜けて入ってくると、私の向かいにある椅子に座った。
「―でも、」
何か下のほうを見ながら君は言った。
唐突に発せられた否定の言葉は、今までのどこの部分にかかっているのかがわからず、意味を知ろうと私は君の顔を見つめた。
次の言葉を言おうと顔を上げた君とばっちり目が合うと、君はにこっと笑いながら言った。
「だめだよ」
だめときたか。
それはやわらかい笑顔で言う言葉なのだろうか。どれだけ君を見つめても、相変わらず先は見えない。
「なにがだい?」
「簡単に人を此処に入れちゃあ」
君は此処に、半ば強引に入ってきたというのに?その矛盾が可笑しく、私は少し笑った。
「いいんだよ、君だから」
そう、君だから。君だからこそ、私はその強引さも止めない。
―いや、むしろ私は、君を呼んでいたのかもしれない。
「…ありがとう」
照れているのか、下を向いて少しぶっきらぼうに君は言った。
「でも言ってて恥ずかしくない?その台詞」
「ふふ、少しね」
二人から笑みが零れる。そう、君と居るときのこの感じが、好きなんだ。
「私も、あなたなら入ってきてもいいよ、私の中に」
「ほんと?」
「うん。いつでも、寂しくなったときとか」
どきっとした。私が君を欲していたことは、君にはもう知られているのかもしれない。
「―わかった。ありがとう」
たとえ目が覚めれば全て忘れてしまうような出会いでも、たとえ夢の中でしか会えない存在だとしても、私はこの瞬間こそが幸せなのだ。
だったら、それでいい。
「そろそろいくね」
「ああ」
君は真っ白な、境界のはっきりしない扉を抜けて出て行こうとし、途中で振り返った。
「今度会えるなら、どこかへ一緒に出かけるような、アウトドアな夢がいいな」
「ははは、わかった、頑張ってみる」
私の言葉が終わるか終わらないかのうちに、君の姿は見えなくなった。
ああ、目が覚める。私は僕に、戻ってゆく。
12202008