堀江敏幸『未見坂』2011・新潮文庫-ゆったりと時が流れる静かで落ちついた小説たち | ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人)  

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 2019年のブログです

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 堀江敏幸さんの『未見坂』(2011・新潮文庫)を読みました。

 この本も旭川の本屋さんで見つけました。

 2011年の本に今ころ気づいて読みましたが、とてもよかったです。

 堀江さんの本は以前、『雪沼とその周辺』(2008・新潮文庫)を読んだことがあって、内容は(当然!)忘れてしまいましたが、その静かで落ちついた雰囲気が強く印象に残っていて、今回、読むことにしました。

 やはり、静かで落ちついた小説で、時間がゆっくりと流れています。

 内容は結構、シリアスで、明るいとは言えないのですが、文章が堅固で、しっかりしています。

 読んでいると、昨今の世の中の上滑りなさまとは真逆の、無骨だけれど、真摯な生き方の人々が描かれます。

 金持ちや贅沢とは対極にいる、欲をかかない、質素な人たち、こんなふうに生きていけたらいいな、と思える人たちが出てきます。

 また、解説の小野正嗣さんが指摘していますが、子どもの視点からの作品が多く、強い者より弱い立場の者からの世界が描かれている、とも言えます。

 そういったことが相まってか、読後感がとてもいいです。

 すがすがしくて、少し温か。

 いい読後感に包まれます。

 少し暑さのやわらいできた東川の町で、さわやかで、優しい気分になりました。        (2019.8 記)