滝川一廣『新しい思春期像と精神療法』2004・金剛出版-子どもの精神科医に学ぶ | ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人)  

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 2019年6月のブログです

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 滝川一廣さんの『新しい思春期像と精神療法』(2004・金剛出版)を再読しました。

 5月の遊戯療法学会で滝川さんのお話をお聞きして、やはりすごい人だと思い、この本も再読しました。

 いい本です。

 臨床中心に、理屈ではなく、現実をわかりやすく説明してくださいます。

 特に、デビュー論文が摂食障害の論文だったということもあって、摂食障害とその治療についての記述がすごいですし、それでいてわかりやすく、身近な感じがする論考です。

 例によって、印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つめは、いじめについて。

 いじめは悪ふざけのレベルから恐喝や傷害のレベルまで幅広いのですが、滝川さんは、どのいじめも子ども集団の中での相互作用として生じている現象、と捉えます。

 それゆえに、加害者意識が生じにくいことを指摘されますが、いじめの構造について、まさに卓見だと思います。

 二つめは、摂食障害について。

 滝川さんは、摂食障害は食卓の病い、と見ます。

 そして、なぜか緊張感のある食卓にこの病いが発生しやすい、と述べます。

 さらに、思春期になって食卓から徐々に自立する際に、家族関係の影響で食卓からうまく離れることができない病い、と捉えます。

 これらも、なかなか新鮮で、刺激的な論考です。

 また、摂食障害の治療に関しては、真面目すぎる患者さんが多いので、治療者も困惑することの大切さ、を説きます。

 さらに、下坂幸三さんも同じように述べていますが、専門用語は意味を確かめ、ふだんの言葉に直すことの大切さを述べます。

 他にも、大切なお話がたくさん出てきます。

 もっともっと、学んでいきたいと思います。    (2019.6 記)

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 2021年1月の追記です

 統合失調症の患者さんに真面目なかたが多いのは周知のことですが、摂食障害の患者さんも真面目なかたが多いように思います。

 摂食障害という病いになって、はじめてわがままが出せるようになったのかもしれません。

 ほどよいわがままの出し方を一緒に探っていくことが大切になりそうです。    (2021. 1 記)